伏見憲明著「さびしさの授業 (よりみちパン!セ)」を読みました。

本日は、伏見憲明さん著

「さびしさの授業」

をご紹介します。

本書は時折ご紹介する
理論社の10代前半向けシリーズ
「よりみちパン!セ」の一冊です。

「さびしさの授業」という、
切ないタイトルですが、

私もかれこれ20年以上も一人暮らしをしています。
自由で開放的な「楽しい」気持と、
一人の夜に感じる「さびしい」気持ちは、
繰り返す波のように訪れるわけです。

「さびしい」は引かれるものがあります。


本書では章ごとに、異なる寂しい気持や
孤独感を解説しています。


はじめに著者の伏見憲明さんが小学校の頃、
一週間だけクラス全員に無視された
(いじめにあった)様子を綴っています。

その時、他のイジメと同様、
伏見憲明さんも何事もなかったかのように
気丈にふるまい、
先生や親も気付かなかったそうです。

一番ショックだったのは、
友達と思っていた男子に無視されたことではなく、

いじめっ子から、見えない所では話をしてあげるね。

・・と同級生の女子から、
上から目線で同情されたことでした。

私が思うに、
その女の子には他意はなかったように感じますが、

彼女の哀れむような目は、
それから30年経っても記憶に残っています。

クラスの無視(いじめ)は一週間ほど経ち、
何事もなかったかのように終わりました。

しかし、
クラスのみんなに無視された経験は、
伏見憲明さんの心に大きな傷を残しました。
小学生にして、人間不信となってしまったのです。


続く章では、映画「シックスセンス」を題材に、
幽霊が見えるという、普通とは違った少年の、
人と違う、誰からも理解されないという辛さを
解説しています。


続く章では、小説「赤毛のアン」を題材に、
幼くして孤児と成った少女の明るさの裏に秘めた、
内面の絶望感を表現します。

厳しい環境を乗り越え、明るく振る舞う少女の物語。
そんな単純な話で無いことが解説されます。


続く章では、映画「X-MEN」を題材に、
マイノリティーの孤独を解説します。
マイノリティーは、同性愛者や障害者に例えられる
ことを解説しながら、

現在の障害者が「障害は個性である」というレベルに
達するまでの、過去の闘争が説明されます。

この様子は私も知らなかったのですが、
例えば乙武洋匡があれほど生き生きと暮らせるには、
彼の内面のすばらしさだけでなく、
過去の障害者達の苦労があったという話です。

余談ですが、
今度乙武洋匡さんは「だいじょうぶ3組」という
映画になります。
http://daijyobu-3.com/


最後に、映画「千と千尋の神隠し」を題材に、
「私」という存在はどうゆうことか解説されます。

千尋は、湯婆婆(顔の大きな魔女)に仕事をさせて
欲しいと願い、魔女のルールによって名前を取られ、
「千」となります。

そのあと、
何処にでも居る普通の少女は、
神様の温泉宿である、油屋で下働きとして
生き生きと働きます。

しかし、
他の従業員と違い金銭欲はありません。
カオナシが出した金銭に目をくれず、
ただ両親を救いたいだけなのです。

千と千尋の神隠し」では、
人間は日常を越えた時に、はじめて
「私」が出てくる事を伝えていると云います。

即ち「千尋」は、妖怪を見てもものおじせず、
働き者で・・・
な訳ですが、最後に「油屋」を出て
両親と帰っていくときは、平凡な少女に戻ります。

私的には、キテレツなキャラクターを見て
びっくりするだけの映画でしたが、
千と千尋の神隠し」ここまで内面に迫り
解説できるのは素晴らしい表現力だと脱帽します。
(こんな素晴らしい解説は読んだ事が無いと思います。)

本書の要点は、
人は、どんな人も孤独を生きているということを、
繰り返し伝えている所です。

若い人にとっては、
やや残酷な文章のように感じますし、

大人でもどれ位の人が、
人生の孤独を認識しているのか分かりません。
気付かずに過ごしている人も多いと感じます。

本書で著者が述べたいところは、
人生の孤独に気付き、それでも何かをしようとする
ところに人生の意味があるんだ。と説いています。

各章の冒頭に短いですが、
心に染みるセンテンスが綴られます。
一つだけ紹介します。

==
 きみはこの世界なしには生きられないが、
 世界は、きみがいようがいまいが関係なく存在し続ける。
 その気づきが、きみとこの世界の関わりの出発点であり、
 生きることの一歩だ。
==

たまに会社を休むと、
仕事が回っているか不安で仕方在りません。

しかし、
自分が居なくても、職場は普通にまわっており、
出社して、少し寂しい思いをします。

それでも仕事をするのですが、
ココが世界と自分との関わり合いの出発点
であるわけです。


本書を読みながら、
ビジネス本を読みノウハウだけ学んでもダメだな。
と感じさせられました。

仕事のスキルよりも、心の成長のほうが大事な
気がした今日の一冊です。



 
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