- 作者: エンジニアマインド編集部
- 出版社/メーカー: 技術評論社
- 発売日: 2007/03/14
- メディア: 大型本
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ロジカルシンキング
要素分解
まずはロジカルシンキングから。ロジカルシンキングは、因果関係を中心に物事を考える。つまり原因と結果の相関関係や時間的順序。何かの問題を取り扱う場合、対象の要素分解を行う。記事の例をそのまま使うと、
2002年の東京の法人タクシー市場は約4400億円で、約2万8600台のタクシーが稼働している。
利用者は年間3.5億人。タクシーは二人の運転手が交代で運転し、その稼働時間は1日当たり約20時間。
であり、要素分解してみると
売上高4400億円 | +--> 台数2万8600台 | × +--> 1台当たり売上1552万円 | +--> 日数365日 | × +--> 1日当たり売上4万3000円 | +--> 稼働時間20時間 | × +--> 1時間当たり売上2150円
となる。ただ、これだけではあくまでも事実の分析。ここから論理的に思考を進めていくことになる。
演繹・帰納的思考
演繹的思考とは、「観察された事実」と「一般論やルール」に基づいて結論づける考え方。帰納的思考とは、複数の事象の中から共通の性質を見つけ出し、一般論を導く考え方。これらを駆使して、事実から論理的に推論を導いていく。
MECE思考
演繹的思考と帰納的思考を組み合わせて、課題に抜けや漏れがないかチェックする。これをMECE思考という。
3Cと5Force
課題発見の方法として有効なのが3Cと5Force。戦略について考察するなら3C。3Cとは、
- 顧客分析
- 競合分析
- 自社分析
である。業界の競争の構造について考察するなら5Force。5Forceとは、
新規参入の驚異 ↓ 仕入れ先の交渉力 → 既存競合の力関係 ← 顧客の交渉力 ↑ 代替品の驚異
のように、業界の構造が大きく変わるときは「業界の力学」に作用するような「5つの力」のいずれかが働いているときである、とする考え方。
課題発見に使えるロジカルシンキング
以上のように、ロジカルシンキングは課題の発見には有効である。しかし、課題の解決に使うには少々問題がある。
システムシンキング
記事の例では、タクシー業界の問題は「乗車率の低さ」にあり、それは「運賃体系」と関連があるところまでを、ロジカルシンキングで導き出しています。となると、考えられる対策は主に2つ。
- 料金を上げて、実車率が低くても売上が高くなるようにする
- 実車率を上げるために値下げをする
しかし、これらの対策には矛盾がある。料金を上げれば乗車率が下がるかもしれないし、逆に値下げをして乗車率が上がっても、それに見合った売上になるとは限らない。あるいは乗車率が伸びてくるのに時間がかかるかもしれない。これらはロジックツリーからは見えてこない、「時間」という要因の影響である。この「時間」という要因を考察の対象に入れるのに適した考え方が、システムシンキングである。
7つの学習障害
「時間」という要因を考察の対象にいれることができなければ、対策は近視眼的で短絡的なものになる。企業は短期的な考え方を元に行動を決定し、そして多くの失敗を残しているにもかかわらず、学ぶことができないのは何故か。7つの原因があるらしい。
- 自分責任範囲にしか興味を示さない
- 敵は外部にあり
- 「積極的に対応することは良いことだ」という幻想
- 出来事のレベルに囚われる
- ジワジワした変化には気づかない
- 原因と結果が離れている場合には「経験から学ぶ」ことが難しくなる
- 経営陣は全て有能であるという誤解
3つの課題
7つの学習障害は、3つの課題に集約できる
- 問題を捉える視野の狭さ・不適切さ
- 自分責任範囲にしか興味を示さない
- 敵は外部にあり
- 経営陣は全て有能であるという誤解
- 事象や現象のみに囚われた対応
- 「積極的に対応することは良いことだ」という幻想
- 出来事のレベルに囚われる
- 「時間」の考察不足
- ジワジワした変化には気づかない
- 原因と結果が離れている場合には「経験から学ぶ」ことが難しくなる
これら3つの学習障害に対処するのに、システムシンキングは有効である。
システム
システムとは
相互に作用しあう要素(部分)の集まりであって、全体としての機能をもつもの
である。例えば、
- モチベーションは積極的な行動の原因になる
- 積極的な行動はモチベーションを強化する
という好循環を生むが、一方で
- 積極的な行動が過剰になると疲れが出て、モチベーションが低下する
という連鎖反応が起きる。この連鎖反応全体を「システム」と呼ぶ。
因果ループ図
システムシンキングでは、このシステム全体を「因果ループ図」で表す。
まずリンク。リンクとは、2つの要素の因果関係を表すもので、矢印を使って表記する。原因と結果が同じ方向に動く場合は、単に矢印でつなげるだけ。反対方向に動く場合は、矢印にマイナスをつける。
原因 ----------------> 結果 モチベーション -------> 積極的な行動 − 疲れ ----------------> 積極的な行動
で、拡張フィードバックループ。互いに連鎖し、強化しあう関係がループ全体に循環している状態。ホントは矢印がグルッとRの周りを回っているような記号で表す。
+-->モチベーション -------+ | | | (R) | | | +-------- 積極的な行動 <--+
で、バランスフィードバックループ。お互いの要素の変化方向が、互いを打ち消し合うように作用する状態。ホントは矢印がグルッとBの周りを回っているような記号で表す。また、変化が到達するまでに時間がかかる場合は、"||"で「時間の遅れ」を表す。
− +------> | +-->モチベーション -------+ | | | | | (R) | | | | | +-------- 積極的な行動 <--+ | | | (B) | | | +------ 疲れ --||--+
因果ループ図のメリット
- 複数の因果関係を扱うことができる
- ロジックツリーによる要素分解では扱いにくい
- フィードバックを扱うことができる
- 結果が原因にも作用する状況を示すことができる
- 思考に「時間」の概念を取り入れることができる
- 事象を含むモノゴトの全体像を4つの階層に分けて考察できる
- 「事象」のレベル
- 目の前で起きている現象のこと
- 「パターン」のレベル
- 事象が時間と共にどのような変化を示すのか
- システムシンキングを実践する際の起点となるパターンが幾つかある
- 「構造」のレベル
- パターンから見えてくるシステムの構造
- 「メンタルモデル」のレベル
- 上記3つの基礎概念
- 私たちが暗黙の内にもっているモノの見方や考え方
- 知らず知らずのうちに行動に大きな影響を及ぼす
- 「事象」のレベル
ここから先
雑誌上の記事では、この後、典型的なシステムの型が3つ紹介されている。型を使うことで、3つの学習障害のタイプに対処しやすくなるらしい。また、システムシンキングを一歩進めて、シナリオシンキングというのも出てくる。希望的観測を排除して、なるべく客観的に未来を洞察し意志決定に役立てるというもの。これらも面白かったので、興味があれば是非一読されることをオススメします。図がいっぱい出てくるのでBlogでは書きづらい・・・。