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0001-01-09 運動方程式、微分方程式

[][]運動方程式、微分方程式 運動方程式、微分方程式 - 難関大学への数学 を含むブックマーク 運動方程式、微分方程式 - 難関大学への数学 のブックマークコメント


前回東京大学の下の問題を(3)まで解決したのでした。

東京大学,物理,運動方程式,過去問題,微分方程式


東京大学,物理,運動方程式,過去問題,微分方程式

(4)以降も同じ調子で解き進めていきましょう。


取りあえず解いてみる


東京大学,物理,運動方程式,過去問題,微分方程式


しかし、ここでハタと手が止まります。この方程式を解ければ良いのですが,どうやら今までの知識では難しい様です。解説が不十分だった、ということでしょう。そこで,今日から数回に分けて,この問題を解決するために必要な知識を補充していきましょう。


微分方程式


微分方程式というのは、式(a)のように式の中に微分が現れる関係式のことです。微分方程式を解く、というのは、時間tの関数としての位置xを求めるという事を指します。大学で学ぶものですが、「大変有用で,高校物理の真の理解のためには欠かす事が出来ない」ものであると考えられるので、ここで学んでしまいましょう。


といっても、2、3の簡単な知識を身につけさえすれば良いだけです。


知識の補充


大変天下り的で申し訳ないのですが,皆さんには次の事実を覚えて頂きたいと思います。


東京大学,物理,運動方程式,過去問題,微分方程式


証明は......


大変申し訳ないのですが、この事実は高校までの知識で証明しようとすると,多少面倒ですので、結果のみを覚えてください。演算子としての微分が普通の数と同じように扱えることを認めてしまえば,証明は簡単なのですが、大学に入ってからのお楽しみ、ということで御納得ください。証明にはなりませんが,一応このxが最初の方程式を満たしている事は確かめておきましょう。


東京大学,物理,運動方程式,過去問題,微分方程式


問題は


この事実さえ認めてしまえば,(4)は解決したも同然です。


東京大学,物理,運動方程式,過去問題,微分方程式


機械的に問題を解く事が出来ました。これって、素晴らしい事ですよね。「物理的考察」と称して、巧妙な考え方をしなくても、数学の問題を解くように,定数A,Bを定めれば問題が解決するって、簡単で分かり易いです。


yに関して

これも同じように解決できます。多少記事が長くなるので,次回解決してしまいましょう。


前回の記事


問題演習(運動方程式) - 難関大学への数学


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物理の入門に関する名著です。内容は非常に高度ですが、「もっと高度な物理を学びたい」という意欲の高い方にはとてもお勧めの一冊。

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0001-01-08 問題演習(運動方程式)

[][]問題演習(運動方程式) 問題演習(運動方程式) - 難関大学への数学 を含むブックマーク 問題演習(運動方程式) - 難関大学への数学 のブックマークコメント

実際に、運動方程式の使い方を練習してみましょう。10年以上前に東京大学で出題された問題です。


問題

(3)までは解決出来るはずですので、チャレンジしてみてください。

f:id:gould2007:20080419213751p:image



(4)は微分方程式、(5)は円運動についてですので、後ほど解説します。(3)までは、全て今まで解説した知識で解決できるはずです。


解答


f:id:gould2007:20080419215054p:image


解説

どうでしょうか。難しかったですか。運動方程式さえ立てることが出来れば、なんでもない問題ということがお分かりいただけたと思います。


(1)加速度も力もベクトルである、ということが十分に理解できていれば、式(a)を立てるのは容易だったはずです。そして、物体が静止してる状態というのは、物体の加速度が0である状態ですので、式(a)の左辺が0、従って、右辺も0ということから、あっさり答えが導けます。


物体が静止している状態というのは、「物体に働く力が0」ということではなく、「物体の加速度が0」である、ということを十分に理解してください。つまり、この問題では、物体に働く力は0ではなくて、「力が釣り合っているから」静止してるのだ、というおとです。


(2)これも式(a)が立てば容易でしょう。大きさはスカラーですから、解答のように答える必要があります。皆さんも、数学の問題で「ベクトル(1, 2)大きさを答えろ」と言われたら、「¥sqrt{1^2+2^2}=¥sqrt{5}」と答えますよね。それと同じことです。


(3)これなんて、もうほとんど数学の問題です。直線のy切片を求めれば良いだけです。


(1)と(3)の答えは一致しましたが、当然の話です。物体は釣り合いの位置に収まろうとするのが、一番安定しているんです。山の不安定なところに置かれた丸いボールは、コロコロと転がっていきますよね。それと同じで、不安定な位置だから、釣り合っていないんです。この問題では、x_1¥ne x_0ですから、物体は安定している釣り合いの位置に向かおうとするのは、自然なことなんです。


素晴らしいことに、運動方程式を立てただけで、東京大学の問題がほとんど解けてしまいました。後2問ほど、難しそうな問題が残っていますが、実は、この問題も、後ほんの少しだけ解説を付け加えれば、解くことが出来るようになります。次回の記事ではとりあえず(4)を解けるように、さらに運動方程式の理解を深めていきましょう。

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力 - 難関大学への数学


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0001-01-07

[][]力 力 - 難関大学への数学 を含むブックマーク 力 - 難関大学への数学 のブックマークコメント

力をさっと解説してしまい、次回は問題を解いてみましょう。



定義


力Fの定義は下の様になります。

F=-gradV=-¥nabla{V}

gradというのはベクトル解析での勾配で、¥nablaはナブラといって.....と説明してもいいのですが、分からないですよね。そんなことは分からなくていいのです。大学に入って、きっちり学べば良いだけです。


高校物理


高校物理で出てくる力は、重力、摩擦力、電磁力など、「高校物理の範囲の力」しか出題されません。もし出てくるとしたら、きっちりと初めての人でも分かるように説明がついている筈です。力の定義は、もうしばらくの間は意識しないでも全く問題ありません。「物体の運動を変化させるもの」というくらいで十分です。

実際、上の定義を使わないと解けない問題なんて、入試では絶対に出題されません。高校物理が完全なものでないことくらい、問題を作る大学の先生方は、ご存知です。私たちが日常で使っている「力」と、高校物理での「力」の間に、激しいズレはないんです。問題の要求に従って、式を立ててそれを解けば、大半の入試問題は解決します。


物理は暗記科目?


