四字熟語

 ふだん文章表現や日常会話などにおいて多くの四字熟語を駆使しているが、その意味をどれほど正確に、適切に使っているか、時おり心もとなく不安になることがある。また、四字のうちそれぞれ二字ごとの熟語の意味や出典なども分かっていればもっと豊かな言語生活が送れるのではないか。そこで奮発して、「四字熟語辞典」(田部井文雄編 大修館 2310円)を購入し、改めて四字熟語を見直しているところである。

一所懸命(いっしょけんめい)

意味:一カ所の領地に命をかける。物事を命がけでやることのたとえ。
構成:「一所」は、上から賜った一カ所の領地。「懸命」は、それを命をかけて守ること。鎌倉時代御家人たちの生き方から生まれたことば。もともと武士階級の領地意識から出たことばであったが、江戸時代に入ってからはそれが薄れて「一生懸命」(いっしょうけんめい)ということばが生まれてきたといわれる。

類義語:完全燃焼・全力投球・不惜身命

頑固一徹(がんこいってつ)

意味:非常にかたくなで、一度思い込んだら、どうしても自分の考えや態度を変えようとしないこと。

構成:「頑固」は、心が狭く、凝り固まっていて、他のことを認めようとしないこと。また、悟りの悪いこと。「一徹」は、ひとすじに思い込むこと。「頑固一徹」ともに、かたくななこと。

用例:「父は頑固一徹の学者気質で、世俗のことには、とんとうとく・・・」(太宰治「葉桜と魔笛」)

類義語:一言居士・一徹短慮・頑固偏狭・枕流漱石

温故知新(おんこちしん)

意味:前に習ったことや昔の事柄をよく復習・研究することで、新しい知識や見解を得ること。また、昔の事柄の中にこそ、新しい局面に対処する知恵が隠されているということ。
構成:漢文訓読では「故(ふる)きを温(たず)ねて新しきを知る」または「故きを温めて新しきを知る」などと読む。「温故」は、昔の事柄を研究すること。また、かつて学んだことを復習すること。「温」は、訪ね求める。また、冷たくなったものを温める意味から、習ったことを復習することをいう。「知新」は、新しい道理を悟りこと。
出典:「子曰はく、故きを温ねて新しきを知らば、以て師たるべし、と」(論語「為政」)
用例:「たといその陽は一意専念過去を想うように見えたるもその陰はいわゆる温故知新の沙汰にて未来の料(とが)にとてすることなり」(坪内逍遥「春迺家漫筆」)

呉越同舟(ごえつどうしゅう)

意味:仲の悪い者同士が一諸にいること。また、仲の悪い者同士が特別な事情により、力を合わせて事にあたること。
構成:「呉越」は、春秋時代の呉の国と越の国。呉王夫差と越王句踐とは隣国同士で長い間争い続けた敵同士であったため、仲の悪い者同士のたとえ。「同舟」は、同じ舟に一諸に乗ること。
出典:孫子「九地」
用例:「ペテン師集団と警察が一体となって、財界の大物の葬儀を行なっているのだ。呉越同舟とはよくいったものだ」(藤本義一「にっぽん口八丁」)

 思いつくままに四つの四字熟語を調べてみた。それぞれに意味深長である。そして、それぞれに人生訓が含まれている。さすが、中国三千年の漢字文化文明に脱帽である。

大修館 四字熟語辞典

大修館 四字熟語辞典