肩甲帯と体幹について(1)

肩関節の動きと体幹の動きは動作上別々に考えることは出来ない。お互いの問題が代償しあう関係にあるため同時に見ていく必要性がある。

着眼点
肩の動きが低下している→基質的な問題→(ROM,、M.−ex、などで改善)
           ↓
          動作上の問題
           ↓
    体幹、股関節、膝、足関節どこの由来か
           ↓
       動作をさせて判断
           ↓
座位レベルで評価し機能的に問題がなければ立位にて評価する。
立位において問題が生じれば肩の問題ではないかもしれない。
           ↓
静的評価と動的評価の比較を行いその違いを考察する。客観的なデーター
を用いて問題点を消去法にて絞っていく。
           ↓
改善が見られなければ評価と問題想起の段階に戻ってやり直す。

*この繰り返しで本当の問題を探していく。諦めずに何回もTryするべし。

もちろん評価項目を数多く用意し施行すれば問題点の抽出や断定はしやすくなるかもしれないが時間がかかりすぎるとその間のアプローチが効果のないものになってしまう。ゆえに評価は可能な限りではあるが速いにこしたことはないと考える。PTの能力が問われるとことなる。

肩甲帯と体幹の捻じれ
捻じれによる肩甲骨の運動制限も評価する。

アプローチまでの考え方

<各評価を行う>
→ 客観的データーと動作、姿勢の観察や分析を行い問題点の把握に努める。
  どんな動作がどの問題でどう障害されているかを調べる。
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 その問題は可逆的なのか不可逆的なのかを調べる。X線の利用、形態測定、アライメントの評価など
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 可逆的であるならば何故そのようなアライメント不良を起こしたのかを想起し治療の意義を考える。
               ↓
 治療意義があればアプローチを計画する。ホームプログラムや予防対策などもできれば並行して指導する。

(例1腰痛患者)
 坐位にて姿勢観察。頭部の位置、肩甲帯の高さ、体幹の側彎の有無、骨盤帯の傾き、肩関節屈曲の左右差など評価する。臥位にて骨盤の状態、脚長差の有無、骨盤帯回旋の左右差、股関節の柔軟性など評価する。
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 構築学的問題であり、不可逆的であると判断出来れば装具療法〔コルセット〕やドクターによる投薬でのアプローチなる。
上記でなければ問題点を想起するためより詳しい評価が必要となる。
歩行観察、分析である。アライメント不良がスタビリティー、モビリティーにどう関係しているかを分析する。
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 患者の主訴は腰痛であるが問題は何故腰痛を起こしたのかである。歩容を観察しアライメントを修正したあとに歩行や片脚立位の持続時間など調べる。アライメントを修正し変化がない場合、テストする動作項目を増やす。片脚立位でのハーフスクワットで足部の内側縦アーチの下降による動揺がありその不安定性によるスタビリティーアップの為の筋緊張がモビリティーの低下を招きその状態での負荷による腰部痛の出現であるならば足部アーチへのアプローチが必要となる。故に、樋口の場合は
     動作→ アライメント修正 →動作 → アプローチよ。

足関節から見たアライメント(1)

足関節は最終支持基底面であり動作上の影響はかなり大きくなる。脛骨と距骨での運動(底・背屈)、距骨と踵骨での動き(内外反)前足部での動き(回内外)大きく考えればこの三つの動きの組み合わせで動く。足部の評価にて得られる情報の例を挙げてみる。

