明日図鑑 「爛漫」 @三鷹市芸術文化センター・星のホール


クオリティ高いぞ、明日図鑑! 今年のベスト3候補だな。いやーこういういいもの見た後の興奮状態って気持ちいい。アドレナリン出まくってるな、たぶん。
ブログでいい噂を聞いて来た今日の公演。まず、会場入っって驚く。15分前というのに、ガラガラ。250席あるみたいだけど、5分の1も埋まってない。こんなの初めて。まだこういうキャパでやる劇団じゃないって事か?ちょっと不安になる。結局開演時には半分ぐらいまでは埋まってたけど。先週の舞台にほとんど何もなかったブルドッキングヘッドロックと違って、今日は立派なセットが組んである。懐かしい昭和初期みたいな感じの家。左半分が畳にちゃぶ台+小さな台所が一緒になった古い造りのリビング、右半分は元酒屋だったスペースが今は選挙事務所になっていて長い机とイスが置いてある。壁には古臭い水着キャンペンガールがドーンと写ったビール会社のポスターが数枚。 4組の男女+変な男1人。母の7回忌を済ませた後離婚しようとしている主人公・宮本雅晴(牧田明宏)と妻(中坪由起子)、その雅晴の妹・加奈子(長門かおり)は、バツ1で9歳の連れ子がいる男・榊原(石坂晋輔)と近々結婚、今度市議会議員選挙に立候補する雅晴の友達・結城(佐藤拓之)とその妻(大久保佳代子)、選挙の手伝いに呼ばれた、加奈子の昔の元カレ(ヤンキーだったために雅晴に別れさせられた)のカツヒロ(桜田真悟)と彼女のヒトミ(山口奈緒子)。最初の20分ぐらいはスローな展開で、期待半分、心配半分という感じだったがカツヒロとヒトミちゃんが出たあたりから、だんだんと演技に引き込まれていく。話に引き込まれていくんじゃなくて、演技にね。話も絶妙なんだけど、それ以上に演技・演出が絶妙でした。
話自体は、これから結婚するカップル、これから離婚する夫婦、姑や選挙の事でうまくいってない夫婦、元彼女に未練のある元ヤンキーと若い女性のカップル、この4組の微妙な係わり合いを雅晴を軸にしながら描いていく。妹・加奈子の彼がヤンキーだったから別れさせたり、母の再婚を相手が気に入らないから辞めさせたりしている雅晴。本人にしてみれば優しさのつもりが、相手からすれば身勝手な価値観の押付けでもある。結婚相手の榊原さんがバツ1で子持ちである事を、顔合わせの時にたまたま会話の中で知って、「何でそんな大事な事すぐに言わないんだよ」「うしろめたいからだろう?」と怒る雅晴、「何、反対なの?榊原さんと結婚するの反対?」「お兄ちゃんはいつだってそう。結局は自分と違う価値観を受け入れられないのよ」と妹に言われる。榊原さんの温厚そうな人柄もあって、さすがに反対まではしなかったけど、相変わらずの二人。最後は、亡くなった母が言い残した通りに、母が着たウェディングドレスを榊原さんに渡し「これを着せて、3人で写真を撮って下さい。その写真持ってまた7回忌に来て下さい」と伝える雅晴。雅晴なりに祝福してるんだろうけど、自分がこれから離婚するだけに複雑だよなぁ。もう1つ印象に残ったのが、加奈子のシーン。未練がある元彼のカツヒロに呼び出されいきなりキスされる加奈子。カツヒロはキスしてすぐに走って立ち去り、加奈子が部屋に戻ると榊原さんが台所で水を飲んでいる。「どこ行ってたの?」「ちょっと友達と」「加奈ちゃんいないんだもん。隣に布団敷いてあるのにいないんだもん。なんかもう一生会えないかと思った」そう言われて、キスしたかと思うとそのまま押し倒し激しくキスする彼女。あんな甘いセリフ言ってみたいけどなかなかねぇ。ああいうのに女性は弱いとわかりつつも。
