インセプション

 

中学生のころ、今目の前にあるのは夢の中の出来事で、いつか目が覚めると思っていた。いつまでたっても覚めない夢は、結局、現実のままとなっている。今でも、この感覚は夢であり、現実ではないと思うことがある。

この映画は、夢を共有し、同じ時間に同じ夢を見ることで、相手の意識に進入していく。キャッチコピーでは、「夢の中のアイディアを盗む」となっているが、実際は「夢の中に意識を植え込む(インセプション)」となっている。

主人公のディカプリオは 妻をなくしたトラウマを抱えながら アイディアを盗むエージェント。
作中には、夢を共有する仕組みは解説されたいないが、設計士の女の子にどうやって盗むのか、夢の階層とは何かを詳しく説明しているので、違和感はない。

ディカプリオのトラウマを横軸に、意識を植え込むドラマ(アクション)を縦軸に展開し、どちらも解決するラストは見事。
映画を見た後に 誰かと感想を言いあったり、ディテールを話したくなる。それだけストーリーも演出も秀逸で何度でも見たくなる。また不安を増幅させる音楽がすばらしい

この映画では「夢」がキーワードになっており、現実と夢との区別のために ある道具を使っている。
日本では 昔から頬をつねって夢かどうか確かめる。でも、痛かったら夢じゃないという意識があれば、夢の中でも痛みを感じる。
この世界は夢なのか現実なのか 確信を持つことができなくなる。同じ夢でも アリスインワンダーランドでは ワンダーランドはアリスの夢の世界であり、マッドハッターが「俺も夢の中だけで実在しないのか?」とアリスに問うシーンがある。「そうよ 残念ながら」といわれるハッターの表情が悲しい。

この世界が夢であろうと現実であろうと 明日はまたくる。夢だと思いたくなるような出来事でも 乗り越えなければならない。
夢であろうと現実であろうと 一歩ずつ少しずつ 前を向いて歩いていくこと。 この映画から強烈なメッセージを感じた。

 グラン・トリノ

クリント・イーストウッド監督・主演 
この映画でクリント・イーストウッドは俳優業最後にすると明言している。

あらすじは、息子にも愛想を疲れる偏屈で頑固でアメリカ主義で朝鮮戦争帰りの主人公クリント・イーストウッドが、隣人のモン族との交流を通じ、自らの先入観や価値観、偏見を改めていくというもの。

ありきたりなストーリーでありながら、押しつけがましくない伏線や、必然な役者の配置(牧師など)、アジア系とアメリカ主義の対立を車で表現する演出の細やかさ、など、自然と心に入ってくる。

父のいないタオに対する男の尊厳を教え、自身は朝鮮戦争で17才の子供を殺した罪に悩まされ、それを全てひっくるめて解決するラスト。クリント・イーストウッド映画にハズレ無しを見事に実証した希有の名作。

罪とは男の最後とは未来への希望とは などを常に考えている人ほど見て欲しい

 もし高校野球の女子マネージャーがドラッカーの『マネジメント』を読んだら

amazonより

「公立高校野球部のマネージャーみなみは、ふとしたことでドラッカーの経営書『マネジメント』に出会います。はじめは難しさにとまどうのですが、野球部を強くするのにドラッカーが役立つことに気付きます。みなみと親友の夕紀、そして野球部の仲間たちが、ドラッカーの教えをもとに力を合わせて甲子園を目指す青春物語。家庭、学校、会社、NPO…ひとがあつまっているすべての組織で役立つ本。」


型にはめたがる上司がいる。「俺の頃は・・・」「普通だったら・・・」「常識的に考えて・・・」「そんなことありえない」 などと言って、自分の考えを他の人が、さも言っているように正当化する。そんな上司に当たると、ああ ハズレだと思う。


この本は ドラッカーの『マネジメント』を参考にしながら、弱小野球部を甲子園に導いた、女子マネージャーの話。マネジメントをするに当たって大切な

  • 組織の目的の明確化
  • 人材の適材適所
  • 人材に責任を与えること
  • 行動の目的の徹底
  • 対話によるコミュニケーション

を、分かりやすく説明してある。いや説明と言うよりも小説を通じて理解させてくれる。一番大切なのは マネジメントを行うに当たっての真摯な態度。相手を尊重し、その人が活躍できる場を与えてあげること。

主人公のみなみは試行錯誤しながらマネジメントしていく。話は、同じような本の「ザ・ゴール」よりも面白く読める。小説としても、伏線やキャラクターの作り方に無理がない。ただ、最後はわかっていても、ホロリとさせられた。


ドラッカーの引用で一番心を引かれたのが 仕事を生産的なものにするための方法の説明


仕事を生産的なものにするためには、4つのものが必要である。
1.分析である。仕事に必要な作業と手順と道具を知らなければならない。
2.総合である。作業を集めプロセスとして編成しなければならない。
3.管理である。仕事のプロセスの中に、方向づけ、質と量、基準と例外についての管理手段を組み込まなければならない。
4.道具である。



自分の部署、会社の目的は?理念は? 何を為すべきか、そのためには何が必要か?を、しばらく考えてみた。5年後10年後のあるべき姿は? その時の自分の役割は?マインドマップを書いてみた。こんなことをしても無駄かもしれない。でも、自分のためと思い、提出するあてもないレポートを作ってみた。

その時、ウチの会社は上記の型にはめる言葉を言う上司ばっかりな事に気がついた。コミュニケーションをとらず、相手を認めず、マネジメントをする気がない上司たち。ドラッカーの本すら読んだことがなく、尊敬できない上司。

そう気がついたとき、悲しい気分になったけど、少なくとも自分が管理職になったら、そうならないようにしようと思う。5年後10年後の自分のあるべき姿と、組織の理想に近づけるように。