きらきらひかる

きらきらひかる (新潮文庫)

きらきらひかる (新潮文庫)

実際には古本屋で買ったのでこのカバーじゃないんだけど。

この本は私にとってある種の催涙剤であることは否定できない。
以前(中学生くらいだったとき)この本を読んだときにはわからなかった、
笑子が涙を流す気持ちがよくわかるようになってしまった。
それは身体的な反応になって現れてしまって、私は涙を流す。

江國香織さんの小説の、行き場のなさ、に私はやられている、と思う。
ここにいること。
私がここにいると思っている限りそれはどうしようもないのだ、ということ。

私が身をよじって泣いても、どうにもならないことが世の中には沢山あるみたいで、
でも私は泣く。

羽根木さんが何を言っているのかわからない感じや、
睦月の頑な誠実さの残酷さ、罪悪。

いつのまにこんなふうに感じるようになったんだろう。
時期が違っていたらもっともっと毒されていただろう、と思う。
今の私にとってさえ、こんなにもあたたかな小説であるのに。

ゆるされたい、と願うのは浅はかなことだろうか。

感じて、息づかいを。

感じて。息づかいを。 (光文社文庫)

感じて。息づかいを。 (光文社文庫)

これは川上弘美さんがいろいろな作家さんの作品から選んで編んだ短編小説集で、
よしもとばななさんの「とかげ」と川上弘美さんの「可哀相」は既読だったのだけど、雰囲気買いしました。

まだ全部は読んでいないのだけど。

「とかげ」よしもとばなな
許された気になる小説です。とかげと呼ばれる鍼灸師の女の人と、医者が主な登場人物です。ある種の呪いのような、祝福のような。
私も生きていてもいいのかもしれない、と思える。こんな風になんにも信じられなくて、閉じていて、未来へ向かっていない人間でも、生きていていいのかも知れない。そういうほのかな希望が、細々と宿っている。


桜の森の満開の下坂口安吾
美しい、小説だと思います。一人の山賊と一人の女が出てきます。実際にはむごたらしい描写が沢山ありますが。とてもコンパクトに、美や強さや弱さや狂気について書いてあるように思います。山賊にとっての「都」が変化していくさまが面白いです。

武蔵丸車谷長吉
ある夫婦が、一夏の間甲虫を買う話です。ずいぶん痛ましい話ですが、夫婦が甲虫に注ぐ愛情のあたたかさ、必死さが心に残ります。

「花のお遍路」野坂明如
兄が出生している間に妹が娼婦に身を落として…という話です。兄と妹の愛情はまぶしいくらいです。でも、女はそんなに男なしでは生きていけないでしょうか。

「山桑」伊藤比呂美
女が蛇に襲われる話ですが、なんというか山桑の木にしろ、蛇にしろ、それに魅せられる、魅入られることの恐ろしさを感じました。

「可哀相」川上弘美
これは確か「溺レる」に入っていた一編です。女の人と、ナカザワさんという男の人の話なのですが、痛くしたり、されたりするのがいいそうです。笑いや、そうでなくて、でもその二人の結びつき方の余地のなさ、というか個人的な様が非常にこう、ぐっとくるものがある小説です。笑