かつて、私の友人で、物理が得意だった人間が、「物理は暗記科目である」と言ったことがありました。これまでのこのblogの記事を読み返してみても、「分からないことは分からないまま」という部分が、あまりに多くて憤りを感じてらっしゃる方も多いと思います。

確かに、受験をして中高一貫校へ進み、お金をかけていい塾へ通い、きっちりと大学レベルまで踏み込んで物理を学ぶことができれば、それが理想なのですが、そんな受験生の方は、いたとしても、ほんの少数です(個人的には、いない、と言ってしまっても良いと思います)。私たちに与えられている時間は有限です。何年も受験生を繰り返す余裕はありません。今ここで、物理学について本質的な理解を得たとしても、時間とお金の無駄、とまでは言いませんが、必要が無いことは確かです。

そこで、出来るだけこのblogでは、「ここは今は分からなくてもいい」、「ここは理解しなくてはいけない」ということを明確にしたいんです。「分からないのは自分が頭の悪いせい」だと思って欲しくないんです。「分からないものは分からなくていい」ということを、しつこいほど繰り返しているのは、私の理解が完全ではないからではなく(多分にそういうところもありますが......)、カリキュラム的に、どうしても「分かったもの」として進めなければいけないところが出てきてしまうからなんです。


結局


一連の記事を読んでみて、ガッカリされた方も大勢いらっしゃると思います。「運動方程式」も「加速度」も「質量」も「力」、何一つ分かっていないじゃないか、と。こんなモヤモヤとした気持ちを抱えたまま勉強を続けるのは、苦痛だ、と言う方も、多いでしょう。

でも、決して「分かることを諦めないで」ください。「分からないことは分からないまま勉強を進める」というのは、理解を放棄することとは違うんです。とりあえず、不完全な形でも、なんとか飲み込んでしまう。最初は飲み込んだものがお腹の中で暴れて苦しいことも多いと思います。でも、いつかそれはきちんと消化されて、皆さんの血となり肉となる筈です。飲み込んだものに殺されることは、絶対にありません。


騙されたような......


気がする方も多いと思いますが、とりあえずこの程度の理解を元に、次回は問題を解いてみましょう。実は、この程度で十分すぎると言うことが、分かっていただけると思います。


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運動方程式 - 難関大学への数学

0001-01-06 運動方程式

[][]質量とは 質量とは - 難関大学への数学 を含むブックマーク 質量とは - 難関大学への数学 のブックマークコメント

運動方程式には質量というものが、何の前触れも無く現れてきました。そこで、今日は質量とはいったい何なのかについて、理解を深めていきましょう。



質量と重さ


皆さんが日常的に使っていられる「重さ」と「質量」って、いったい何が違うんでしょうか。これを、天下り的ですが一言で言ってしまうと、次のようになります。すなわち、


「質量とは質量であり、重さとは力である」と。


なんだか、よく分からない感じですが、説明します。なお、ここで定義する「質量」とは、ニュートン力学のみで通用する概念であることを予め述べておきます。


具体例でご納得を


よく出てくる例ですが、例えば月面上での話をしてみましょう。地球上で質量mの物質が、月面上にあるときに、「質量」と「重さ」はどうなるでしょうか。

答えは、「質量はm」、「重さは¥frac{m}{6}」となります。

要するに、「質量」というのは、物質そのものが初めから自己のうちに持っている、本質的な属性であり、これは全宇宙の何処にあろうと、変化するものではない、ということです。質量mの物質は、地球上にあろうが、月面上にあろうが、宇宙空間にあろうが、質量mのままです。

対して、「重さ」とは物質が受ける力のことです。月の「質量」は地球の質量よりも軽いので、月面上で受ける力というのは、地球上で受ける力よりも小さくなります。故に、地球上で「重さ」がmの物質は、月面上ではその¥frac{1}{6}の「重さ」、つまり「¥frac{m}{6}」となるのです。

この¥frac{1}{6}というのは、大体の値であって、正確な値ではないことにご注意ください。


後味の悪さは残るが......


こんなことを言われても、まだ納得できない方も多いと思うのですが、私自身も、これ以上説明することできないのです。というのも、もし運動方程式から質量を定義しようとすると、力についての定義が必要となり、力は「ポテンシャルの勾配」から定義されるので、軽く高校の範囲を超えてしまうからなのです。

要するに、高校の範囲で「質量」とは何か、と聞かれたときには、「質量」とは「質量」である、としか答えようがない、ということになります。これはとても気持ちが悪いことなのかもしれませんが、仕方の無いことだとも思います。普段日常で使っている「重さ」とは違うんだ、ということだけ理解してくだされば、それで十分なのです。


新しい数学


少しは話がずれますが、私の説明はかなりいい加減なものです。具体例を頻繁に使っていますし、いい加減な部分もあります。何より、あまり数式を用いていません。そのような説明が嫌いな方も大勢いらっしゃると思います。一から定義をしっかり決めて、教えてくれたらもっと分かるのに、という受験生の方も多いでしょう。

