『機動戦士ガンダム』の第一話では、ガンダムに初めて搭乗したアムロ=レイが「凄い、五倍以上のエネルギーゲインがある。」と呟いている。この「五倍以上」というのが何の五倍以上なのかについては、様々な説がある。
私は以下の二つの理由から、「アムロが偶然入手していた「極秘資料」に書かれていたデータの五倍以上だ」という説を主張したい。
第一の理由は、直前の「同じだ!」という発言が、「極秘資料」と現物の比較である可能性が高いからである。極秘資料に書かれていたのとそっくりなコックピットを見て概ね「同じだ!」と気付き、続いて細部を検証している内に設計図以上に強い箇所を発見したのだとすれば、非常に自然な流れになる。
第二の理由は、アムロの手にした「極秘資料」自体がガンダムを過度に弱く描いた偽情報だったと考えれば、後述する通り、ガンダム世界の様々な謎が一気に解決するからである。
以下、個別の問題ごとに検証していく。
※ジオンに奇襲された程度で民間人の少年の手に渡った極秘資料の件
この程度の事件で流出する資料は、仮に表紙に「極秘」と書いてあったとしても大した秘密ではない。自然な形で流出したら寧ろ儲けものな偽情報が満載という可能性も高い。
おそらくレビルはV作戦の情報が漏れる事は織り込み済みであり、意図的に弱い設計図を印刷して、組み立て直前に数倍の強さの部品と交換したのであろう。
※情報通の連中の方がガンダムを甘く見ていた件
物語において、まずシャア=アズナブルがガンダムの硬さに驚いた。続いてガルマ=ザビとシャアがガンダムの運用方法の多彩さに驚いた。マ=クベはガンダムの融点の高さに驚いた。しかもマは戦争末期にももう一度ガンダムの硬さに驚いた。キシリア=ザビはジオングに乗ってやっとガンダムと互角になったシャアを馬鹿にした。
一方でガイアが耳にしていた「噂」は、ガンダムの強さをかなり正確に伝えていた。
こうして見ていくと、情報通な連中程、ガンダムを軽視していた事が判る。
これも、上層部は実際の20%以下の戦力の偽ガンダムに関する情報をある程度知っていたため、それが先入観になってしまったと考えれば、完全に辻褄が合う。
※それなりの知能が残っていた筈のテム=レイが、ガンダムの性能に関しては極端に軽視していた件
ガンダムの開発者であったテム=レイは、酸素欠乏症のせいで知能が低下した。しかしその後もジャンク屋で住み込みで働く程度の知能は残っていた。しかも、それなりにまともな身なりをして本屋に行く程度の収入は得ていた。
そんなテムが、役立たずの増設回路を開発し、それでガンダムの戦闘力が数倍に跳ね上がると思い込んだのは、少々不自然である。
だが偽の設計図だけを覚えていて、直前に五倍以上の強さにするというレビルの約束だけ忘れていたとすれば、これも辻褄が合う。
「ガンダム>偽ガンダム+増設回路=偽ガンダムの数倍>偽ガンダム」という式を書けば解り易い。
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