ハイテンション4コマ『もっかい!』をあえてローテンションに語ろう

基本的に毎週1本程度の4コマレビューを書いているが、当然のことながら新作を中心に語っている。鉄は熱いうちに打て、というあれではないが「面白いからこそ早く語りたい」という欲求からだ。基本的に、既刊語りは新作を語る準備期間が足りなかった場合が多い、というわけで今回は既刊語りである。
中には購入したものの、語ってこなかった漫画も幾つもある。例えば『もっかい!』という4コマ漫画がある。これはまんがタイムきららMAXで1年程度連載し終了した作品であり、設定としては女子高生2人がおりなす典型的な学園4コマ漫画だ。この漫画は4コマ好きの間でも、どちらかといえば「変な4コマ」として評価されている。
今回、レビューしようと思い再読してみたが、今も昔も「変な漫画」という印象は変わらない。決して下手ではなく、上手い部類に入るものの不安定な絵柄。キャラクターにも時折ブレがある。話は普遍的な学園物ではまずないであろう個性的な題材の選択。MAXは同系統きらら雑誌と比べてアクが強い作品が多いものの、この作品はさらにアクが強い。

女子高生・衛と遊の楽しい学園生活。


『もっかい!』は帯に特徴があり、その帯に惹かれて買った方、買い控えた方も少なくない。私は雑誌で読んでいた頃はそれ程熱心な読者ではなかったが、帯に惹かれて購入した口である。その帯に掲載されたコメントがこれだ。

なんと、本文中に「!」が1103コ!
(おそらく)本邦4コマ史上最多っ! ハイテンション漫画! 4コマ史に残るよコレは。
畳み掛けるぼけの連続とドツキ漫才的ツッコミの応酬。
漫画読みにこそ読んでもらいたい
「新しすぎる」4コマの登場!

デザインは「5GAS」(http://www.5-gas.com/5gas/TOP.html)のお仕事。メジャーな仕事の割には装丁ファンの間でしか知られていないが、4コマでは『けいおん!』『夢食いメリー』のコミックスデザインも担当している。帯は比較的シンプルな傾向にある。そのシンプルな傾向がある帯の中で、このコメントが選ばれたのが不思議だ。
帯なんてのはインパクト重視で、その漫画を語るのに最も相応しい一言を選ぶべきだ。この漫画の帯に関しては「ハイテンション」がこの漫画の売りであると読んだのだろう。どんな漫画なのか、この帯ではさっぱり分からないが「ハイテンション」が特徴であるのは正しいと私も思う。今回は「ハイテンション」な漫画であるからこそ「ローテンション」に語っている。
果たして「!」が特別多いのはかは私には分からない。特別「!」が多くも感じないが、確かに普通の4コマと比べると台詞数が多いのは間違いない。意識していなくても、こんなコメントを書かれれば意識してしまう。そんなマジックが仕掛けられている。そんな仕掛けなのかは不明ですが。



基本的には、奇妙な題材(傘バランス、ジャンケン、画鋲廻し、風船膨らまし、1話使って童話コント)を会話劇とアクションで進めていく形式だ。リアルであったりファンタジックであったり、やってることは1話題材を決めてコントをする『ゆゆ式』と変わらないが、この漫画はキャラクターの思考がブッ飛びすぎていて普通の4コマ、普通の萌え4コマになりえない。そこに中毒性が発生して、熱心なファンを作っているのだろう。
キルミーベイベー』もこの作品と同じように基本的に2人で進めていく。キルミーは「暴力」を主題にし、すべてを「暴力」で構成するワンパターン性が魅力だ。一方、『もっかい!』は一言で言ってしまうにはバッサリしすぎかもしれないが、帯の言葉通り「ハイテンション」で構成されている。
「奇妙な題材」と書いたが、普遍的な題材を扱いつつ、その題材の料理の仕方がおかしい。それは単なる作者性だろうか。普遍的な題材で会話劇をやるのに、メイン2人にかかると変な4コマになってしまう。変な4コマではあるが、その変な部分が漫画にいい影響を与え面白い。
天才肌で保守的だが、どこか抜けてる衛と、唐突で変な行動ばかりするけど、衛をどことなく支えてる遊。このバランスが読んでいて心地よい。そんなキャラクター性を生かした妙なシリアスになるのもギャップを生んでいて良かった。それが存分に最終回で生かされている。この最終回を是非読んで欲しい。
最終回ラストのページにこの2人の姿は登場せず、2人の会話のみが描かれる。そして、この2人の代わりにクラスメイト達の姿が描かれている。これは、きっと「この2人は変わらない」的ニュアンスが描かれているのだろう。

「お前はヒーローなんだ」的ニュアンスは、ちょっと『ピンポン』を思い出す。「ヒーロー見参。」


終了から半年程度経過したものの4224先生の新作の声は聞こえてこない。公式HPも更新されておらず、Pixivも放置、Twiiterも放置、と凡庸性に乏しいペンネームと相まってこのまま作品を発表されることなくフェードアウトしてしまいそうな匂いがする。きらら作家がどこかで再始動なんてのはよくある話だが、さて。
今も昔も4コマ作家というのは兼業が多く、本業を抱えている例が多い。だから、同人活動でもしてないと消息不明になれば追いようがないというジレンマがある。4224氏に関しては根強いファンも多くこのまま消息不明になるのは惜しい、のだが。ひょっとすると私が知らないだけで、どこかで書いているのだろうか。
今回紹介した『もっかい!』はストレートにお薦めをしがたい。特に、4コマを読み慣れていない人には「読みづらい」で終わってしまう、ハードルが高い作品ではないだろうか。だけど、こんな作品があるから4コマ漫画は面白い。面白さに触れたいあなたにお薦めです。
唯一の欠点は、キャラクターの書き分けがイマイチ。構図や絵柄的な意味で、個性的で特徴的でもあるが、どことなく損しているのがウィークポイントだったりするのだが。それでは「この4コマのここがダメ」特集でお会いしましょう。