ブログでいい噂を聞いて来た今日の公演だけど、これぞ本物のお芝居という感じ。正統派?。奇をてらう事なく地味ながらも巧みな演技と演出、じわりと心に浸み入るNHKのドラマを見ているような感じのお芝居。っていっても地味でつまらない話って事じゃない。ほのぼのとした日常の中にも、うまいこと笑いも入り、飽きさせる事ない展開はなかなかのものでした。ハッピーエンドのゴールへと向かって収束していくようなそんな良くあるパターンではなく、ある田舎の日常を切り取りそれを細やかに丁寧に描写したという感じのお芝居でした。それとこれも忘れずに言っておきたい。とにかく役者さんが”全員”とても良かった。普通、出演者の内の何人かが気になったとか良かったとか思うぐらいで、パッとしない人とかあまり記憶に残らない人もいるもんだけど、今日はほんと全員良かった。人見知りで上目使いな感じのヒトミちゃんなんかセリフ少なめだし脇役で大した事ない子だなぁと思ってたら、カツヒロの元彼女の加奈子さんを威嚇するように睨みつける所とか、最後のあんな事で泣いちゃったりする所とか、すごく印象に残りました。カツヒロさんのヤンキーながらも真面目に選挙を手伝おうとしてる感じとか、雅晴の妻が加奈子さんが急いでるから遠慮してるにも関わらず朝食を食べてってよと無理に薦めたりする所とか、ありふれてるといえばありふれてるキャラクターだけど、その演出や演技のさじ加減が個人的に壺にはまりました。
そういえば、作・演出の方が主演してるってのも珍しいパターンでは。自分が出てる事で全体を直接コントロール出来てやりやすいといえばやりやすいのかも知れないけど、2足のわらじで結構大変なのではとも思った。その牧田明宏さんの次の仕事は、プリタク「HERO」の脚本。毛皮族町田マリーさん目当てでチケット取ってあるんだけど、外の劇団に一体どんな脚本を提供するのかちょっと楽しみ。キャストとかチラシ見た感じでは明日図鑑とは全く別物っぽいし。あと、長門かおりさんはペテカンの次公演に客演で出る。こっちはand Me「ナクモ、ワラウモ」で見た長峰稔枝さん目当てでチケット取ってあった。なんか縁あるなぁ、明日図鑑と。その明日図鑑の次公演は、来年の4月26〜30日、THEATER TOPSで。絶対、見に行く。こんなにいい劇団なのに何故観客が少なかったのか不思議でならない。認知度が低いだけ?それとも3連休に当たったからたまたま少なかった?
出演者の今後の予定で気になったのが、まず大久保佳代子さんの「めちゃめちゃイケてる」レギュラー出演。こんなのにも出てるのか。よく調べたら光浦靖子と”オアシズ”って漫才コンビを1992年に結成してるみたい。地元愛知の高校の同級生。光浦ってピン芸人だとばかり思ってたけど、そんなコンビ組んでたなんて知らなかった。もう1つ面白そうなのが、山口奈緒子さんの次の出演。「ぶらり鉄道演劇絵巻〜荒川線編〜」都電荒川線車内(早稲田駅三ノ輪橋駅)。えっ、あの電車の車内でお芝居を!すごい企画だな。荒川線って1度も乗った事なくて前から乗ってみたいなぁと思ってたから、ちょうどいい機会。日時と時間さえ合えば行っちゃうでしょう。あとは中坪由起子さんがアリコのCM「かしこく積立入院保険」バーゲン編・パート編にメインキャストでオンエア中とのこと。過去の公演の客演者をチェックしてみると、このまえのTrashmasters「trashmastersizm」に出てた福山亜弥さんとか、「乱暴と待機」に出てたThe SHAMPOO HATの多門優さんとか、今回客演の双数姉妹の佐藤拓之さんとか、好きな役者さんが結構出てるなぁ。この辺も個人的にはポイント高し。


 ●明日図鑑 http://www.ashitazukan.com/
 ●人力舎オアシズ http://www.p-jinriki.com/riki/talentpage/oasiz.html


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