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2007-11-09

[][][]ミャンマーからの「僕たちは小声で連呼する人間はいらない」という声

 ニュースで聞いているだけだが、現在もミャンマーの状況は難しい。「すばる」12月号に土佐桂子「ミャンマーのいま ブログから見えること」というレポートが載っている。ミャンマーでは厳しい情報統制が敷かれている。土佐さんは、1998まで続いたネーウィン政権の一党独裁により、「政治」という領域が党の独占物になったという。政治について語ることは、命を賭けることになった。内心で活動家に共感しても、「政治運動家」とみなされ、密告されることを恐れなくてはならない。よって、自分のポリシー(政策)を口に出すことは難しい。

 しかし、ついにインターネットがミャンマーにも導入され始めた。ネットカフェがコーヒー二杯分ほどの値段で、利用できる。フリーのメールアドレスの使用は制限されているが、人々は次々と利用可能なサービスを探しだし、政府といたちごっこで抵抗している。在外ミャンマー人が中心となる海外のNGOと、連携もすすめられている。今回のデモの様子も海外の拠点を通じて、大々的に世界に発信された。(しかし、その後、9月27日にインターネットは使用できなくなり、復旧したのは10月9日であったという。)

 その中で、ビルマ語のブログが立ち上げられている。学生を中心とした、在外ミャンマー人のブログは「政治」に対する発言が多い。だが、国内のものは、日常生活や音楽、恋愛についてなど、「政治」には触れないものがほとんどだ。土佐さんはその中で、「政治」について発言するいくつかのブログを紹介している。たとえば、ヤンゴン在住の女性が、国内からデモの様子を伝えている。*1また、41歳の男性は、10月15日に王朝時代の国王をとりあげ、遠まわしに現政権への批判ともとれる記述をしている。

 最後に、土佐さんが取り上げているブログの文章は、印象的だった。8月24日に「僕と外に出て歩こう」という題名でアップされたものだ。書き手は、本人の書くプロフィールによれば、ヤンゴン工科大学を中退したIT技術者である。22歳男性となっている。以下のように、土佐さんが紹介し、該当部分を翻訳している。

僕がいまこれを書いている時刻は二〇〇七年八月二二日一一時四六分/今日はこの文章を読み直していた/明日の計画はたてた。胸が高鳴る/「余分な仕事だと思う」と言いに来るひとがいる/「心配なんだ」という人もいる/僕も彼らは尊重するが、「自分の道を自分で歩くだけさ」と軽く言い返す/君たちも僕たちも、足を振り上げて歩くだろう。意識を張りつめ歩くのは大変だけど、どんどん歩く、思い切り歩く

大人達にもうんざりだ/彼らは様子を見てみようという/僕たちはどうだろう/僕たちが鐘を鳴らさなければ/今度は僕たちの次の世代が、みなの将来のために、外に出て歩く/僕たちは大人もついてくることを期待する/歓迎する

僕らは政治活動をしているんじゃない/僕ら自身も政治活動家じゃない/僕らは国民/国民は国民のするべきことをする/国民は国家の証

僕たちは小声で連呼する人間はいらない/誰も無理には誘わない/僕たちはずっと小声で叫びつづけてきた/一九年間/もう十分だ

僕はまだ若い/僕はなんのためにするのかということも知っている/僕はこの先も続けると知っている/僕はどんなことになるかも分かっている/でも僕は外に出て歩く

ともだちよ、きみたちもできる限り続いてほしい

 この文章の上部には、八月二二日のデモの、ユーチューブの映像が貼り付けてある。これは、後の九月の僧侶たちのデモに先駆け、政府によるガソリン値上げ発表後すぐに起こったものである。

 彼はデモに参加したのだろうか。いまだにブログには戻ってきていない。

(土佐桂子「ミャンマーのいま ブログから見えること」『すばる』12月号、190ページ)

