獣鳥と魔眼のリグレット


獣鳥と魔眼のリグレット




今回の任務 獣鳥ビーストバード×1体の討伐




空を飛ぶというのはなんと優位なことだろう。自分だけの空間、自分だけの空、下界の喧騒に悩まされることなく、好きな時に下界に降りて、好きな時に空へ戻る。・・・羨ましい。


村の上空を舞う獣鳥。
村の住民は避難させた・・・魔法協会のローブ着ている人物前にしても、まだ襲ってくる気満々とか・・・いい度胸じゃないか


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エレノール:状況報告了解しました。
      あと3時間後にフレムベル隊が到着予定です。
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フレムベル隊・・・『あの人』がいればこの鳥は倒せるな・・・
でも3時間は長い・・・それまでずっとこの鳥の相手しなきゃなのか・・・トイレ休憩はありますか?



灰色の曇り空・・・
石とタイルの屋根の家が立ち並ぶ村、屋根の上、獣鳥をじっと観察し続けるウツロ・・・



獣鳥が急降下する・・・
ふらふらとベランダに出た住民に狙いを定める獣鳥・・・



ウツロはなんとか走って駆けつけて風切りを放つ。獣鳥はウツロに気づいて急旋回して空へと逃げていく。風切りは獣鳥をかすかにかすめただけだった。

ちくしょう・・・こっちの間合い読まれてるな・・・



この場合・・・カカシなどを準備しておとりにして・・・一撃で仕留めたい・・・



ウツロ「・・・」



ウツロは昔を思い出す・・・過去に一度カカシをおとりにしようとして・・・目を離したスキに他の住民が襲われてしまったという失敗があったな・・・ポーションで一命はとりとめたけど・・・



ウツロ「・・・」



駄目だ・・・今この鳥から目を離せない・・・
おとりは先手をとれた場合にのみ有効で、村を襲われている時点で後手に回っているんだから、その手は使えない・・・


長く大きく息を吐く


焦るな・・・
昔は5回しか風切りが打てなくて焦ることが多かったけど・・・今は0.5風切り、0.2風切りだって使える・・・さっき放ったのも0.2風切りだし・・・倒せなくとも・・・けん制ならそれで充分・・・
俺はちゃんと我慢比べが出来るように成長しているんだから・・・自信持て




1時間後・・・




もう無理・・・ダッシュとジョギングの繰り返しで体力が持たない・・・

こんなとき馬とか地鳥とか地竜の相棒がいればなぁ・・・ああ、でも維持費馬鹿にならないし・・・よもやその相棒が自分の命令聞いてくれないということになったら・・・切ないよな
※現実逃避気味



さらに1時間後・・・



ぜぇぜぇ・・・もう駄目だ・・・魔獣と体力で張り合おうっていうのがそもそもの間違いだったんだ・・・ああ、おとりのカカシを作っていれば今頃楽できたんだろうか・・・




同刻・・・村の外に馬車が現着する。
「さて・・・みんなはここで待機ね・・・あんまり大勢でビビらせると・・・逃げられちゃうかもしれないからねぇ・・・」

髪の長い、糸目の女性騎士はゆったりと村へ歩き出す・・・






獣鳥がまた急降下する。
あれ・・・今度はなんかフラついて動きがおかしいな・・・


落ちる先には・・・大通りをゆったりを歩く女性騎士の姿があった・・・
ああ・・・なるほど・・・そういうことか・・・



無様に落下する獣鳥めがけて、ウツロは風切りでとどめをさした・・・





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「やぁ、やぁ、初めまして・・・ミスタースライム・・・ふふ」
ウツロ「あなたとは・・・初めてじゃないでしょう?リグレット先輩・・・」



【リグレット=アトモスフィア】
フレムベル隊、糸目のほんわか女性騎士、通称:魔眼のリグレット
彼女の特殊能力である魔眼は、千里眼、幻惑魔法など多岐にわたる魔法能力を備える。
普段は薄目で十分生活できるので極力目を開かない。



リグレット「いやいや・・・初めましてだよ・・・獣鳥に対してしっかりと辛抱強く対処できるこの人物を私は知らないからねぇ・・・」


ウツロは過去にこの先輩と何度が組んだことがあるが、失敗ばかりしていた苦い思い出があった。
ということは過去の失敗を皮肉ってるな・・・相変わらず嫌味な先輩だ・・・



リグ「よっ・・・ミスタースライム!」

その名前で呼ぶのやめて欲しいです・・・





























やあミスタースライム


君はもうウツロ君じゃない・・・ミスタースライムなんだ!


ウツロです

ミラの過去とウツロの失言


ミラの過去とウツロの失言




俺なんかより・・・




ぼんやりベットに寝そべって天井を見つめるウツロ・・・


ふと、魔法協会に入ったばかりの頃を思い出す。
右も左もわからずに何事にもドキドキしていたあの頃・・・


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仕事頑張るぞ・・・
怖い先輩とかいるだろうか・・・
魔獣は恐ろしいだろうか・・・

それから・・・恋人とか、彼女ができたりするんだろうか・・・うう
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なーんて可愛いこと考えていたなぁ・・・あの頃は若かった・・・


お酒を飲んだミラとキスをしてしまったことを思い出す。
・・・が・・・あれは刺激が強かったな・・・
ここ最近は女っ気などとかけ離れた生活をしていた自分には刺激が強すぎる・・・