しかし、本当にそうなのでしょうか。数学の話ですが、こんなことがありました。

数十年前の話になりますが、海外の数学の偉い先生が、こういった曖昧さを嫌って、「小学生の内から、きっちりと厳密な数学の公理を教え込むべきだ」と主張したことがありました。例えば、小学校の数学では「リンゴが3個あって、バナナが4個あって.....」なんてことをやっているが、これはよくない。具体性の上に立脚しすぎている。きちんと集合の公理から教えて、厳密な数学を教え込めば、今よりもずっと分かりやすくなるだろうし、優秀な生徒が産まれるはずだ。

このような考え方が主流を占め、小学校から、かなり厳密な形の集合の公理などが教えられるようになりました。何故集合の公理からなのかというと、現代数学は集合論の基礎の上に構築されているので、小学校から順に「現代数学の基礎」を教えていけば、今までよりずっと効率よく数学の英才を育てることができるだろう、という考えからなのでした。


結果は......


結果から言うと、この運動は大失敗に終わりました。この「新しい数学」の時期に教育を受けた生徒のほとんどが、意味も分からないままに難しい用語を教え込まれ、強烈な拒否反応を示しました。「新しい数学」は一時期日本へも持ち込まれたのですが、小平先生という方などが頑張って阻止してくれた結果、導入された他の国、例えばアメリカなどよりは、酷い結果にならずにすんだそうです。

何故「新しい数学」が失敗したのかについては、諸説ありますが、やはり人間、身の回りに親しんだ具体的な事柄を身につけながら、徐々に抽象的な思考へ移っていく、というのが一番のようです。皆さんも、いきなりルベーグ流の厳密な定義を用いて、積分を学ばれたとしたら、きっと数学が嫌いになってしまうと思います。ルベーグ積分はリーマン積分の拡張となっていますが、だからといって初めからルベーグ積分を学ぶ意義は薄いと思います。

グラフの意味、関数の微分から入って、徐々に、徐々に積分を学ばれるから、多少拒否反応を示す方がいたとしても、多くの方がなんとなく積分を理解できているのだと思います。


勉強の仕方


私が、決して数は多くは無いのですが、受験生の方を見ていて思うことには、「分からないことを分からないままにしておくことのできない」方が以外と多いな、ということです。なんというか、例えば「質量と重さの違いについて」、真剣に考えすぎる。自分なりの理解を掴むことがができない。要するに、真面目すぎるんです。それで、考えて考えて、色々調べてみても、いい説明が無いから、勉強がイヤになってしまう。決して頭は悪い訳ではないんです。

ただ、「100%の理解」か、そうでなかったら「0%の理解」しかないんです。分からないまま、何とか意味を噛み砕いて、次に進むことができない。私だって、それなりに大学入試を突破してきましたが、「質量と重さの違いについて」本当に理解しているのか、といわれたら、全くそんなことは無いんです。なんとなく、「質量」と「重さ」は違うんだな、ってことくらいしか言えない。

でも、勉強ってそんな感じで良いんじゃないかと思います。全部が頭に入って、完璧に理解できなくてもいい。分からないところは、「何が分かっていないのか」だけをはっきりさせておく。そのまま勉強を進めれば、全体像を見渡して、後になって「ああ、こんな簡単なところで躓いていたのか」と思えるようになるはずです。

後になって、今までの理解が通用しない場面になったら、初めて深く勉強しなおせばいいんです。今まで当たり前だと思ってきたものを、もう一度打ち直せばいいだけなんです。


下手な自己弁解でしたが......


というわけで、皆さんにこの記事で覚えてもらいたいことはただひとつ、「質量」と「重さ」は違う、ということだけです。「質量は質量であり、重さは力である」とも言い換えることができます。

本当に、「質量」ってなんなのか、と気になる方は、是非色々な本を探して読んでみてください。そうしたら、私なんかよりも、ずっと確固たる「質量」についての真の理解を得ることができるだろうと思います。


次回は、運動方程式に断り無く現れたもう一つの状態量、「力」についてみてみたいと思います。その後は、そろそろ実際の入試問題の中から適切なものを選んで、演習に入りましょう。「運動量」や「力学的エネルギー」は、運動方程式さえ理解してしまえば、単なる計算の問題です。なんら恐れることはありません。


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運動方程式 - 難関大学への数学

0001-01-05 運動方程式

[][]運動方程式 運動方程式 - 難関大学への数学 を含むブックマーク 運動方程式 - 難関大学への数学 のブックマークコメント

前回までの準備を得て,今回ようやく運動方程式までたどり着く事が出来ました。ただし、「質量とは何か?」「力とは何か?」ということも、まだ説明してはいないのですが、あまり語の解説ばかりでも嫌になってしまうでしょうから、ここら辺で運動方程式を学んでおきましょう。



運動方程式が必要な理由


前回、加速度は位置の二階微分であり、べクトルである事を学んだのでした。さて、我々は物体の運動について、出来る限り多くを知りたいのですが、それには毎回毎回実験する訳にもいかない、というのは前回述べた通りです。

例えば,高価な衛星を打ち上げるのに、「何処へ飛んでいくかは全く分からない」という訳にはいきません。かといって,何回も何回も実験を繰り返して、「大体ここら辺に打ち上げれば上手く行く」なんてことをする訳にもいきません。どれだけお金があっても足りないですし、第一時間の無駄です。

我々人間が欲しいのは、物体の運動についての理論なのです。そもそも、物理学というのは、人間が自然を説明するために産み出した、理論形態のひとつなのですから。太陽の動きを見て、「真冬のこの時間には太陽は大体このくらいの位置にある」というのは簡単です。でも、それって、「具体性の上に立脚」しすぎているんです。一般性がどこにも無いんです。私たちが欲しいのは,個別の太陽の位置や運動ではなくて、「太陽の動き一般について語る事の出来る理論」なのです。

