はちまドボク

何かからはみ出した、もうひとつの風景

内側の悔しさを超えて

先日、高速道路が交錯するジャンクションの情景を超広角で撮影している写真集が発売された。その名も、『ジャンクション』(メディアファクトリー)。著者は、団地界の有名サイトである住宅都市整理公団や最近設立されたばかりの日本ジャンクション公団の総裁を兼務(?)している大山顕さんだ。

発売日当日、あらかじめ予約していたAmazonからこの本の発送を知らせるメールが届いたが、僕はその時点で札幌にいた。でも、どうしても早く見たくなったので、札幌の書店で購入してしまった。ワクワクしながらページをめくっていく中で、少しずつではあるが、「くやしい」という感情が芽生えてきた。というか、にやけながら「やられた」と。

実際にジャンクションをつくるのは、土木の人間だ。僕もかつて、あるジャンクションの設計に関わらせてもらったことがある。要するに、僕は土木の「内側の人」なわけだ。でも、この写真集は土木の「外側の人」によって書かれている。「内側の人」からすれば、本書には用語とか解釈とかの面で、ツッコミどころが結構ある。これが気にかかるようなら、それはかすかに芽生えた「ひがみ」や「嫉妬」のようなものの作用なんじゃないか。言い換えれば、「外側の人」が自分のテリトリーに侵入してきたことへの自己防衛反応とかね。

僕も含め、土木の「内側の人」は、この写真集の意義をしっかり受け止めるべきだと思う。そして、社会にコミットする方法を、今よりももっと深く、幅広く考えていくべきだと思う。土木の「内側の人」は、その仕事の社会的意義の高さに比べて、社会に対するプロモーションがとことん苦手な気がしてならない。おそらく、特にエンジニアリングといった専門領域に深く入り込むにつれて、外側を取りまくカジュアルな感覚がどんどん薄れていくのだろう。社会のインフラをつくっているのに、社会の動きが見えなくなるという皮肉な現象が、とても気になる。

ものごとの魅力を発見して発信するのは、たとえば評論家のように、ある程度「外側の人」の視線が必要だと思う。この書籍は土木の素晴らしい仕事を、ステキな写真とひねりの効いた文章で紹介してくれているわけだから、本当にありがたい。そう、本書は土木にとってのチャンスを提供してくれているわけだから、くやしがっている場合ではないのだ。

ともかくこの写真集は、「外側の人」だけでなく「内側の人」にも手にとってもらいたいな。そして、その人たちが新たな視座を獲得すれば、土木はもっと面白くなると思う。


ジャンクション

ジャンクション