あのあと・・・必死でミラを縛ってことなきを得たけれど・・・
もったいなかったんだろうか・・・
俺だってミラみたいな可愛い子をモノにしたいって気持ちは十分にある・・・


だが・・・


だが・・・・・


ウツロは少し冷静になった。


よくよく冷静に考えたら・・・
後輩の魔女と二人っきりの時にお酒を飲ませようとするって行為がもうNGかもしれなかったな
危ない、危ない・・・命拾いした。

あれ?むしろ俺の方が襲われていた気もするけれど・・・





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それはミラとケーリーが魔法学校に通っていた頃、最終学年のことだった・・・


ミラ「ケーリー!!」
ミラはケーリーに飛びつく。ミラの胸がケーリーの顔にのしかかる。

ケーリー「・・・」


ミラ「じゃーん!合格証書!!」

ミラ「卒業試験クリアできたんだ。魔法協会の入会試験もパスしたし、これで晴れてケーリーと一緒の魔法協会員だね」



ケーリー「・・・」



ミラ「ケーリーと一緒に魔獣討伐・・・今から楽しみだな・・・『背中はあずけたよケーリー!』みたいな・・・ふふ」


ケーリー「・・・ええ、そうね」


ケーリーは目を合わせてくれなかった・・・ケーリーの後姿を必死で追いかける・・・それでも追いつけない・・・私は・・・私は・・・




夢か・・・
嫌な夢・・・
何度も見る夢・・・



ミラはベットの上で天井を見つめる。


ケーリーは全く違う部署で働いている・・・私は・・・そのことを問い詰めることができなかった・・・私にだってなんとなくわかるから・・・



ウツロ先輩と初めて会った時・・・そうだ・・・どことなく・・・似てたんだ



今は・・・ウツロ先輩と変な感じになってる・・・あの夜の記憶はないけど・・・早めに謝ってしまおう・・・よし





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ウツロとミラはミストクラノスで対面した。お酒の一件があってから以来であった。
お互い言いたいことが切り出せなくてもじもじとしている。


ウツロは考える。
「恥をかかせてごめん」・・・いや違うな、それだと襲わなくてごめんに聞こえる
「まずは友達から」・・・いやいや、なんで付き合うことになってんの
「お酒って怖いな」・・・違う!何もなかったから未遂だったから


改めてミラを見る。
ミラは可愛いな・・・こんなヒトが彼女だったらいいなそう思う気持ちも確かにある・・・だったら・・・だったら・・・


ごくりと息を飲む。そして、ウツロから出てきた言葉は・・・自分の意図とは全く違っていた・・・




「ミラ・・・俺なんかよりも・・・もっと魔法力が高い出世する人物と付き合った方がいいんじゃないか?」




あれ・・・あれ・・・何を言ってんの・・・俺・・・
その言葉は・・・勝手に流れ出していた・・・



ミラはボロボロと涙をこぼしている・・・


あの・・・いや・・・違う・・・


ミラはひるがえって走って行ってしまった・・・










ケーリーの叫びと仲直り




あなただけは・・・




ケーリーがミラを見つけたのは偶然だった。
逃げようとするミラを捕まえて話を聞いた。




「ウツロ先輩も・・・ケーリーみたいに離れて行っちゃうって思ったら・・・私・・・私・・・涙が・・・止まらなくて・・・」


ケーリーさんはすーっと息をすって・・・目を見開く・・・



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あいつ足が速いな・・・

追ってどうするんだ・・・とにかく急げ急げ



おお、ケーリーさん・・・


ミラにすべて聞きました。


あなたの言葉は間違っていない・・・
ミラの才能はやがては七賢人にさえ匹敵するでしょう・・・そんな人物にあなたごときが付き合えるわけがないんです・・・







それなのに・・・それなのに・・・



「あなたの気持ちも『私には』よくわかります・・・」


「でもね・・・そのセリフは・・・『あなただけ』は言っちゃダメだったんだ!!」



ケーリーさんの真剣な目に圧倒されて何も言えない・・・



ウツロは何がなんだかわからなかった。


『仲直りするまで出てこないで下さい。』というセリフと共に、
ミラとウツロは北支部の資料室に閉じ込められた。



ケーリーは・・・心のわだかまりが少しなくなったような気分になった・・・
そして、大きくため息をつく・・・
全く・・・世話が焼けるんだから・・・





ミラ「私は『面倒な後輩』ですね・・・」

ウツロ「・・・まあいいさ・・・今日の俺も『面倒な先輩』だったよ・・・」


毎回どきりとするんだよな・・・
ミラ「しばらく・・・こうしていていいかな・・・ウツロ先輩」



返事するのもどうかと思う・・・まあ、今日は許す。

















帰ります。これで逃げるようだったら・・・私は一生ウツロさんを許しません・・・

怖い



ケーリーは頼れない・・・



雷速!


ケーリーはミラに軽い電撃を浴びせる。
かふっ・・・

ミラ私から逃げれるわけないでしょう?
まあ、1回しか使えないんだけど・・・


【雷速】
ケーリーさんの編み出した、雷系統の体術魔法
のちにイズナに伝授した。





そういえば昔・・・リグレット先輩に説教されたことがあったな・・・


謙虚のつもりかもしれないけど・・・自信を持たないことも・・・罪なんだよね・・・






別にウツロさんは何も悪くないんです・・・すべて私のせい・・・