私は彼のともだちになれるだろうか。 

*1:タイムズオンラインに紹介されたhttp://www.timesonline.co.uk/tol/news/world/asia/article2539435.ece

2007-10-30

[][]12歳に子宮頸がんワクチン接種:英国

英国で、12歳の少女の全員に、子宮頸がんの予防ワクチンを接種させることにするようだ。2008年から始まるらしい。子宮頸がんのワクチンを打てば、100%感染が防げる。子宮頸がんの感染は、性交によってウィルスをうつされることが原因である。ワクチンの接種は、女の子だけになされる。

Starting from next September, all girls in the second year of secondary school will receive three shots of the vaccine spread over six months. Boys will not receive the vaccine. Although they transmit the virus they mostly do not suffer symptoms and health officials have decided it would not be cost effective to add them to the programme.

http://www.guardian.co.uk/society/2007/oct/27/health.uknews

予防接種は、15歳までに行なうことが重要。それ以降になると性交による感染のチャンスが増えるからとのこと。

The latest data from the Health Protection Agency showed that it was important to reach children with the vaccine before the age of 15, because that was the point at which the level of infection in girls begins to rise.

米国では、12歳の少女に性体験のお墨付きを与えるとして、反対運動も起きている。

vaccination has caused controversy, particularly in America, amongst abstinence campaigners. They say that providing it to 12-year-olds gives tacit approval to under-age sex.

日本ではどうなっているのだろうと思って調べてみたら、公明党が積極的に推進しようとしているようだ。

http://www.komei.or.jp/news/2007/1020/9892.html

ただしこのページには、12歳で接種という点は触れられていない。これから与党の議論になるときに、保守派から反発は出ないのだろうか。

なおこのワクチンの売り上げは予想を超えた動きをしているとのこと。

http://www.asahi.com/business/reuters/RTR200710230032.html

発売元のグラクソ・スミスクラインは、9月に日本でこのワクチンの承認を申請している。http://release.nikkei.co.jp/detail.cfm?relID=171424&lindID=4

性教育との接続はどうするのだろうか。過激な性教育に反対している東京都とかは、ワクチン接種にも反対するのだろうか。

2007-10-29

[][][]バトラー&スピヴァク「Who Sings the Nation-State?」

Who Sings the Nation-state?: Language, Politics, Belonging

Who Sings the Nation-state?: Language, Politics, Belonging

 とにかく、装丁がかっこよすぎです。帯がずれてるなあーと思って外すと…!!(口のところに黒い帯がくるようになっていて、はずすと「口を封じられている」ことがわかるのです。)まだ、一文字も読んでませんが。

2007-10-19

[][]人種差別発言と遺伝子の問題の件

DNA二重螺旋の発見者のひとりで、ノーベル賞をもらった、ワトソン博士が、人種差別発言を行なったということで話題になっている。

タイムズ紙によると、こういうことらしい。

The 79-year-old geneticist said he was “inherently gloomy about the prospect of Africa” because “all our social policies are based on the fact that their intelligence is the same as ours - whereas all the testing says not really.". He said he hoped that everyone was equal, but countered that “people who have to deal with black employees find this not true”.

http://www.timesonline.co.uk/tol/news/uk/article2677098.ece

アフリカ人の知性・知能intelligenceがわれわれの知性・知能とは同じであると示しているテストは、まったく存在しない、と。慎重な言い回しだが、アフリカ人は人種としてless intelligentだと言っているのと同じことである。

ということで、英国を中心に例によって大騒動になっている。ワトソン博士は以前からも問題発言をしまくっていたとのこと。

He has been reported in the past saying that a woman should have the right to abort her unborn child if tests could determine it would be homosexual.

In addition, he has suggested a link between skin colour and sex drive, proposing a theory that black people have higher libidos.

He also claimed that beauty could be genetically manufactured, saying: “People say it would be terrible if we made all girls pretty. I think it would be great.”

