草津へ

上を通過する人は四十肩です。整形外科へ通ってはいるのですがまだ完治してなくて・ここのところぶり返してるようで、まっすぐ腕を上げることが出来ません。いくらか気色悪いことを書くと血を分けた兄弟でもないのに・戸籍上は赤の他人なのに、不思議なものでまっすぐ上げられない腕をみてると日常生活や業務にはさして支障はないと聞いてはいてもちょっと心かきむしられるものがあります。長期は休めないけど連休どこか行こうよとは決めていてそのうち2日ほど草津温泉に行ってました。そもそも温泉で治れば整形外科なんかいらないのですが温めれば楽にはなるようなのと、疲労回復が目的です。なんだろ、疲労回復って書いてておっさんくさいですが。
【湯畑】
高崎から長野原経由でだいたい2時間くらい、上野からだと3時間半のところに草津温泉はあります。

温泉街の真ん中に湯畑という、温泉を木製の樋に掛け流して温度調整や湯の花を採取する設備があります。近寄ると硫黄のにおいというか卵のにおいがうっすらと。ランドマークなのかけっこう人出がありました。

樋には湯の花とおぼしきものがびっしり。

複数の樋を経た温泉の流れは一本にまとまって

最後は滝のように流れ落ちます。書くとけっこう単純なんすが眺めていても案外飽きません。

樋から漏れたお湯がかかる岩肌が一部緑色になってるのがわかりますかね。あとで知ったことなんすがイデユコゴメという単細胞の紅藻が生息しています。草津温泉の湯畑は高温かつ強酸性(pH2.1)で、そんな環境(胃液に近い)で生息できる生物があるのかとちょっと興味深かったです。

湯畑は日没後にライトアップされてて(夕飯後に見学しに行った)ちょっとおどろおどろしい雰囲気になるのですが

やはり観ていて飽きませんでした。
【強酸性の温泉のこと】
温泉街から西へ歩くとサイノカワラという名前の公園があります。散策にはもってこいの場所で、足湯や露天風呂があります。小川が流れてますが

温泉などから流れてくるので生温かく強酸性なので冷めたとしても小川に魚は棲めません。下流域にはいま八ッ場ダムを造ってる最中で、強酸性と知ってからは素朴な疑問として「え?どうしてるのだろう」ってのがありました。宿で質問すると「石灰石を投入する中和施設があってそこで処理して下流域に流してます」とのこと。ただその中和施設ができるまではかなり苦労があったようで、問わず語りで草津の周辺では以前は稲も麦もダメ、蕎麦とインゲン豆は栽培できてた、というのを教えてもらえたのですが、たしかに湯畑周辺には蕎麦屋やインゲン豆入りの羊羹やインゲン豆の甘納豆の土産物がけっこうありました。

写真は草津の「ゆもみちゃん」というゆるキャラですがゆもみちゃんの持っている板でお湯を揉みながら(≒お湯のなかをかき混ぜながら)適温にして入るのが古来からの入り方です。泊ったところは(浴衣の帯をうしろで締めるのがいくらか困難なので手伝う必要があって宿は貸切風呂があるところを選んだので)貸切風呂だったんすけど板はないけど湯かき棒でよくかき混ぜることを推奨していました(おっさんが全裸でお湯をかき回すところをご想像ください)。お湯を揉んでも≒湯かき棒でかき混ぜても、肌がうっすら赤くなるくらい熱さです。ただし慣れるとなんとも思わなくなるというか、湯船から外にでようとすると「もうちょっと入っていようかな…」というクセになるお湯です。宿に露天風呂もあったのですが裸で外の景色を眺めるというのもなんだか解放感があってこいつもクセになりそうなんすがって、そんな話はともかく。

宿のほかにもあちこちに小さな共同浴場があり(うちいくつかは旅行者にも開放されてて無料で)、さらにホテルなどの大浴場を含めて大きめの日帰りの入浴施設が複数あり、湯めぐりが可能です。温めると調子は良さそうだったので草津にいる間に宿と宿以外のお湯で4回入浴してて、うち1回は38度から46度まで湯温の異なる浴槽を低温から高温に順に入る合わせ湯のある施設も体験してきたのですが、46度なんて狂気の沙汰だ…と思いつつも人間の身体って不思議なもので徐々に慣らしてゆくと46度でも入れちまいます。温泉って肩の調子をよくすると同時に狂気の沙汰が可能になるところです。

草津は高地なので桜がまだ残ってました。ただし上州名物のからっ風が例外なく吹いてて花を散らします。お湯の中以外は風もあって体感的にはけっこう涼しいところでした。温泉って退屈するかも、と予想していたのですが草津は滞在中正直飽きません。やり残したことといえば腰に手を当てて牛乳を飲むことぐらい。強酸性のお湯は副次的効果として肌がすべすべになるとは聞いていて、錯覚かもしれぬもののたしかに若干肌がすべすべになった感覚を保持したまま帰京しました。