- 作者: 江國香織
- 出版社/メーカー: 新潮社
- 発売日: 1994/05/30
- メディア: 文庫
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この本は私にとってある種の催涙剤であることは否定できない。
以前(中学生くらいだったとき)この本を読んだときにはわからなかった、
笑子が涙を流す気持ちがよくわかるようになってしまった。
それは身体的な反応になって現れてしまって、私は涙を流す。
江國香織さんの小説の、行き場のなさ、に私はやられている、と思う。
ここにいること。
私がここにいると思っている限りそれはどうしようもないのだ、ということ。
私が身をよじって泣いても、どうにもならないことが世の中には沢山あるみたいで、
でも私は泣く。
羽根木さんが何を言っているのかわからない感じや、
睦月の頑な誠実さの残酷さ、罪悪。
いつのまにこんなふうに感じるようになったんだろう。
時期が違っていたらもっともっと毒されていただろう、と思う。
今の私にとってさえ、こんなにもあたたかな小説であるのに。
ゆるされたい、と願うのは浅はかなことだろうか。