この4コマ漫画家がスゴい! ÖYSTER先生を語ろう!『光の大社員』『男爵校長』

体調崩してます。半年間頑張る。
最近は画像を使わないでどれだけのことができるか、というのを時々考えます。夏コミ以降の更新からは考え方を変えていて、どれだけ文章で表現できるか、に徐々にシフトしようと頑張ってはいるのですが。ただ、ダラダラと長く書くよりはスパッと表現できればなーみたいに思ってるので結局のところ文章量自体はあんま変わらんと思います。てへぺろ

今回は以前予告したÖYSTER特集になります。実のところ『光の大社員』のみで『男爵校長』は最終巻が出てから特集することも考えましたが、どちらかのみに絞ると作家性を語るには不十分という結論にいたりました。「語らないなら私が語る。」がコンセプトであるからには、『男爵校長High!』最終巻が発売したら再び稿を開くと思いますけどね。

ÖYSTERの作家性を考えよう
まず、ÖYSTERさんの紹介からしたいと思います。あ、違うよ。ハードコアなエロ漫画家じゃないですよ。そもそも、今回の特集は「オイスターさんじゃないよ。」という部分から始まっていたりしますが、それはさておき。一番有名な仕事としては『ケロロ軍曹』の背景担当としての仕事ではないでしょうか、私自身初めて知ったのはその仕事です。
4コマ漫画家としての仕事は、今はなきハイスペック4コマ専門誌『もえよん』という4コマ雑誌で『男爵校長』を連載し、雑誌が休刊した現在も『コミックハイ!』に舞台を変え連載中です。他にも『毎週火曜はチューズディ!』(連載終了)を芳文社に、『光の大社員』を双葉社で連載しています。
最近の傾向からしてどちらかといえば芳文社竹書房次いで一迅社が4コマ界のメインムーブメントであり、、双葉社を軸に活動しているせいか「知ってる人は当然知ってる」度が高く知名度が若干低い気がします。知らない方は勿体ないよマジでマジで。


学園4コマからサラリーマン4コマまで幅広いジャンルを連載している作家さん。…そう書くと簡単ですが、序論で作家性という言葉を使ったものの、ÖYSTERさんの作家性はなかなか複雑だと私は思っています。作家性とはなにか、という部分から考えてみましょう。まず、4コマ漫画には雑誌のカラーに代表されるような、軸となるジャンルがあります。

ファミリー(まんがホームに掲載される作品のように、可愛さを押し出す作風ではない生活感に溢れる作風。サラリーマン4コマもここに分類される。)
萌え(まんがタイムきららに掲載される作品のように、女の子の可愛さ等ビジュアルを押し出した作風。女子高生4コマが多い。)
不条理(特に雑誌に限定されることなく、吉田戦車のような他の作品とは相成れない異色の作風。一般紙に多く見られる。)

ジャンルを大雑把ですが、このような分類をすることができます。例えば蒼樹うめ先生は「萌え」に分類されますし、植田まさし先生ならばファミリーに分類されるでしょう。ÖYSTERさんはどれに属するか。一言で言えば「どれにも属するし、どれにも属さないとも言える。」という複雑な回答になります。読んだことがある方なら「なんとなく分かる」程度の意味合いを持つのではないでしょうか。
言うなれば「作風が超広い!」です。例えばむんこ先生なんかは『マイ・ホーム』『だって愛してる』等作品数が多く、舞台設定等も幅広いですが、どの作品も根本では人間ドラマ感あるファミリー4コマの枠はでません。ですが、ÖYSTERさんは『毎週火曜はチューズディ!』のようにネズミが「チューッス!」というだけの4コマから、『男爵校長』のような学園4コマ、『光の大社員』のようなサラリーマン4コマまで全く異なるジャンルを使いこなしているのが半端ない部分。
余談ではありますが、連載作品が多い中で作風が狭い−というのも逆に凄いことではありますが。竹本泉やら胡桃ちのやら4コマ界隈には作品量産マシーンとも言える4コマ漫画家(竹本先生は4コマではないですけど)がいますけど、テーマや見せ方を工夫しつつも同じ作風を積み上げていくのもすり減る作業ですよね。それはそれで半端ないと思いますが、今回のテーマと離れるためこの辺でしまい。
そして、一作品に様々なジャンルが存在している4コマ漫画を書けるのも凄い部分。『男爵校長』は言うなれば女子高生をメインとした4コマ漫画です。ならば萌え4コマか?と問われれば答えは「NO!」です。絵柄は確かにコミカルかつポップで可愛いし萌え4コマ感はある…。ですが、作風は不条理4コマ感がある…。かと思えば、生活感あるネタでファミリー4コマ感もある…。果たしてこの4コマのジャンルは何になるのでしょうか。
複数連載を行なっている4コマ漫画家さんは少なくないですが、多種多様なジャンルを持っている作家は少ない。最近の傾向を見るに、一つのジャンルの突き詰めが生き残るコツかもしれませんが。最近の4コマ漫画は一ジャンルに絞られる密度の薄い作品が多い中で、多様性のある作風を兼ね備えた作家は数少ないと思います。