ホモセクシャルの胎児を中絶する権利、黒人は性欲が強い説、美人は遺伝子操作で作られるので美人が多いほうがうれしい発言。ワトソン博士って、単なるオッサンじゃん! なんか、名著『二重螺旋』を若き日に読んで感動したり、名教科書『遺伝子分子生物学』に感嘆したりしたことが馬鹿らしく思えてきたぞ。

というわけで、こういうpolitically correctでない発言は一蹴されて終わりになるでしょう。

だがしかし、それで問題は終わらないのが難しいところ。というのは、実際に、何かのきちんとしたテストをしてしまうと、いろんなものに有意差が見つかってしまうのも事実だからだ。たとえば、「身長」をとってみよう。きちんとしたテストをすれば、オランダ人の平均身長は、日本人の平均身長よりもくっきりと高いことは証明されてしまう。これは明らかに遺伝子レベルの差異であろう。オランダと日本で栄養事情にそれほど差があるとも思えないし、ライフスタイルもそんなに変わらない。同じように、男性と女性の平均身長に有意な差があることも証明されてしまう。これも、遺伝子レベルの差異であろう。「身長」の有意差について、「それは馬鹿げている」と言う人はほとんどいないだろう。だとすると、ちゃんとはかったときに、遺伝子レベルでの差違が明白にありそうなものとしては、身長以外にはないのか?という疑問が浮かんでくる。ここからがややこしい話になる。現代の双生児研究(近過去のじゃなくて)は、遺伝子関与は、人間の身体的特徴だけではなく精神的特徴に至るまであらゆるところにまで<程度の差はあれ>及んでいる、という、なかなか動かし難い(文化・社会環境からの影響も考慮したうえでの)データを出し続けている。ワトソン博士もたぶんこういうデータを参照してはいるんだろう。これらの研究は、文化的・社会的・ジェンダー的関与がない、と言っているのではなくて、逆に、そういう関与があるのは当然であり、<それに加えて>遺伝子関与があると言っている。ただ専門研究者たちはこういう言説を専門論文の外で発言することにかなり腰が引けている。

このへんはかなり難しいところだろう。「遺伝子関与があるなんて馬鹿げている!」と言う人たちは、「人間の身体的・精神的特徴には、文化的関与はあり、社会環境からの関与もあり、親や家庭の環境の関与もあり、栄養状態の関与もあり、ジェンダー秩序からの関与もあり、教育の関与もあり、・・・・、だが遺伝子的な関与だけはぜったいにない!」と主張しようとしているのだろうか。それとも、「人間の身体的・精神的特徴に、どのような因子が関与しているのかは、複雑すぎるので、けっして分かるはずがない!」と言っているのだろうか。だが「身長」はそんなに複雑ではないだろう。では、どのあたりから複雑になっていくのだろうか・・・。脳もまた物質であることを考えてみれば、内面世界だけがいつまでも聖域ということにはならないだろう。とくに現在のように脳研究に異様な資金が投入されているとしたら。

もちろん、そういうことを暴くかもしれないような科学は、研究禁止にすべきだ、という選択肢は、私個人はありだと思っている。クローン人間産生研究も、人間の尊厳を守るために禁止された。同じ理屈で、比較遺伝子研究を禁止するというのはあり得る。

もし「馬鹿げている!」と言う人たちが、そういうことを「公共世界で発言すること」に反対しているだけなのだとしたら(PC)、そしてその科学的研究それ自体が馬鹿げていると言っているのではないとしたら、こういう差違を研究する科学は、一種の「ポルノ」として日陰でこっそりと進めてもらって、表舞台には出てくるな、という落としどころがあるのかもしれない。もしポルノはそもそもダメだということなら、この落としどころもダメとなろう。

ところで、もしこの社会が「身長」によってあきらかな社会的階層化がおきるような社会で(たとえば金持ち、有名人、尊敬を受ける人はみんな背が高いとか。低所得者、疎んじられる人etcは背が低いとか)あったとしたら、そしてそれが個人のアイデンティティに深く食い込むような社会であったとしたら、「身長には遺伝子的な関与がある」と発言するのは、「馬鹿げている!」という罵倒を浴びることになるのだろうか。私はひょっとしたらそうなるんじゃないかと想像する。

2007-09-01

[][]福祉社会は自由社会よりも幸福度が高いとは言えない?

