ニュピの日から facebook は大騒ぎ 2

「ニュピ」といえば、どうしてもニュピ当日の「外出が禁止される1日」というイメージだけでとらえられがちだ。
 fb にのったイブヌ君の“つぶやき”も、たぶん「休みだというのに外にも出られない」苛立ちから、つい悪態をついてしまった──ぼくの目にはそう映る。


 このイブヌ君は、ジャカルタ生まれの30歳、バリで仕事をしている。彼のたった1行の投稿でバリのfb界は大騒ぎになってしまい、その直後には、このイブヌ君のアカウントページの個人データはほとんどが非公開になってしまった。当然である。
 ぼくは早い時期に丁稚ダルビッシュの“通報”のおかげで、イブヌ君のページにアクセスしていたので、彼の個人データに触れる機会はあった。しかし、現時点でかれが非公開にしたのだから、ぼくの記憶にあるとはいえ、彼のプライバシーについてはこれ以上書くのは差し控えて先に進む。


 ニュピはよく知られているようにサカ暦の新年初日を指している。サカ暦についてはウィキペディアにも載っているので参考になるが、バリでこの暦をもとにした行事があるのは、このニュピ前の数日間だけだ。
 基本は、1年(サカ暦の1年である)の終わりに全島あげて浄化儀礼(ムラスティやタウール)を行い、この1年のあいだに積もり積もった人間の汚れ、あらゆる生きものの穢れを洗い落とし、ふたたび自然のバランスをとりもどし平穏な日々を歩みなおす、いわば地上に存在する生命の“精神的リセット”のための宗教的、民俗的な行事なのである。
 悪霊のシンボルであるオゴ・オゴをつくって村や街を練り歩き、最後には火にくべてしまうのも、この行事の一環である。
  

人っ子ひとりいない表の大通り.. と思いきや、じつはちいさなこどもが三輪車に乗って走りまわっていた。このときぐらい思いっきり乗り回したいのはよくわかる。


 こうした一連の浄化儀礼をすませてニュピを迎える。だから、この日はリセットされた精神にふさわしく、終日家にこもって静かに時を過ごすように求められているわけだ。

 ヒンドゥー協議会が1984年に通則として4か条の指針を発表している。
 1  火をおこしてはならない

 2  労働をしてはならない
 3  外出してはならない

 4  楽しみを求めてはならない



 3番目の「外出禁止」は、たぶん若いひとにとっては拘束されているようで辛いだろう。
 とくに今年のように、いっさいのメディア、TVもラジオも24時間放送休止の状態では、家にじっとしているというのは苦痛に感じるかもしれない。


 先日のニュピの午後遅く、家の前をパラパラとひとが通り過ぎる気配に外をのぞいてみたら、隣のバンジャールの若ものたちが「散歩」していた。
  
見張り番ご苦労さまです! バンジャール入り口で。          
監視員がいるよ、と教えたら表通りまで出られずに、道端に座り込んでしまったこどもたち。
 ふつう、午後5時か6時頃に、1時間だけ「外出許可」が実施されるので、そのタイミングかなと思い、ぼくも外にでてみた。


 ついでに表通りの様子を撮影してきたのだが、じつはこの時間、まだ許可は出されていなかった。道端で監視役をしていたバンジャールの役員に、ぼくは頭を下げて帰ってきた。