ハイテンションギャグ&イラストレーション

ÖYSTER漫画には妙な説得力があり、読めばすぐさまÖYSTER漫画ワールドに引き込まれます。『光の大社員』には忍者に憧れているというだけで忍者の装束を着ている忍者係長なんてのがごく自然に登場し、しまいには忍者OLなんてのも登場します。こう、普通の4コマなら「なんでやねん!」となる部分をごく自然に通してしまうあたりがÖYSTER漫画の凄い部分ではないでしょうか。
そんな説得力を持ちつつ、ÖYSTERギャグは身近の些細なことに全力でツッコミを入れたり、逆にツッコミを全力でスルーしたり、そんな4コマ。『光の大社員』『毎週火曜はチューズディ!』に関してはメッセージ性などなく、ひたすらハイテンションギャグ&ツッコミで押していく漫画です。シュールかつハイテンションで読者を時々置いていったりもしますが、癖になる中毒性を持つギャグが描かれます。この作風は他の漫画家には真似できません。つーか、真似しないよねーという。この作風を通せば破綻すると思いますが、破綻しないバランスをとれるのがÖYSTERさんの凄いところ。
シュールかつギャグ一辺倒の漫画家、かと言うとそうではなく、それがÖYSTERさんの多様性ある作家性に繋がってくるのですが、『男爵校長』では思春期特有の「迷い」がふんだんと描かれており、その作風の広さが魅力的なのです。勿論、『男爵校長』の中でもギャグは絶好調ですしね。ÖYSTERが萌え4コマではなく、ギャグ漫画家なのは間違いない部分です。唯一無比のギャグ無双!


ギャグが魅力的なのは勿論ですが、同等にイラスト的な魅力が非常に大きい。『ケロロ軍曹』の背景スタッフの仕事からも分かるように、背景的イラストが丁寧。特にコミックスの挿絵や表紙で描かれる背景を中心としたイラストが凄まじく綺麗。はっきりいって4コマ漫画家はキャラクターしか書けない人が多いため、綺麗な背景というだけで見る価値があります。
勿論キャラクターのレベルも高く、背景同様吉崎観音さんに通じるものがある透明感ある絵柄で丁寧かつポップで可愛い。萌え絵師なんかだと女性しか書けない、なんて方は多いですが、男性も個性ある絵柄で描けるというのも特徴的でしょうか。むしろ男性のネタのほうがイキイキしてる感があるのは気のせいではないと思います。
この洗練された絵柄は一朝一夕のものではなく、『男爵校長』から『DS』『High!』と長い積み重ねが生んだものです。実のところ、私は高校生の頃に読んだ『男爵校長』ではあまりハマらなかった口です。初期の絵柄は個性は兼ね備えているものの特別可愛いと思える絵柄ではなく、ギャグもシュール気味で素直に楽しもうとしても楽しめない作風でした。それが改めて読んで私自身全く別の漫画に感じた、そんな印象があるほど可愛い絵柄になっていきました。

ただ、今見るとそこまで大きな変化はありません。それは、どんな漫画にもあるようなただ絵がこなれてきた、というだけかもしれません。でも、根本的な絵柄に変化はないものの、些細な描写がコミカルで、女の子もとても女の子らしい絵柄になっているんですよね。それまではキャラクターを描いているだけだったのが、女の子を描いている、そんな印象。それは、作者自身にも掲載紙がもえよん→タウンオリジナル→コミックハイ!と変化していく中で洗練しなければならない状況にあったのではないかな…という妄想です。



ÖYSTER漫画にあるのは、その誰にも属さないギャグ、そして透明感ある絵柄という見事に半々のウェイト。それが中毒性を生んで「ÖYSTER漫画」になっていると私は思います。「今が旬」そんな言葉を持ち続けるÖYSTER作品を読むのは今しかない! 読もうと思った時が旬、そんな漫画家さん。読もう、ÖYSTER漫画!!
あ、『男爵校長』のドナちゃん超可愛い。黄色はトリックキャラと作中で書かれていましたが、私はトリックキャラが大好きなようです。作品の中心にいるキャラよりも、GAのノダちゃんのようなひっかきまわすキャラが大好きなんですよね。とにかく可愛い。『男爵校長』を読んで誰が一番好き?そんな修学旅行トークをしたいですね! 私はドナさん大好きっ!


と、いうわけでÖYSTERさん特集でした。作家性を中心に語ったため、あまり作品単体を語らずに終わってしまいました。『男爵校長High!』の最終巻が出れば作品全体の特集はすると思いますが、別に『光の大社員』特集なんかもするかもしれませんね。まぁ、このサイトで「○○するかもしれませんね」は大抵実現しないのですが。それでは、次回の更新でお会いしましょう!!

事実的には「5巻」になりますが、個人的には「High!」から読むのも全然ありだと思ってます。事実上の3巻、4巻。この登校から下校感、表紙の感じが大好きです。