「Social Street View」をiPhone/Androidで


みんなでつくるStreet View

iPhone OS 3.0」および「Android OS」向けのアプリケーションで、『Mobile Nearby』というアプリがあります。端末から、Flickrのモバイル向けサイトm.flickr.comにアクセスし、「Photos taken nearby」をタップすると、現在の位置情報をGPS+インターネットを使って取得して、現在いる場所周辺の写真と地図が表示されるという機能(上の写真)。写真の位置情報は、「Exif(Exchangeable Image File Format)」に埋め込まれたものを利用しています。「この近くにこんなとこあるの?」「この写真この近くのどこ? あそこじゃない? あ違った」などといったかたちで楽しめる。


誰でも思いつきそうなことですが、「iPhoneGPSとコンパスと傾きセンサーを使えば、これってみんなで撮った写真でGoogle Street Viewができるんじゃないか?」。GPSは10m程度の誤差があり、撮った写真が現実の風景の連続と完璧に一致するように配置するのは難しいため、微妙にばらつきが生じる可能性がありますが、画像自体の近似度をとって配置し直せばある程度「それっぽい」Street Viewができるし、最終的には「ユーザーの手」によって「ここじゃなくてこっちのとなりだろ」みたいに再配置するっていう方法をとれば、何となくゲーム感覚で面白さを担保しつつ、Street Viewの精度を上げられるんじゃないかと思います。さらに、「Exif」の日付情報をもとにして、「年代に絞って見る」とか「年代を追って見る」といったように今のGoogle Street Viewにはない「時間性」を用いた機能を作れるかもしれません。

Social Street Viewの応用可能性

Social Street Viewの表示対象になる写真は、特に「まちの風景の写真」だけじゃなくてもよいので、たとえば「食べ物の写真だけ表示する」という感じで店舗情報などとの連携ができそう。
また、撮影された枚数が多ければ多いほどそのスポットの注目度が高いということになるので、写真の枚数に応じてランキングを生成することも簡単にできます。
それ以外にも、旅行中に撮った写真をまとめてアップして、旅行の風景を地図でたどりながらダイジェストで見れる、とか、逆に旅行中に誰かがアップした旅行風景をたどりながら行き先を決める、みたいに、「トラベルクリップ」的なものを共有して旅行体験そのものを補強するサービスとしても活用できそう。

「場所の記憶」の変容

2008年、東京都庭園美術館で『建築の記憶』という展覧会が開催されました。この展示に関して、nobodyのブログで梅本洋一が次のような文章を書いていました。

建築が人々の記憶に留まるためには、写真が必要である。挿絵や図版以上に写真と建築の関係は色濃い。(引用元

建築だけではなく、もっと大きなレンジでの「都市」「地域」「風景」と写真との関わりもまた密接です。そこから動かすことのできない「都市」「地域」「風景」は、実際に訪れない限り見ることができない。逆に言うと、私たちの場所体験=記憶のほとんどが写真によるものだということです。
インターネットの普及以降、写真共有サイトなどの登場によって、いわゆるカメラマンが撮ったパブリックでアイコン的な写真だけでなく、これまで個人の手元にあった匿名性の高い写真がわらわらとネット上にまき散らされることで「場所の記憶」の裾野が広がったというか、場所に対する人々の記憶が非常に多様化したとともに詳細化された、ということがいえると思います。
ただ、この段階ではまだその記憶性は雰囲気レベルで個々人の頭の中に保管されているだけです。仮にSocial Street View的なものが登場すれば、その「何となくみんなが抱いている場所に対する記憶のソース」をまとまったかたちで可視化できる。しかもそれはかなり細かなスパンで増殖し、かなり細かなスパンで編纂することも可能。これによって「場所の記憶」がつくられる仕組みそのものが大きくシフトチェンジする可能性さえあるかもしれません。