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2008-12-20

「強制連行は200人程」という誤認

| 03:12 | 「強制連行は200人程」という誤認を含むブックマーク 「強制連行は200人程」という誤認のブックマークコメント


前の記事に頂いたブックマークをたどっていたら、雁屋哲の美味しんぼ日記 「嫌韓・嫌中について その4」という記事を見つけた。


ここでは雁屋氏に届いた、典型的な嫌韓からのものと思われる投書が紹介されていて、その中に「朝鮮人強制連行も分かっているのは200人程でほとんどが朝鮮からの出稼ぎです」という部分がある。


で、当然雁屋氏はこの点に対してもツッコミを入れ、「この人の書いてきた『200人程度で、ほとんどが朝鮮からのでかせぎです』と言うのは、一体何なのだろう」と嘆いておられるのだが、自分は「ああ、またか」という気持ちになった。


実際、2ちゃんねるミクシィなどで朝鮮人強制連行の話になると、必ずと言って良い位この「強制連行された朝鮮人は200人くらいしかいなかった」という話が出てくるのだ。


この数字のソースというか根拠は、1959年7月13日の朝日新聞に掲載された、以下の記事と思われる。



大半、自由意思で居住 外務省在日朝鮮人で発表戦時徴用は245人


在日朝鮮人北朝鮮帰還をめぐって韓国側などで「在日朝鮮人の大半は戦時中に日本政府が強制労働をさせるためにつれてきたもので、いまでは不要になったため送還するのだ」との趣旨の中傷を行っているのに対し、外務省はこのほど「在日朝鮮人の引揚に関するいきさつ」について発表した。これによれば在日朝鮮人の総数は約六十一万人だが、このうち戦時中に徴用労務者として日本に来た者は二百四十五人にすぎないとされている。主な内容は次の通り。


一、戦前(昭和十四年)に日本内地に住んでいた朝鮮人は約百万人で、終戦直前(昭和二十年)には約二百万人となった。増加した百万人のうち、七十万人は自分から進んで内地に職を求めてきた個別渡航者と、その間の出生によるものである。残りの三十万人は大部分、工鉱業土木事業の募集に応じてきたもので、戦時中の国民徴用令による徴用労務者はごく少数である。また、国民徴用令は日本内地では昭和十四年七月に実施されたが、朝鮮への適用はさしひかえ、昭和十九年九月に実施されており、朝鮮人徴用労務者が導入されたのは、翌年三月の下関―釜山間の運航が止るまでのわずか七ヶ月間だった。


一、終戦後、昭和二十年八月から翌年三月まで、希望者が政府の配給、個別引揚げで合計百四十万人が帰還したほか、北朝鮮へは昭和二十一年三月、連合国の指令に基づく北朝鮮引揚計画で三百五十人が帰還するなど、終戦時までに在日していたもののうち七五%が帰還している。戦時中に来日した労務者、復員軍人、軍属などは日本内地になじみが薄いため終戦後、残留した者はごく少数である。現在、登録されている在日朝鮮人は総計約六十一万人で、関係各省で来日の事情を調査した結果、戦時中に徴用労務者としてきた者は二百四十五人にすぎず、現在、日本に居住している者は犯罪者を除き、自由意思によって在留したものである。



これは鄭大均の「在日・強制連行の神話」にも引用されているし*1、またネット上でもかなり出回っている*2。また、熱心な人もいるもので新聞記事そのものの画像もアップされている。


http://img2.echoo.jp/photo/blog_b/52019453ce69cd3536fa41c3fe15ee29.jpeg


この記事を読んで「強制連行された朝鮮人は245人しかいなかった」と勘違いしている人が多い。


おそらく「245人」という数字と「戦時中の国民徴用令による徴用労務者はごく少数」という部分と「残留した者はごく少数」という部分を短絡的に結び付けてしまったのだと思う(それに加えて、この記事の文章はかなり読み辛い、典型的な悪文だというのもある)。


しかし注意して読めば、


「(現在、すなわち1959年当時の)在日朝鮮人の総数は約六十一万人だが、このうち戦時中に徴用労務者として日本に来た者は二百四十五人にすぎない」


「現在、登録されている在日朝鮮人は総計約六十一万人で、関係各省で来日の事情を調査した結果、戦時中に徴用労務者としてきた者は二百四十五人にすぎず」


つまり、「戦時中の強制連行で日本に来た人の多くは帰国した」と言っているだけである。この事が隠されていたわけでも何でもないということは鄭大均「在日・強制連行の神話」を検証する(5)鄭大均「在日・強制連行の神話」を検証する(番外編)でも述べてきた。


ちなみにこの記事では「戦時中の国民徴用令による徴用労務者はごく少数」と具体的な数字を明らかにしていないが、資料*3によれば、1944年〜1945年度に国民徴用令で朝鮮から日本本土に新規徴用された数は210975人*4。決して「ごく少数」ではない。


何度も言うが、「強制連行」によって日本に渡ってきた朝鮮人の多くは終戦直後帰国した。よって現在の在日コリアンで強制連行の当事者、もしくは強制連行をルーツにする者は少数である。しかしそれは「強制連行がなかった」あるいは「強制連行された人自体が少なかった」ということを意味しているのではない。

*1:「〜神話」p38〜39。しかし実はそれより前、1965年に刊行された朴慶植朝鮮人強制連行の記録」でこの記事は引用されている(p48〜49)。朴氏はこの記事が徴用以外の動員(募集・官斡旋)の実態を軽視・隠蔽していることを厳しく批判している。

*2:「朝日新聞」「1959年」「245人」「7月13日」のキーワードで検索すると嫌韓サイトなどがすぐ見つかるはず。

*3大蔵省管理局『日本人の海外活動に関する歴史的調査』朝鮮

*4:いわゆる朝鮮人強制連行と言う場合、これに更に募集・官斡旋による動員が加わる。