そして、17世紀の巨人アイザック¥cdotニュートン(アイザック・ニュートン - Wikipedia)によって、発見されたのが,運動方程式なのでした。


運動方程式


運動方程式を先ず書いてしまいましょう。

f:id:gould2007:20080418175905p:image

左辺でmは物体の質量、¥vec{x}は時刻tにおける物体の位置、右辺の¥vec{F}は物体に働く力です。

いくつか注意すべき事があります。先ず、左辺も右辺も、「べクトルについての関係式」となっていることに気をつけてください。位置はべクトルですし、位置を二階微分したものもべクトルです。それにスカラーである質量mを掛けたものも、当然べクトルです。力も、「どちらの向きに働いているか」という事を考慮しますから,当然べクトルです。


何処から導かれたのか?


運動方程式は、なにか数学の定理のように、公理を決めて、そこから導かれる、といった性質のものではありません。「運動方程式は、暗記すべき事柄なのです」。「何故そうなるのか分からない」、というものではないんです。英語で"She has an apple"と書いた時に、「何故"she an apple has"という順番では駄目なのか」と言われても、「そういうものだから」としか答えようがありませんよね。

運動方程式も同じで、「何故こうなるのか」って言われても、「そういうものだから」としか答えようがありません。運動方程式は実験から導かれるもので、人間が経験によって得たものなんです。「ツバメが低く飛ぶと雨が降る」といった、おばあちゃんの知恵袋と同じで、「質量mの物体に力¥vec{F}がかかったとき、物体の加速度¥frac{d^2¥vec{x}}{dt^2}(加速度は位置の二階微分で定義されるのでしたね)について、上のような関係が成り立つ」ってだけの話なんです。

実際、ツバメが低く飛んでも必ずしも雨にならないように、運動方程式が成り立たない事例もいくらでもあります。それは,皆さんもすでに学ばれたかも知れませんが,量子力学なのですが。


ニュートン力学


要するに、ニュートン力学というのは、運動方程式が成り立つ事を先ず認めてしまって、そこから理論を構築していこう、という学問なのです。だから、運動方程式によって計算される物体の運動と、実際の物体の運動が、全く同じ、とまではいかなくても、ある程度一致しているならば、それでいいじゃないか、って言うくらいの話なんです。

そして,今までの所、運動方程式を使っても、大きな問題が起きるという事は無いので,我々は安心して,ロケットの軌道の計算や、物体の運動を考える際に,運動方程式を用いている,という訳です。


補足


大学へ進まれてから「解析力学」を学ばれると、ニュートンの運動方程式は、直交座標系においてのみ、その美しい形を有するという事が分かります。例えば,座標系を極座標に変換しただけで、運動方程式はとても覚えにくい形になってしまいます。勉強を続けられると,ラグランジェアン(という演算子)の意味も明確になる事かと思います。ここら辺は,大学へ入ってからのお楽しみです。


説明していない事柄


さて、天下り的に運動方程式を導入してしまい、どんどん問題を解いていきたいところなのですが、まだ式中に現れる「質量」、そして「力」に関しては何の説明もしていません。次回以降、ここの所の理解を深めていきましょう。


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加速度 - 難関大学への数学

[][]質量とは 質量とは - 難関大学への数学 を含むブックマーク 質量とは - 難関大学への数学 のブックマークコメント

運動方程式には質量というものが、何の前触れも無く現れてきました。そこで、今日は質量とはいったい何なのかについて、理解を深めていきましょう。



質量と重さ


皆さんが日常的に使っていられる「重さ」と「質量」って、いったい何が違うんでしょうか。これを、天下り的ですが一言で言ってしまうと、次のようになります。すなわち、


「質量とは質量であり、重さとは力である」と。


なんだか、よく分からない感じですが、説明します。なお、ここで定義する「質量」とは、ニュートン力学のみで通用する概念であることを予め述べておきます。


具体例でご納得を


よく出てくる例ですが、例えば月面上での話をしてみましょう。地球上で質量mの物質が、月面上にあるときに、「質量」と「重さ」はどうなるでしょうか。

答えは、「質量はm」、「重さは¥frac{m}{6}」となります。

要するに、「質量」というのは、物質そのものが初めから自己のうちに持っている、本質的な属性であり、これは全宇宙の何処にあろうと、変化するものではない、ということです。質量mの物質は、地球上にあろうが、月面上にあろうが、宇宙空間にあろうが、質量mのままです。

対して、「重さ」とは物質が受ける力のことです。月の「質量」は地球の質量よりも軽いので、月面上で受ける力というのは、地球上で受ける力よりも小さくなります。故に、地球上で「重さ」がmの物質は、月面上ではその¥frac{1}{6}の「重さ」、つまり「¥frac{m}{6}」となるのです。

この¥frac{1}{6}というのは、大体の値であって、正確な値ではないことにご注意ください。


後味の悪さは残るが......


