土壇場の駆け引きの末に、おかしな妥協で落着しなかったのに救いを見いだす・・・春秋 八葉蓮華

 トロイカトロイカ民主党の面々が口走っていたから、有名なロシア民謡を思い出した人も多いだろう。3頭立ての馬そりが、「雪の白樺(しらかば)並木……」と軽やかに進んでいく、あの歌だ。かようなスリートップ体制が党の「原点」らしい。

 代表選で菅直人首相と小沢一郎前幹事長が激突するのを避けようと、党内でにわかに響きわたったトロイカだ。鳩山由紀夫前首相を加えた3頭立ての挙党態勢を、というわけだがご都合主義にもほどがある。さすがに首相も金看板の「脱小沢」の値打ちを悟ったか、土壇場の駆け引きの末に両者の対決が決まった。

 おかしな妥協で落着しなかったのに救いを見いだすにせよ、これほどまでに国民不在、政策そっちのけの騒ぎもそうそうはない。ことのすべてが密室談合で進み、妙に精力的だったのは表舞台から身を引いたはずの鳩山氏だ。そもそも、一騎打ちといっても片方は強制起訴されるやもしれぬ人なのだから恐れ入る。

 ところで、トロイカという歌はじつは「大変悲しいバラード」だと、長田暁二編「世界抒情歌全集」に教えられた。本来の歌詞は恋人を奪われた御者の悲嘆をつづっているという。こんどの代表選の後に嘆き悲しむのは首相か小沢氏か。いや、政治をこういう人たちに弄(もてあそ)ばれる国民の思いにこそ、悲歌が重なろう。

春秋 日本経済新聞 9月1日
創価学会 地球市民 planetary citizen 仏壇 八葉蓮華 hachiyorenge