ライトノベル風の外観をしていた武田泰淳の『十三妹』を105円で買って読んでみた。

十三妹(シイサンメイ) (中公文庫)

十三妹(シイサンメイ) (中公文庫)


 某巨大古本屋で武田泰淳の小説が105円で売られていた。表紙の絵は如何にもライトノベル風であった。その扱いといい、その表紙といい、どうしてもあの『ひかりごけ』の武田泰淳と印象が結びつかなかった。半信半疑のまま購入して帰宅した。
 もしも内容が「主体性は低いが顔と財産は上の中程度の男性主人公が、十三人の互いに反発し合わない妹に好かれまくる話」であったら笑えると思いながら読み始めた。
 結果、「主体性は低いが顔と財産は上の中程度の男性主人公が、二人の互いに反発し合わない妻に好かれまくる話」であった。笑えた。
 田中芳樹氏による注釈は、正直言って大半が余計であった。例えば171ページで作者本人が謙譲語の一人称としての「罪人」について説明しているというのに、わざわざ175ページでその類義語としての「罪民」について教えてくれていたりするのである。
ひかりごけ (新潮文庫)

ひかりごけ (新潮文庫)