こんなことを言われても、まだ納得できない方も多いと思うのですが、私自身も、これ以上説明することできないのです。というのも、もし運動方程式から質量を定義しようとすると、力についての定義が必要となり、力は「ポテンシャルの勾配」から定義されるので、軽く高校の範囲を超えてしまうからなのです。

要するに、高校の範囲で「質量」とは何か、と聞かれたときには、「質量」とは「質量」である、としか答えようがない、ということになります。これはとても気持ちが悪いことなのかもしれませんが、仕方の無いことだとも思います。普段日常で使っている「重さ」とは違うんだ、ということだけ理解してくだされば、それで十分なのです。


新しい数学


少しは話がずれますが、私の説明はかなりいい加減なものです。具体例を頻繁に使っていますし、いい加減な部分もあります。何より、あまり数式を用いていません。そのような説明が嫌いな方も大勢いらっしゃると思います。一から定義をしっかり決めて、教えてくれたらもっと分かるのに、という受験生の方も多いでしょう。

しかし、本当にそうなのでしょうか。数学の話ですが、こんなことがありました。

数十年前の話になりますが、海外の数学の偉い先生が、こういった曖昧さを嫌って、「小学生の内から、きっちりと厳密な数学の公理を教え込むべきだ」と主張したことがありました。例えば、小学校の数学では「リンゴが3個あって、バナナが4個あって.....」なんてことをやっているが、これはよくない。具体性の上に立脚しすぎている。きちんと集合の公理から教えて、厳密な数学を教え込めば、今よりもずっと分かりやすくなるだろうし、優秀な生徒が産まれるはずだ。

このような考え方が主流を占め、小学校から、かなり厳密な形の集合の公理などが教えられるようになりました。何故集合の公理からなのかというと、現代数学は集合論の基礎の上に構築されているので、小学校から順に「現代数学の基礎」を教えていけば、今までよりずっと効率よく数学の英才を育てることができるだろう、という考えからなのでした。


結果は......


結果から言うと、この運動は大失敗に終わりました。この「新しい数学」の時期に教育を受けた生徒のほとんどが、意味も分からないままに難しい用語を教え込まれ、強烈な拒否反応を示しました。「新しい数学」は一時期日本へも持ち込まれたのですが、小平先生という方などが頑張って阻止してくれた結果、導入された他の国、例えばアメリカなどよりは、酷い結果にならずにすんだそうです。

何故「新しい数学」が失敗したのかについては、諸説ありますが、やはり人間、身の回りに親しんだ具体的な事柄を身につけながら、徐々に抽象的な思考へ移っていく、というのが一番のようです。皆さんも、いきなりルベーグ流の厳密な定義を用いて、積分を学ばれたとしたら、きっと数学が嫌いになってしまうと思います。ルベーグ積分はリーマン積分の拡張となっていますが、だからといって初めからルベーグ積分を学ぶ意義は薄いと思います。

グラフの意味、関数の微分から入って、徐々に、徐々に積分を学ばれるから、多少拒否反応を示す方がいたとしても、多くの方がなんとなく積分を理解できているのだと思います。


勉強の仕方


私が、決して数は多くは無いのですが、受験生の方を見ていて思うことには、「分からないことを分からないままにしておくことのできない」方が以外と多いな、ということです。なんというか、例えば「質量と重さの違いについて」、真剣に考えすぎる。自分なりの理解を掴むことがができない。要するに、真面目すぎるんです。それで、考えて考えて、色々調べてみても、いい説明が無いから、勉強がイヤになってしまう。決して頭は悪い訳ではないんです。

ただ、「100%の理解」か、そうでなかったら「0%の理解」しかないんです。分からないまま、何とか意味を噛み砕いて、次に進むことができない。私だって、それなりに大学入試を突破してきましたが、「質量と重さの違いについて」本当に理解しているのか、といわれたら、全くそんなことは無いんです。なんとなく、「質量」と「重さ」は違うんだな、ってことくらいしか言えない。

でも、勉強ってそんな感じで良いんじゃないかと思います。全部が頭に入って、完璧に理解できなくてもいい。分からないところは、「何が分かっていないのか」だけをはっきりさせておく。そのまま勉強を進めれば、全体像を見渡して、後になって「ああ、こんな簡単なところで躓いていたのか」と思えるようになるはずです。

後になって、今までの理解が通用しない場面になったら、初めて深く勉強しなおせばいいんです。今まで当たり前だと思ってきたものを、もう一度打ち直せばいいだけなんです。


下手な自己弁解でしたが......


というわけで、皆さんにこの記事で覚えてもらいたいことはただひとつ、「質量」と「重さ」は違う、ということだけです。「質量は質量であり、重さは力である」とも言い換えることができます。

本当に、「質量」ってなんなのか、と気になる方は、是非色々な本を探して読んでみてください。そうしたら、私なんかよりも、ずっと確固たる「質量」についての真の理解を得ることができるだろうと思います。


次回は、運動方程式に断り無く現れたもう一つの状態量、「力」についてみてみたいと思います。その後は、そろそろ実際の入試問題の中から適切なものを選んで、演習に入りましょう。「運動量」や「力学的エネルギー」は、運動方程式さえ理解してしまえば、単なる計算の問題です。なんら恐れることはありません。


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運動方程式 - 難関大学への数学

0001-01-04 加速度

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前回、速度は位置の時間微分として定義されることを見たのでした。



定義


では、今回加速度を定義してしまいましょう。これは、簡単です。加速度は、「速度の微分」として定義されます。式できっちり書くと、ある時刻tにおける点Pの速度がベクトル¥vec{v}と表されるとき、加速度¥vec{a}

¥frac{d¥vec{v}}{dt}

で定義されます。点Pが二次元の点ならば、v=(v_x, v_y)として、加速度は¥left(¥frac{dv_x}{dt},¥frac{dv_y}{dt}¥right)です。3次元以上でも同様です。速度はベクトルで、その速度を微分したものもベクトルになりますから、加速度はベクトルです。ベクトルということは、普通の数のように単なる数字なのではなくて、「向きと大きさ」が定まった「数のようなもの」として、加速度が定義されているということです。普通の数の場合、備えている性質は「大きさ」のみで、「向き」という性質は持ち合わせていませんね。


これだけ?


