一部でかなりの盛り上がりを見せている国籍法改正の話だけど、いまいちどう理解すればいいか混乱気味だったので、自分なりにまとめてみた。
最高裁での違憲判決
1 国籍法3条1項が,日本国民である父と日本国民でない母との間に出生した後に父から認知された子につき,父母の婚姻により嫡出子たる身分を取得した場合に限り日本国籍の取得を認めていることにより国籍の取得に関する区別を生じさせていることは,遅くとも平成17年当時において,憲法14条1項に違反する
2 日本国民である父と日本国民でない母との間に出生した後に父から認知された子は,父母の婚姻により嫡出子たる身分を取得したという部分を除いた国籍法3条1項所定の国籍取得の要件が満たされるときは,日本国籍を取得する
これが発端だったようだ。これに対する自分の理解は、
である。国籍を得る条件については、下記サイトが非常に分かりやすかった。感謝。
http://d.hatena.ne.jp/inflorescencia/20081115/1226728277
改正案について
今回の国籍法の改正内容は、最高裁判決をそのまま取り入れた内容であるようだ。つまり、
- 出産後であっても、婚姻すること無しに、認知のみをもって国籍を取得することができる
というものであると理解。それで、なぜこの改正が話題になっているかというと、
・DNA鑑定等の科学的根拠が不要(DNA鑑定を設けていないの)で、日本国籍の取得が容易かつ無制限に可能。
・出生後に認知された「子供」にも国籍を付与される = 満19歳で認知 → 国籍取得も可能 【補足 子供の定義:父又は母が認知した子で二十歳未満のもの】
・罰則が20万円以下の罰金、懲役1年以下とかなり緩やかで、抑止効果は無きに等しい
・科学的根拠に基づく証明手段がなく、自己申告である認知と聞き取り調査のみなので虚偽の申請を見抜く確実な方法が無い
という問題があるかららしい。これはこれで、ああ、その通りだとも思える。罰則の軽重判断は、よく分からないけど。
問題は何だろう
認知に際して科学的根拠を求めないのは、出産前も同じである。現行法も改正内容も、実は同じ根っこを持つ問題を有している。現行法でも悪用しようと思えば可能だ。だから、改正案の問題は
- より悪用しやすくなる
点にあるものと理解した。
では、出産後認知にのみDNA鑑定等を求めればいいのかというと、多分、それは最初の話に戻るのだろうな、という気がする。何が言いたいかというと、出産後認知→国籍取得とするには、現行法において
- 婚姻
が要求されているが、それが
- DNA鑑定
になるだけなので、平等足りえず、やはり違憲になるように思う。んだから、自分的には、問題のありかは
- 何をもって認知したとするのか
にあるのであって、改正案そのものに問題があるというわけではないと考える。
この件に対する自分のスタンス
改正案によって悪用しやすくなるとは思う。現時点での成立は議論が不足しているとも思う。だから、まぁ、急いで成立させなくてもいいんじゃん?という感じだろうか。
しかしながら、私も引用したhttp://www19.atwiki.jp/kokuseki/の論調は、いささかポジショントークが過ぎるように思う。私の希望としては、認知のあり方を含め、根っこを見直して欲しいと思うのだけど、加熱しすぎた論調によって、極端に逆方向へいってしまわないかが心配。
結果、国籍を取得するのに妥当な要件を持つ人たちが、さらに苦しみ続けることになったりしたら、ちょっと悲しい。
追記
改正案によって「悪用しやすくなる」と表現したが、それがどの程度のものか、私の現時点の理解を書いておきたい。現行法で国籍を得るために悪用するとして、最も簡単な手順は
- 日本国籍を持つ男性を探す
- 婚姻届を出す
- 偽装認知する
だと思う。改正案によって、これがどうなるかといえば、
- 日本国籍を持つ男性を探す
- 偽装認知する
だ。事務手続きが1ステップ分、楽になる。これが改正案のデメリット。
また、改正案にはメリットもあると思う。
一つは、元々の最高裁で争っていたようなケースで、スムーズに国籍取得ができるようになることだ。国籍を取得するに相応しいと判断されたケースが正当に扱われるのだから、これは明らかなメリットだ。
もう一つは、国籍法と憲法14条との整合性が取れるようになること。
今回の改正案については、以上のメリット・デメリットを踏まえたうえで、冷静に判断したいところです。