2011-11-08
■[book]書評『楽しいみんなの写真』いしたにまさき、大山顕

楽しいみんなの写真 -とにかく撮る、flickrで見る。ソーシャルメディア時代の写真の撮り方・楽しみ方
- 作者: いしたにまさき,大山顕
- 出版社/メーカー: ビー・エヌ・エヌ新社
- 発売日: 2011/10/25
- メディア: 単行本(ソフトカバー)
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ネットのどこかの知らない誰かが、この本の前書きの文章が下手だと言っていたので読んでみたらおどろくほどの名文だった。こういうことはよくあるね。
この本の前書きは、2人の著者が交互に書いている。前半はいしたにまさきによる、銀塩からデジタルへという技術の変化と写真の変化の話。カメラのプロではない筆者が体感したちょっとした変化と、写真がウェブと結びつくことで起きた大きな変化を指摘する導入。
そして、後半は大山顕による写真を撮るという行為について再考してみようという提案。うまい写真ってなにかが排除されてませんかという、常識がぐらっと揺さぶられる前文。
「楽しいみんなの写真」という本の題名だけでは、一体何の事かは伝わらないと思う。わかりやすく決めつけるなら、これはテクノロジー・メディア論に分類すべき本。
かつては、高い機材や撮るための知識や技術を必要とした写真が、テクノロジーの進歩によってコスト面、技術面などあらゆる敷居が下がっていき、特権性が失われ広く一般に開かれていく。これは、音楽だろうが自動車だろうかあらゆるメディア技術全般が辿る道。
僕も、ケータイ小説についての本を書いたが、携帯というツールや携帯サイトの登場によって、小説を書くための手段、流通手段などの敷居が下がり、素人が参入しやすくなったというのがケータイ小説。同じような変化が、当然、写真にも起こっていく。
本書は、百数十年に渡って記録、報道、娯楽(含む映画)といった役割を担っていった写真が、デジタル化、ソーシャルメディア化の過程で、どのように変化していったかの最前線が語られる。しかも、写真を見る側、撮る側の立場から。
これは単なる概要で、個々のパートはこれらの説明では予想も付かない内容になっていると思う。大山顕による、「作り手の意志」を捨て去るための奇妙な写真ワークショップ。そして、いしたにが参加した、東日本大地震での写真修復のボランティアの話。こうした、興味深くも一見、つながらなそうなエピソードが、見事につながっていく。
ソーシャルメディアについては、さんざん語られすぎているが、本書のそれの解釈は、かなりおもしろい。特筆すべきは、frickrというサービスから、いしたにがその隠された(発信側も意図しなかったであろう)思想を読み取る場面。
「(frickrの)フレンドやグループの機能は、ソーシャルメディアやシェアの考え方を先取りし、後のクラウド化を先取りし、容量や分類の機能は、その後のクラウドを先取りし、さらにAPIの提供はマッシュアップやサービス連携の先取りとなりました」
これら意外にも「ライフログ」の要素が、写真共有サービスと親和性が高いという視点など、いろいろ目を見張るネットの思想が語られる。
本書は、ソーシャルネットワーク時代の写真論という体裁ではあるのだけど、伊藤計劃の『虐殺期間』や『ハーモニー』といった小説を読んだときのような、スリリングな読書体験をもたらせてくれた。
この本、小説とかになんないかね?
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