加速度について何か書け、といわれても、実はこれで全てなのです。加速度というのは、単なる物事の定義に過ぎないのです。「あの赤くて木になる、食べると甘くておいしいものを「林檎」と名づけよう」というレベルの話なんです。「速度の微分が加速度」というのは、何かから導かれる結論なのではなくて、ただ単に事実を述べているだけの文章なんです。いきなり天下り的に、今までの日常生活で触れたことの無い「加速度」なんていうものが登場するから、混乱してしまうだけなんです。

新しい英単語が出てきたときと同じように、意味とスペルさえ覚えてしまえばいいんです。文章の中での使い方は、後で幾らでも覚える機会があります。

繰り返しになりますが、数学や物理を勉強するときには、「何が定義で、何が定義から導かれる定理なのか」を、しつこいくらい意識してください。特に、物理学は海外から輸入された学問ですから、どうしても語と語の対応が完全ではない部分を残しています。皆さんが大学に進まれて、難しい用語が出てきたときでも、日本語に引きずられて妙な連想を膨らませることなく、「これは単なる定義に過ぎないんだな」ということを個々のケースで理解してくだされば、いらないところで躓くことは少なくなっていくことだろうだと思います。


意味


勿論、前回の記事で書いたように、速度のグラフを書いたときに、その傾きは加速度になっています。ここら辺は、前回の記事と全く同様ですので、わざわざ繰り返しませんが。あえて意味づけを行うならば、「微小時間の間に、どれだけ速度が増えるかな、というのを表す量が、加速度」という感じになりますが、余計分かりにくくなってしまう感じもしますね。


つまり、位置の二階微分が加速度になる


ということです。速度は位置の一階微分でしたから。ある点Pの時刻tにおける位置が(x(t),y(t))と表されるとき、点Pの時刻tにおける加速度は、

¥left(¥frac{d^2x(t)}{dt^2},¥frac{d^2y(t)}{dt^2}¥right)

となります。必要に応じて、「速度の一階(時間)微分としての加速度」か、「位置の二階(時間)微分としての加速度」かの、どちらかの表し方を用いていきます。


補足


「じゃあ、加速度を時間微分したものはなんなのか?」と考えた方も当然いらっしゃると思います。物理学ではちゃんとそんなものも定義されていて加速度の一階微分を「躍度(やくど)」と呼んでいます(躍度 - Wikipedia)。

躍度は、大学の物理科、あるいは工学部の専門分野に進まない限り、まず目にすることは無い単位ですが。


次回に向けて


もう一度ここで、私たちがどこに向かっているのかを確認してみましょう。

ニュートン力学の大きな目標というのが、「物体の運動について、知りうる限りを知りたい」ということがあったのでした。目で見て観測して、全てを知ることができればいいのですが、そうはいきません。観測には時間もお金もかかりますし、例えば「ある角度でミサイルを打ち出したときに、どこに到達するのか知りたい」なんていう場合、何回も実験して観測するわけにはいきませんからね。一度ミサイルを打ってしまったら、「実験でした。ごめんなさい」というわけにはいきません。

そこで、ある種の物理量、例えば速度や加速度について、なんらかの関係式があるならば、速度は位置の一階微分、加速度は位置の二階微分であるから、微分方程式を解くことによって、位置についての詳しい情報を得ることができる、という発想が産まれます。

そして、「加速度についての関係式」というのが、偶々(たまたま)存在して、それが、今まで問題にしてきた、運動方程式だという訳なのです。

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速度 - 難関大学への数学

0001-01-03 速度

[][]速度 速度 - 難関大学への数学 を含むブックマーク 速度 - 難関大学への数学 のブックマークコメント

さて、前回(高校での)ニュートン力学とは、「xy平面上を運動する物体について、その運動を調べる」ものであることが分かりました。デカルト座標上の点Pの座標が

(x(t),y(t))

と,時刻tの関数として表されることを見たのでした。では、この情報を基に速度を定義していきましょう。



速度って何?


小学生の頃皆さんはこんな問題を解かされた筈です。

「A地点から、B地点までの距離が50kmだとします。太郎さんは車に乗ってA地点を出発し、2時間後、B地点に到着しました。太郎さんの平均の速度はどのくらいでしょうか?」

勿論,答えは、25km/hですが、ちょっとこれについてもう少し深く考えてみましょう。


瞬間の速度


先ず,上の答えで分かるのは、「平均の速度」のみであるということに注意してください。どういうことかと言うと、太郎さんが出発してから,例えば1時間後、車がどのくらいの「速度」で走っているかは,全く分からないということです。車のメーターは60km/hを指しているかも知れません。あるいは,車は信号で止まっているのかも知れません。

要するに,上で求めた答えというのは、「大局的な情報」でしか無い訳です。私たちが物体の運動について,何かを知ろうという時,これでは十分ではありません。途中経過について,ブラックボックスのままだからです。

私たちは,小学生とは違い、物体の運動について、より高度な手法を用いて,より多くの情報を得る必要があります。小学校で習った、

(平均の)速度=距離÷かかった時間

という定義が,何処か不完全だったのです。そのために、不完全な形でしか情報が得られていない。こう考えるべきなのでしょう。


速度の定義


そこで、今まで習ったことはすべて忘れて,いまここできちんと「速度」について定義してしまいましょう。天下り的ですが、速度の定義は下のようになります。

定義:

時刻tでxy座標上の点Pの座標が(x(t),y(t))と表されるならば、点Pの時刻tでの「速度v」は次のようになる。

v=(¥frac{dx(t)}{dt},¥frac{dy(t)}{dt})


説明


上で述べたことは「定義」です。あれこれ考えて納得するようなことではなくて、人間がこうだ、と定めたものなのです。多少話がずれますが,数学や物理を学ぶ時は、「何が定義で何が定理なのか」を充分に意識するようにしてください。「定義」は人間が、これこれこうだ、と定めたものです。例えば,べクトルの内積で

