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ベンチャー役員三界に家なし

2014-07-31

選択すればするほど幸福量が減るという経済原則

久しぶりのエントリだ。
もうすぐ夏休み、盆暮れにしか休めない僕らと違いピークを外して自分でコントロールしたお休みを取れる羨ましい方々はもうお休みを過ごされているかもしれない。

さて、夏と言えばバカンス。海を見ながらのバカンスは自分を見つめなおすよい機会ではあると思うが、僕は昔バカンス中に一つ面白い発見をしたことがあるので今日はその話をしようと思う。

フランス系のリゾート会社にクラブメッドというのがある。ここは、バカンス村というコンセプトで、オールインクルーシブ(交通費、宿泊費、滞在中の食事代、アクティビティ代がすべて込み込み)であることを売りにしているリゾートで使われたことがある人もいらっしゃると思う。
世界各地にあるのだが、日本にも石垣島北海道のサホロにある。
クラブメッドは「バカンス村」というコンセプトからも想像できる通り、その施設内で滞在中ずっと過ごすのが基本だ。
スタッフは通常の給仕やベッドメイキングをする専門スタッフの他にGO(ジーオー)という、滞在者のサポートをしながら、アクティビティのレクチャーをしてくれたり、子供と一緒に遊んでくれたりするスタッフが居て、滞在者の良き友人として接してくれるという特徴的なサービスを持っている。
僕は夫婦でクラブメッドで2週間程を過ごしたことがあるのだがその時の話だ。

僕はこのオールインクルーシブということについて行くまではあまりイメージがつかなくて、良さがわからなかった。
むしろ次のような心配をしていた。

1、レストランやアクティビティなどが選べないのはつまらないのではないか?
2、たべるメニューが給食のように決まっているのは選択肢がなくつまらないのではないか?
3、滞在中の支出を都度都度コントロールできないので結局割高なのではないか?

で、体験してみて、結論から言うとこのオールインクルーシブ本当に最高だった。

■選択肢はないほうがハッピーだ

僕は驚いたのだが、クラブメッドではそのシステム上、滞在が始まると財布を開くことがない。
そして、食事をしても、ビーチでドリンクを飲んでも、バーでビールを飲んでも、シュノーケリングをしても、会計という概念がない。
飲みたいものを飲み、食べたいものを食べ、やりたいことをやればよいのだ。
まぁ、込み込みで金はらってるから当たり前なのだが、金勘定を1週間くらいしていないと気持ち的に不思議な境地になってくるのだ。
そう、いままで感じたことがないストレスフリーな本当に幸せな気分。

人は普段の生活で費用対効果を常に計算しながら取捨選択を繰り返している。毎日、毎日だ。
自動販売機の前で、100円の200ml入りパックジュースを買うか、120円の350ml缶ジュースを買うか?
おにぎりにから揚げくんを付けるかつけまいか? レストランでグラスのシャンパンを頼むか、はたまた思い切ってボトルで入れるか?
30%引きのセール品を買うか、欲しい服はなくなるかもしれないがもう少しまって50%引きになるのを待つか?

自分の目の前の選択肢から自分が最も少ないコストで最も得する選択は何か?を繰り返し繰り返し知らず知らずのうちに考えている。

より得をするためには多くの選択肢を知っているかは重要だし、もっと他にいいものがあるかもしれない。
サバの味噌煮定食800円と鶏のから揚げ定食950円で、から揚げを頼んだが、ほんとによかったのか?隣のオッサンのブタの角煮もうまそうだ。
いやそもそも向かいのそば屋のカツ丼の方を食った方が満腹に、、、

情報を仕入れれば仕入れるほど得する可能性は上がり、得する量が多くなれば幸せになれる。

だから選択肢は常に沢山必要で、それをできるだけロジカルな基準によって詳細にコントロールするのが幸せだし、そういう日々の「勝ちの選択」を続けることが幸せではなかったか?

だが、このクラブメッドでの毎日はなんだ?
決まったレストラン、決まったメニュー、どちらが得かではなく、何をしたいのか?だけしか考えなくてよい毎日。

最初、僕が滞在するまでに考えていた心配は杞憂どころか、まったく逆だった。

提供されるモノやサービスが一定レベルを超えていれば「選択肢がないこと」が最もストレスフリーであり、そもそも「選択する」ことがもっとも幸福量を減らす原因ではないのか?

これは自分にとって重大な気づきだった。
僕はこれまで例えばWebのサービスなどにおいては情報量が多いことがユーザー満足度につながると思っていたし、選択肢が多いことがユーザーをハッピーにできると信じてきたからだ。

でも情報の集約が進むWebサービスで皆がどんどんハッピーになって行ってる気は正直しない。

Webで1円でも安い商品を探してネットサーフィンして、へとへとになりながら最安値のショップを見つけた時には本当にそれが欲しかったのかもわからなくなるほど疲れてしまったりしていた。

ここ数年は自分の会社説明会に来る学生たちも5月を過ぎるともう生気が感じられない尋常ではない疲れた顔をしているような気がする。聞くと就職サイトの膨大な数の会社と格闘しておりもはや今日受けてる会社が何の会社かすらよくわからなくなっているのだ。

■発見でもなんでもない!?

僕的には今世紀最大級の発見だったので、この発見を、帰ってくるなり早速友人の会社役員に飲みながら報告して意見を聞いた。

僕と違いビジネススクール出のエリートビジネスマンの彼は少し考えた後、半笑いで、

「お前が言ってる話は発見でもなんでもない。大学生でも習う経済学の教科書に乗ってるマンキュー経済学の十大原理の第二原理『あるものの費用は、それを得るために放棄したものの価値である』というやつだな。」と教えてくれた。

「俺はへっぽこ大の社会学部卒だ。わかるように言ってくれ。」というと、

「つまりこうだ。俺はビジネススクールに行ったが、学生している間に稼げたはずの給料を諦めそれをコストとして、卒業後のキャリアアップで得られる給料や知識の増加分を買った。つまりこの選択で得られたのは給料や知識の増加分からコストを引いた差分になるはずだ。まぁ、この選択は今のところ利益は出てないがそれは置いておいて、、」

「おまえが言ってるのはこうだ。」

「選択肢のない世界に行ったら、何かを諦めることなく何でも手に入るのでコストはなし。つまりまる儲け。まるまるハッピーな世界だった。」

「この世の中は選択すれば選択するほど、何かを諦めるわけだからハッピーを手に入れる為のコストが増加するばかり、最終的には差分は限りなくゼロに近づくからストレスしか残らない」

・・・・・

・・・うん。そういうこと。どう? おもろくない?

「うん。まぁ、与太話だな。」

彼は、またつまらん話を聞かされたとでも言いたげだったが、でも僕を軽くいなしたことに満足そうに次のビールを頼んだ。

相変わらず嫌なオッサンだ。

やはり、MBAホルダーという連中はなんでも知ってるんだな。でも自分的には素晴らしい発見を僕はクラブメッドでの2週間という時間と旅費というコストだけで得ることが出来たからよしとしたのだった。


さて、昔話をしていたらいい時間になってきた。

いい歳したただのオジサンとしては今更転職サイトを見て「この会社行ったらもっと休みや給料が増えるんじゃないか?」なんていう選択肢を無駄に増やして精神的なコストをせっせと増大させるのはやめて、自分のハッピーを最大化することにしよう。
そう、今日も持ち場で頑張るとしよう。

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