APの記事によれば、いま人々の幸福度を測定する研究が、各地で進んでいるとのこと。たとえば、GDPのかわりにGNH(gross national happiness)という指標が提唱されたりしている。

そういうのを各国別に測ってみると、驚くべきことに、福祉国家のほうが、自由主義国家よりもGNHが高い、とは言えない。

Surprisingly, however, citizens are no happier in welfare states, which strive to mitigate the distortions of capitalism than in purer free-market economies.

"In the beginning, I didn't believe my eyes," said Veenhoven of his data. "Icelanders are just as happy as Swedes, yet their country spends half what Sweden does (per capita) on social welfare," he said.

http://www.usatoday.com/news/health/2007-08-25-happiness_N.htm

アイスランドは、スウェーデンに比べて、社会福祉費を半分しか支出していないが、幸福度は両国で同じである、とのことだ。

あとは、こういうことも言えるとのこと。

U.S. researchers have found other underlying factors: married people are more content than singles, but having children does not raise happiness levels; education and IQ seem to have little impact; attractive people are only slightly happier than the unattractive; the elderly — over 65 — are more satisfied with their lives than the young; friendships are crucial.

結婚していたほうがシングルよりも幸福

子どもがいることは幸福度を上げない

教育、IQは関係ない

魅力的な人は、そうでない人より、ほんのちょっと有利なだけ

65歳以上は、若者より人生に満足している

友情(友人がいること)が決定的

だそうな。

こういう心理測定に基づいた社会心理学の話って、どこまで信じればいいんでしょう。

2007-08-23

[][]英国の少年犯罪:11歳射殺される

以前のエントリーで、英国の少年犯罪がひどいことになっているという紹介をしたが、本日のBBCで、また新たな事件が起きたことが報道されている。それによると、リバプールで、サッカー練習から帰宅途中だった11歳の男の子が、自転車に乗って近づいてきた少年によって3発の銃弾を浴びせられ、一発が当たって死亡した。警察は、14歳と18歳の容疑者少年を確保したが、犯人と確定したわけではないようだ。マンチェスターだけではなく、ロンドン、リバプールもこういう状況になってきているわけだ。子どもが子どもを銃で殺すということが「流行」しはじめている英国というのは、どうなってしまったのだろう。

"Two held in hunt for boy's killer"

Two teenagers have been arrested on suspicion of the murder of an 11-year-old boy who was shot dead on his way home from playing football.

He was on his way home from football training, still wearing his kit, when he was shot at about 1930 BST. A witness said three shots were fired by a youth, with his face covered by a hood, who rode past on a BMX bicycle.

http://news.bbc.co.uk/2/hi/uk_news/england/merseyside/6959761.stm

しかし、「自転車」に乗って銃を発砲するって・・・・。

2007-08-22

[][]チャベス大統領続報

ベネズエラのチャベス大統領が提出している憲法改正案については、前のエントリーで紹介したが、どうも国会でそれが全会一致で承認されたようである。なぜ全会一致かというと、野党が選挙をボイコットしたので、国会はオール与党だからだ。あとは、数ヶ月後の国民投票を残すのみとなった。社会主義的な改革それ自体は意義ある実験だと思うが、独裁者の誕生と、石油資源に依存した改革というのは、ダメだと思う。チャベス大統領よ、戦争だけはしないでほしい。あと、謎の暗殺とかも見たくない。

"Venezuela Congress OKs Chavez's reforms"

http://news.yahoo.com/s/ap/20070822/ap_on_re_la_am_ca/venezuela_constitution;_ylt=AhubcxngYb02fkzwYtATaoQQr7sF