津波被災の記録145

 被災地復興事業で地元業者の「綺麗な排除」を行う新自由主義はこれから全国に「復興事例」として、導入される流れは強まる。

自民品確議連会長・根本匠衆院議員に聞く/今後の活動方針は/地域建設業の安定化を20161219建設工業

労務単価は長期的引き上げ必要
 自民党の「公共工事品質確保に関する議員連盟」の会長に就任した根本匠衆院議員(元復興相)が、日刊建設工業新聞らのインタビューに応じた。中長期的な担い手の確保をうたった改正公共工事品質確保促進法(公共工事品確法)の理念に沿って、地域を支える建設業の経営の安定化を図ることが必要だと指摘。戦略的な人材育成ができるよう公共工事設計労務単価を「長期的に引き上げていくべきだ」とも訴えた。

 公共工事労務費単価と同一労働同一賃金との整合性をどのようにつけていくかが今後の課題。場合によっては、下請け専門業者の淘汰が進むことになる。全国的に元請け受注が減り、一次下請けへ落ちていく流れは変わりませんから、地方の建設業者は数だけは縮小していくことが顕著になって行くと思われます。

 −−市町村のように体制がぜい弱な発注者を支援する必要もあるのでは。
 「技術者がゼロ、あるいは1人しかいないといった自治体も多い。ぜい弱な発注体制を補完することも考えないといけない。東日本大震災の被災地で都市再生機構を活用して取り組んだCM(コンストラクションマネジメント)方式が一つの方策として考えられる」

 「官から民へ」「無駄な公務員ガー」という民意のため採用を抑制した結果、地方自治体はマネジメント能力を喪失しつつあります。「応援職員」に頼ることや「CM(コンストラクション・マネジメント)方式」など新自由主義構造改革によって、自治体としての機能はスカスカです。民意による「選択と集中」「自己責任」の結果をどのように受け止めるべきかはそれぞれに託されることになります。


復興加速化会議/国交省・東北整備局、担い手確保と両立へ4施策/復興係数継続も表明20161220建設工業

会合では、東北被災地の復興道路整備に採用され、事業を効率化する上で威力を発揮した事業促進PPP(官民連携)を、被災地以外の河川・道路事業、まちづくりなどに広げる検討を進める方針も示された。

 国交省は事業促進PPPの効果や課題を検証し、東北だけでなく全国のインフラ整備に展開できないかを検討することにしている。

 UR(都市再生機構)や日本下水道公団などが被災地復興において、代行業務を受注しすることでアジア内需・インフラ輸出の「入札参加条件」を獲得し商社等とコンソーシアムを組み外需獲得をするためであったことは今までも述べてきましたが、地方建設業にとっては害悪でしかありません。東京一極集中のための犠牲となってまで、相対的貧困を拡大させてまでやる必要があったのかは問われるべきでしょう。


広島県/クラウドファンディングでの資金調達開始/廃校3カ所リノベーション20161220建設工業

廃校リノベーションは、県が17年に開く「ひろしま さとやま未来博2017」のシンボル的な事業と位置付ける。事業に賛同する全国の人々から同3月までインターネットを通じて資金を集め、同春の着工、同夏の完成を目指す。一般市民も工事に参加してもらう予定だ。

 新自由主義の「地縁血縁職縁」を生かした広告と資金調達手法である「クラウドファンディング」は、被災地でも早稲田大、慶応大等が行っていましたが、「お土産」を無心するなどをセットで行わないと成立しないのを目のあたりにさせられると、地元建設業者の仕事はますます無くなっていくのだと感じざるを得ません。一般市民参加という「無償労働」賛美では御金は廻りませんからデフレ圧力でしかありません。お金は東大という「縁」で集め、労働はタダ同然で集める。素晴らしいとしか言いようがありません。「クラウドファンディング」での資金は最終的には「縁」の強弱で決まります。「東大隈研究室の学生」という「縁」か゜どのように「強い」かをアピールするだけのイベントです。結局のところ新自由主義が弱まる気配はありません。むしろこのように中間層が生き残ることが困難になる動きが変わることはないと言う事です。



国交省/技術者・技能労働者の週休2日確保状況調査結果/取得は15%程度20161221建設工業

技能労働者の休日形態の実態を見ると、「日曜のみ」が46・4%、「4週6休」が22・7%と全体の7割を占め、「完全土日休み」と「4週8休」は合わせても11・6%にとどまった。下請技術者も同様の傾向となった。一方で技能労働者の5割、下請技術者の6割が「完全土日休み」または「4週8休」が望ましいと答えた。

 連合と共産党が「同一労働同一賃金」「待遇改善」等を主張するわけですが、正規雇用・非正規雇用という括りより「賃金形態」のほうが深刻なのです。建設業は「技術者と技能労働者」と「ゼネコン(連合組合員)の元請と下請(中小零細)」の賃金格差を地方へのバラマキ批判により再分配縮小によって拡大したことに原因があります。
 

 給与形態は、元請技術者のほとんどと下請技術者の約8割が月給制。技能労働者は6割以上が日給制となっていた。

 連合労働組合員であるゼネコン正社員は『月給制』。ゼネコンの下請けである技能労働者(中小企業)は『日給制』のため、「重層下請構造」批判をする連合は嘘を言っているわけです。賃金形態のせいで、連合組合員は所得が減らず、非組合員は所得が減る構図であるのが問題なのです。同一労働同一賃金というならば、同じ現場で業務をしているのに違うのはおかしいと言うことに成ります。連合の主張にはおかしな点があります。

 週休2日モデル工事の下請技術者・技能労働者の休日は1カ月当たり4・7〜5・9日で、8日にはならなかった。通常工事の休日は同4・7〜5・2日。モデル工事の方が取得回数は多いものの、大きな差は見られなかった。

 モデル工事に従事した技能労働者の月収の変化を見ると、「ほぼ変わらない」が約7割を占めたものの、「3万円以上減った」と「1〜3万円程度減った」が約3割あった。収入減少の要因としては、「労働日数が減った」との回答が大多数。ほぼ変わらないの理由は、「週休2日工事の休日に他の現場で働いていた」「固定給のため」との回答が多かった。

 正規・非正規という括りではなく賃金形態で所得が影響を受けやすい構造になっているのが問題であり、連合組合員(所得減少の影響がない)のワーク・ライフ・バランスのために、賃金形態が「日給」である労働者が所得を減らされ、相対的貧困を強めるのが実態です。上野千鶴子のような、おひとり様のワーク・ライフ・バランス等が如何に差別的なものであるかということがわかります。
 今回の調査で月額給与が3万円下がるということは、年間で36万円の所得減であり購買力が減るというこであります。建設業以外のワーク・ライフ・バランスが賃金形態の変化を促し、労働者の購買力を削り取って行ったと言う事ですからデフレになるのも当然の帰結と言う事です。

 同一労働同一賃金と言いますが、賃金支払い形態によっては格差は固定されますから、格差は縮小するわけではなく拡大するといえます。単純な、同一労働同一賃金への賛美には警戒感しか感じられませんし、ワーク・ライフ・バランスも同様に運用が非常に難しいものであることをもう一度考えてみるべきでしょう。