皇室の名宝展・チベット展

 東京国立博物館の「皇室の名宝展」(http://www.bihana.jp/)に行きました。
 伊藤若冲の30幅の「動植綵絵」の周辺が特に混んでいて、スタッフ達は必死に約10秒毎に「最前列の方は少しずつ左に歩んでいって下さい!」という意味の叫びをあげていました。
 彼等が提唱する秩序はほとんどの入館者に受け入れられていました。最前列まで行った場合はゆっくり鑑賞出来ない代償として視界を遮るものが無く、後列に下がった場合は最前列の人々の陰で絵の全体を一度に見られない代償として落ち着いて鑑賞し続ける事が出来るという訳です。皆、目的に合わせてそれぞれ自分の場所を選んで楽しんでいました。
 ところがです。物凄く運の悪い事に、私は横着な老婆の被害を受けてしまいました。人が良さそうに見えたのか、私の背が前後数名の中で極端に高かったのか、最前列で鑑賞している最中に後列から肩を叩かれ、「もっと屈んで歩いて下さらんかー。」みたいなうわ言を聞かされました。
 スタッフの叫び声がその老婆には聞こえなかったという可能性も確かにあります。しかし自分の周囲でどんな規律が発生しているのかぐらいは最低限の知性さえあれば見極められた筈です。敢えて自分だけ二兎を追うとは、何たる恥知らずでしょうか。
 その場で一喝したりしては周囲の来館者の迷惑になるのでやめておきましたが、心の中で歴代124柱の帝に、この帝国臣民としての徳義に欠ける、というか人間社会の規律の遵守の度合いにつき訓練を受けた犬にも劣る老婆へ、神罰を下されるよう祈りました。
 冗談はさておき、こういう心根の持ち主が、絵を見て感動出来るとは到底思えません。本人にとっても美術館巡りは効率の良い貨幣の使い方ではないと思われます。
 続いて上野の森美術館に「聖地チベットポタラ宮と天空の至宝」(http://www.seichi-tibet.jp/)という、ドラクエみたいな副題の展示を観に行きました。
 率直に行って、チベット仏教は以前から相性が悪かったです。露骨な快楽主義的側面も苦手ですし、『孔雀王』に出てきた闇の大日如来の様なにやけ顔の仏像も苦手でした。また元・明・清がチベット仏教に耽溺して弱体化していったという歴史からも、ちょっとした嫌悪感を持っていました。
 でも、本当に手が千本ある千手観音を観た途端、そういった負の感情は全部吹っ飛びました。
 外に出てしばらく歩くと、チベット難民救済系の団体のものと思われる冊子が置かれた椅子がありました。
 その冊子には、何故か「※このチラシは、どこの団体にも属さない個人が作成しているものです。」という却って信憑性を根こそぎ消し去る注釈が書かれたビラが挿まれていました。冊子の製作者及びビラの製作者の正体や両者の関係は不明です。

 御覧の様にチベットとインカとを並列しているのですが、人権思想の弱かった時代に滅ぼされた文明の内の一つに自分達を比すのは、却って同情を弱めてしまいそうです。
 また「中国人の憎しみは、「反日」から「反少数民族」にシフト中。」という記述もあったのですが、日本人にそう訴えても「そいつは好都合だ!」という反応が予測されかねません。北朝鮮の高官に危機意識を持ってもらうには絶好の脅し文句だとは思いますが・・・。
 その後、カフェすいれんで牡蠣のパスタを食べて帰りました。

ドラゴンクエストVIII 空と海と大地と呪われし姫君

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