¥vec{a}¥cdot¥vec{b}=|¥vec{a}||¥vec{b}|¥cos{¥theta}

なんて言うのは、「定理」じゃなくて「定義」なんです。「何故こうなるのか分からない」というものではなくて,覚えるものなんです。

ともかく、上のように速度を「定義」すると、非常に便利であることを見てみましょう。


具体例


例えば、時刻tでも位置が座標平面上で(t+1,3t^2-1)と表される点Pがあったとします。この点の、時刻tでの「速度」vはどのようになるでしょうか。

答えは簡単で、t+1をtで微分すると13t^2-1をtで微分すると6tですから、定義に従って、

v=(1,6t)

となります。どうでしょうか。小学校までの「速度」の定義だと,このような点の「速度」を求めろ,と言われても,先ず何をしたら良いのかが分かりません。私たちは今ここで,今までの「速度」の概念を拡張して,より広範で、より応用の効く概念を手にしたのです。


べクトルとスカラー


上のようにして定義した「速度」は、べクトルであることに気がつかれたでしょうか。つまり、普通の数とは違い、(1,6t)のように、「数の組」として定義されています。

対して、「速さ」というものは次のように定義されます。

¥sqrt{{¥left(¥frac{dx(t)}{dt}¥right)}^2+{¥left(¥frac{dy(t)}{dt}¥right)}^2}

上の例だと、(1,6t)「速度」¥sqrt{1+36t^2}「速さ」です。「速度」の大きさが「速さ」という訳ですね。大きさですから、当然これはスカラー、つまり、普通の数です。

一次元(つまり,直線上)では、速度の絶対値が速さとなる訳ですね。


整合性


初めの例に戻ってみましょう。太郎さんの乗った車の速度が一定であると仮定してみます。そのとき、この例では車は平面でなく直線上を動きますから、速度をvとして、v=aなどとおけます。ただし、aは定数です。

これを時刻tで積分して(位置の微分が速度、なので、当然速度を積分すると位置になります)、x=at+Cなどとなります。ただしCは積分により現れる定数です。時刻t=0で太郎さんは点Aにいましたので、点Aを原点とすると、a¥cdot0+c=0、つまり、C=0となります。

これより、x=atとなって、t=2(h)でx=50ですから、50=2a、つまり、a=25を得ます。

こうして得られたv=a=25が、小学生の頃に求めた答えときちんと一致していることを確かめてください。


何故こんなに分かりにくいことをわざわざやっているのか


上の例は非常に煩雑です。何故簡単に,小学校の頃のように、「速度=距離÷時間」と求めてしまわないのでしょうか。その理由はただ一つ、この定義が、非常に狭い範囲でしか使えないからです。

つまり、「速度=距離÷時間」で定義された速度は、速度が一定の時にしか使えないのです。v=(1,6t)という点をよく見てみると、この「速度」は、時間tによって変化します。t=0のときはv=(1,0)だし、t=20のときにはv=(1,120)となります。この点の場合、「速度=距離÷時間」という定義は何の意味もなしません。


最後に具体例を


最後に問題を解いて,理解を完全なものにしておきましょう。

問題:

時刻tでの速度がv=(2t^2,t^6)で表されるxy平面上の点Pがある。時刻t=0に点Pは原点にあった。点Pの時刻tでの位置は、どのように表されるか。

解答:

2t^2をtで積分すると、¥frac{2t^3}{3}+Cであり、t^6をtで積分すると、¥frac{t^7}{7}+Dとなる。ただし、C,Dは定数である。t=0において、この値は共に0(点Pは原点にあったのだから)なので、C=D=0が分かる。よって、時刻tでの点Pの位置は,tの関数として、¥left(¥frac{2t^3}{3},¥frac{t^7}{7}¥right)と表される。


まとめ


どうでしょうか。前回くどいくらい、位置が時刻tの関数である,と言っていたのは,速度が位置の時刻tによる微分として定義されているからなのです。次回は、「では速度をさらに微分すると、何が現れるのか」という素朴な疑問に対する解答を用意してみたいと思います。

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パラメータの正体 - 難関大学への物理

0001-01-02 パラメータの正体

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数学

数学の授業で,「平面上の点(x,y)がパラメータtを用いて、(x(t),y(t))と表される時、......」という記述を目にしたことのある方も多いと思います。この、「パラメータt」って、一体なんなのでしょうか?



tは何の略?


前回学んだように、取りあえずデカルト座標を導入すれば,物体の位置については記述できることが分かったのでした。例えば,平面上の物体のx座標、y座標について、y=x^2という関係式があれば、物体はxy平面上の曲線y=x^2上を動くことが分かります。


しかし、この表記の仕方だと,大事な情報が抜けてしまっていることに気がつきます。それは、「時間についての情報」です。つまり、物体がy=x^2という曲線上を動くことが分かっても、「いつ」その物体が、何処にあるのかが、全く分かりません。

これでは情報として不完全です。私たちが欲しいのは,物体に関しての,より詳細な情報なのです。たとえば、「犯人の乗った車は,ある点を原点として、y=x^2上を動いています」と言われても、「いつ何処に」あるのかが分からないと、検問を張っても無駄ですよね。

そこで、登場するのがパラメータです。ある一瞬を時刻t=0として、そこから測った時間がt秒のとき、物体が(x(t),y(t))の位置にある、ということが分かっていれば、「いつ何処に」物体があるのかということが、すぐに分かります。このtは、勿論時間timeの頭文字を取ったものです。


