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John 8:32 Then you will know the truth, and the truth will set you free."  複数ブログの過去記事を移管し、管理の委託を受けています/※場合により、語る対象の「ネタバレ」も在ります。ご了承ください 

映画「利休」覚書

千利休役は三国連太郎豊臣秀吉役は山崎努
両者の演技合戦・・・・・・・・と言いたいところだが、利休は秀吉の前ではかしこまるような場面が多いゆえ、山崎のほうがどうしても儲け役ということに。
あまり映画の数を見ているわけではないから、山崎氏は若い時代の「天国と地獄」はともかく、一番印象的なのは大衆的映画といえる「マルサの女」だ。
今回の秀吉役は、独裁的でもあり、庶民的でもあり、素直な芸術の大家・利休の崇拝者でもあり、その反面彼に嫉妬する人間でもあり・・・という、多面性を縦横に演じているので、やっぱり「山崎努の映画」だと思うです。


◆さらに「花の慶次」の秀吉って、なんだ山崎版秀吉なんだな(笑)。
この映画がもととは、しらなんだ。
原哲夫は、一歩間違えば肖像権侵害だろ、というぐらい大胆に俳優の顔をキャラクター化してるわけだが、逆に言えば原哲夫に使われるような顔の持ち主になれば一人前。
「利休」では徳川家康松本幸四郎が演じる。花の慶次では勝新太郎で、まあ豪華な共演だ。


◆「へうげもの古田織部も出てますよ。
斬新なる趣向に、千利休が目を見張り、「泰平の世をリードするのは君の茶だ」みたいなことをいって褒める。


◆結局、利休を秀吉が疎んで殺した理由というのを、映画の中でもこれは!という感じで書いてはいない(それは正解だろう)。
唐入りへの反対、石田三成前田玄以の讒言(近江閥との権力闘争)、彼らから茶会での徳川家康暗殺を示唆されたがしなかった、大名に心酔者が増えたことへの不安、黒の美への評価の差、・・・などなどが重なっている、としたいのだが正直羅列しただけにも見えた。


◆でも、最後の一押しはよかった。
まだ利休の才に未練のある秀吉は、秀吉と利休が知り合った最初に作られた茶室で思い出話を語り合う。そして、大きな桃の花を持ってきて「生けてくれ」と頼むのだが・・・利休は、なんと惜しげもなく花の半分を水に散らしてしまう。
その予想もしない美しさに目を見張った秀吉は・・・突然、「お前は俺も、この桃の花のように自分次第で自由に価値を決められると思っているんだろう」と怒り出す。
嫉妬、とも畏怖と恐怖、とも判然としない。 見る人の解釈次第だろう。


◆この映画はモントリオール映画祭に出品されたそうだ。
美と権力が普遍的なテーマであるがゆえに出品したのか、エキゾチックな東洋趣味の映画として見られたのかは分からない。

【参考】http://www.allcinema.net/prog/show_c.php?num_c=150882