前足部回内・後足部外反
想起出来るもの
→ 内側縦アーチの下降、荷重時母趾外反、膝関節外反、股関節内旋位
  荷重時股関節外転位、片脚立位時の重心内側偏移など

前足部回内・後足部内反
想起出来るもの
→ 内側縦アーチの上昇、前足部横アーチの下降、外側荷重、膝関節内反
  
前足部回外・後足部外反
想起出来るもの
→ 内側縦アーチ後方の下降、膝関節外反、重心後内側偏移など

前足部回外・後足部内反
想起出来るもの
→ 内側縦アーチ上昇、ワイドベース外側荷重、歩行時足角マイナスなど

上記のパターンはほんの一部であり、これらのパターンが体幹、肩甲帯と連動して動くため足部の状態だけでは判断しては危険である。

例1、 歩行時膝の内側に痛みがある。
立脚中期に荷重線をより内側に偏移させることにより膝の内反を軽減させる。結果として立脚側の体幹を同側に側屈することによりこ反応を誘発する。→ 疼痛回避の為の跛行となる。
            ↓
      この跛行により新たな症状を引き起こす。ゆえに正しい歩行が大切である。

膝関節から見たアライメントについて(1)

膝関節の代表的な運動は屈曲・伸展であるが前額面においても目に見え
ないストレスという形でアライメント修正に参加している。前額面での
動きが乏しいため膝においてのアライメント不良は痛みになり易い。
その痛みの原因の多くは足部や股関節にあることがあるので見落さない
ように注意する必要がある。

動作の中での膝の役割
荷重下の動作においては膝単独で動くことはなく、常に股関節と足関
節の影響を受け連動して動いている。頭部と骨盤を中継する脊柱と同じ
役割である。

矢状面
→ 足関節背屈、股関節屈曲に対して屈曲で対応
→ 足関節底屈、股関節伸展に対して伸展で対応

矢状面においては上記の関係がうまくいかない時に動作上の問題となっ
て出現する。
→ タイミングのずれ、ROM制限、筋力低下、麻痺、疼痛、感覚障害
  など
膝関節そのものに問題がある場合、逆に足関節と股関節が対応修正に働
いてくれる。ゆえに足関節、股関節本来の働きが低下したり、ストレス
になったりしてしまう。

歩行分析において
歩行中の膝の動きは前額面からの観察により股関節の動きを見る指標と
なる。矢状面からの観察では屈曲・伸展の情報しか入ってこないが他の
関節と関連して観察することにより重心が後方か、前方か、アライメン
トに無理がないかという情報が得られる。
しかし膝関節の動きで異常が発見されたからと膝に異常があると決定で
きないことを理解しておかなければならない。必ず問診、視診、触診、
と併用し判断しなければならない。

動作分析の実際 1

私達の動作分析のプロセスを当たり前ですが紹介します。
1.正常歩行のデーターを理解する。
2.全体像を観察し特徴をつかむ。
  →何でもいいから正常から逸脱したパターンを見つける。
   リズム、動揺、跛行、姿勢、目線の高さなど色々ですが・・
3.上半身と下半身のバランスを見る。
4.局所の症状、現象を見る。
  →いわゆる一般的な評価だと思います。機能的な問題点と現象の一致がある   か把握する。痛みや恐怖心による異常パターンであれば、その場で修正可   能なものもある。楽な動作パターンを選択してあげるものも理学療法士の   仕事であると考えます。
5.問題点に対してアプローチし歩容の変化を見る。
6.リスク管理下で可能なものは何でも試す。
  →歩行の問題解決の鍵が基本動作や階段昇降などの中に隠されていることも   おおいですよね。
他にも多いですが簡単に述べさせていただきます。

前書き 1

 動作分析をどう使うのか?異常パターンや代償動作に着目し、なぜそのような動作が行われているか?どの動作のために行われているか?その動作で得をしている、または損をしている関節や筋、その他の機能を探せば答えが分かってくるのではないでしょうか。
 例えば、肩関節外転であれば代表的な代償動作は肩甲帯の挙上・体幹の側屈があります。肩関節外転の指示に対してそのような代償動作を行えば、明らかに得をしているのは外転機能であり、また問題点でもあります。 
 動作分析はどうやっているかではなく、何のために行っているかを考えることが重要と考えます。当たり前のことですがここが一番難しいですよね〜