具体例


例えば,(x,y)=(t,t^2)と表される物体の運動について考えてみましょう。この物体は、t=3において、xy平面上の点(3,9)に存在することが分かります。同様に、t=5において、(5,25)、t=100のときには(100,10000)と、どんな時間に対してでも、物体の位置を求めることが出来ます。

逆に、この物体が平面上でどんな軌跡を描くのか、を知りたい時は、時刻tを消去してしまえば良いのです。このときは、x^2=t^2=yですから、y=x^2が物体の動く軌跡となります。


何を行ったのか


ここで行ったことというのは、物体の位置(x,y)は、時刻tのみの関数である。ということの説明なんです。現実の世界っていうのは、3次元の空間と時間、つまり、(x,y,z)と時刻tという4つの文字があれば表すことができますよね。これを4次元空間なんて言ったりしますが、そのxとyとzっていうのは、どれも時刻tに関する関数なんですよ、って言うのが,上の説明なんです。

これは割合自然な考え方で、人間の本能に適している気がします。だって、「時刻tに物体はこれこれこういう位置にあった」って言う方が、「物体はこういう位置にあるから、今は時刻tだ」って言うよりも,自然ですから。

関数ならば、数学的な考察を加えることが出来ます。「物理的思考」と称して、複雑きわまりないことをしなくても、物体の位置は,取りあえず座標に載せてしまって,そこから考えていきましょう。ということなんです。これって、複雑な初等幾何の問題を、座標に載せてあっさり解いてしまうのに似ています。適切な道具を適切に用いることで、巧妙な方法を毎回毎回考えなくても済むということなんです。


位置が分かればいいのだが


ということなのですが、最初から物体の位置がtの関数として分かっていることは,先ずありません。そうだったら,問題を解く必要がないですから。皆さんも想像して頂きたいのですが、「物体がある瞬間に,こういう向きに、こういう速度で動いていた」ということは観察できても、それ以外のことは外から見ただけでは分かりません。

物理学は基本的に観察から理論を導くものですから、見て分かることじゃないと意味が無いんです。よくある問題は,物体の質量、速度(あるいは加速度)だけが分かっている。位置については何も分からない。という感じのものです。

ここから、位置についての情報を得ることが,当面の目標となります。


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座標平面って? - 難関大学への物理

0001-01-01 座標平面って?

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ニュートン力学が何か,と一言で言ってしまうと、「ある瞬間の物体の位置と速度を知るための学問」ということが出来ます。ここで、位置というのは、ある点を原点としたデカルト座標です。今日は先ず,デカルト座標(座標平面)とは何かを考えてみましょう。


座標空間の発見

皆さんが図形の問題を解くとき,どのような手段を選ぶでしょうか。中学校の授業では,初等幾何という方法しか知らなかったので、巧妙な補助線を引いたり、巧みな折り返しを考えたり、そんなことが嫌で数学が嫌いになってしまった方も多かったと思います。

高校生になると、私たちは座標とべクトルという方法を手に入れましたから、図形を適当にxy平面、あるいはxyz空間に載せて、座標を設定すれば,問題は解決します。

このようなことが出来るようになったのは,実は比較的最近のことで、フランス生まれの大哲学者、デカルト(ルネ・デカルト - Wikipedia)による座標空間の発見に端を発します。

あるとき部屋に紛れ込んだハエを見ていたデカルトは、「ある一点を原点として、ハエの位置を三つの実数(x,y,z)の組で表せば、空間内のどんな位置であっても表すことが出来る」ということに気がつきます。これは実はとんでもない発見で、原点と軸の向きさえ決めてしまえば、どんな物体が位置にあろうと、記述することが出来てしまうということなのです。この発見により,幾何学は急速に進歩します。巧みな補助線を用いること無く、複雑な図形を記述することが出来るようになったのです。

例えば下の図形を見てください。

f:id:gould2007:20080417194959p:image


この曲線はx^3+y^3-3xy=0という方程式で表される曲線ですが、この曲線を座標無しに描け,と言われると,多少難しいでしょう。ましてや,囲まれた面積やある点での接線を求めろ,などと言われたら,とてもじゃないと座標に載せないと無理です。


物体の位置


このようにして、デカルト座標を導入すると、物体の位置は簡単に記述できるようになります。例えば,平面上ならば,二つの実数の組(x,y)さえあれば、どこに物体が存在しようと、表すことが出来ます。空間ならば,文字を一つ増やして(x,y,z)とすれば良いのです。位置が分かれば、三平方の定理より、原点からの距離が分かりますから、2つの点のうちどちらの方が原点により近いのかが簡単に分かります。

例えば,(-1,4)と(2,3)でしたら、前者と原点との距離は¥sqrt{{(-1)}^2+{4}^2}=¥sqrt{17}、後者と原点との距離は¥sqrt{{2}^2+3^2}=¥sqrt{13}ですから、後者の方が原点に近いことが分かります。

同様にして、空間の点(p,q,r)と原点との距離は、¥sqrt{p^2+q^2+r^2}となります。


ニュートン力学


ニュートン力学は何か,という質問に対する答えをさらに深めるならば,「適当に座標を決めたとき、ある瞬間の物体の位置と速度を知るための学問」だ、ということが出来るでしょう。「位置」というのは、例えばデカルト座標ならば、原点と軸を適当に決めた時に定まる、(x,y)あるいは(x,y,z)という実数の組を表すものだ、ということです。

高校物理では、デカルト座標(x軸とy軸が直交する、見慣れた座標)以外を考えることは余りありません。


運動方程式(次回への準備)


そこで、物体の位置を知るために,何らかの関係式がないか、と考えたのが、ニュートンだったのでした。この関係式が皆さんもご存知であろう「運動方程式」です。これについて、次回はじっくりと見てみたいと思います。


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