消えた少年／アンナ・ヤンソン

消えた少年

　警察官たち、それに事件関係者の私生活がみっちりと書き込まれた、いかにも北欧ミステリらしい北欧ミステリ。もちろん外国人問題も出て来る。
　登場人物のことがこれほど書き込まれているのに、ミステリとしての「謎と解決」がいい加減だと腹が立つが、この『消えた少年』の解決にはしっかりとしたものであり、しかも驚きが感じられる。また詳細な描写にも関わらず、犯人がなかなか分からず、誰もがうさんくさく見えるところもポイントが高い。
　スウェーデンと、フィンランドやバルト三国の間の海に浮かび、スウェーデン本土とはまた異なる文化を育むゴットランド島。その住人でお互いのパートナーとのすれ違いとに悩み、一度の情事をもった既婚者の男女。その行為を目撃した幼い少年が消えた。みずから離婚問題に苦しみ、我が子と離れて暮らす女性警察官マリア・ヴェーンが事件を追う。
　邦訳としては一作目だが、原作ではシリーズ第八作に当たる（ということは、シリーズの初期ではマリアはまだ離婚せず、家族で一緒に暮らしていたのだろうか）。
　真相は最後の最後まで伏せられており、しかもショッキングなものである。
　秀作。