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FAIRY TALE このページをアンテナに追加

2013-01-03 失脚/巫女の死/デュレンマット このエントリーを含むブックマーク

 2012年に翻訳ミステリ界で注目を浴びた短編集。やはりとても面白かった。収録されている作品は「トンネル」、「失脚」、「故障 まだ可能な物語」、「巫女の死」の四編である。当方に強い印象を与えたのは、「故障 まだ可能な物語」、「巫女の死」だ。

 恥ずかしながら名前も知らなかったのだが、フリードリヒ・デュレンマットはスイスの大作家だ。訳者の「初めに」によると、「推理小説仕立てのものが多い」とのことだ。その言葉の通り、異様な迫力や強烈なオチとともに、二転三転する展開で読む者を楽しませてくれるものが多い。

 「故障 まだ可能な物語」は、東京創元推理文庫の古典的怪談集や、早川書房の異色作家短編集にさりげなく収録されているような作品だ。車の故障で田舎の宿に泊まることとなったサラリーマン。しかし素人裁判が生き甲斐とする老人に周囲を囲まれて……という不穏当な幕開けをし、取り調べめいたことが始まって、当然ながらもっと不穏当な方向へと物語は転がっていく。怖い。凄く怖い。

 「巫女の死」はオイディプス神話の真相を探る物語。父を殺し、母と交わった男。その母親。そして巫女。関係者が語る真実は皆異なるのだが、真相はどこに。

 光文社古典新訳文庫という渋いところから出版されているのだが、ミステリ小説愛好家の琴線に触れるものが多く含まれた短編集。

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