城内の不審人物


城内の不審人物




雇われた理由




生産的おこない




【魔力主義政策の歴史】
この国の魔力主義は30年前のラグベール王国とクラスティア王国の戦争に端を発する。
当時優勢であったラグベール王国の戦況を一変させたのがクラスティアの『魔法協会』であり、魔法という概念の薄かったラグベールはその絶大な威力を敗戦という形で思い知ることになる。
敗戦後はクラスティア以上に魔法研究に没頭していく・・・



国王の演説・・・


「私が幼い頃・・・そう・・・ちょうど隣国クラスティアに敗戦して間もない頃だった・・・」


良く通る声・・・


「城下の街の者は・・・どこか自信なく・・・下を歩いていたように思う・・・見通しのたたない明日に怯え、恐怖していた・・・そうではなかっただろうか・・・」



しんと静まり返る・・・その抑揚の効いた声に聞き入っているようだった。




「・・・あれから十数年・・・この国は・・・ようやく立ち直りつつある!!」
徐々に沸き上がる歓声・・・



「私の役目は・・・さらにこの国を繁栄に導き、人々に明るい未来を与え続けることだ!!・・・私は・・・必ずやクラスティアを超える・・・豊かな国を築いて見せることを・・・ここに誓おう!!」




「そのために今必要なものは・・・『魔法協会』を超える魔法の技術と魔法使いである・・・皆この政策に理解を示して欲しい!!」




「リズパール王!!」
「王様!!」
「リズパール様!!」




群衆の歓声は王がテラスから去った後もやむことはなかった・・・






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夕刻、
ウツロは今日の分の食事をミレスに届けるために西塔へ向かう・・・


ウツロ「・・・国王様の演説・・・良かったな・・・これからこの国はもっと発展していくんだ・・・そんな国のお城で働けるんだから・・・俺にもワンチャンあるかもな・・・」


「魔力5にチャンスがあるわけないだろうが・・・くくく」


魔力15の嫌な先輩たちに絡まれる・・・

「どうしてお前が雇われたのか・・・教えてやろうか」


西塔のミレスは昼間は中央の研究棟で魔法の修行をしているが・・・夕刻頃は情緒不安定になり、魔法が暴発することが多いらしい。


「あいつの給仕の人間は・・・お前で5人目だ・・・今回の奴がどれだけ続くか見ものだな・・・くく」



つまり、猛獣のエサを与えるための奴隷ってところか・・・





ミレスの部屋の戸を叩く。
ウツロから夕食のトレイを受け取ると・・・ミレスは機械のようにそれを食べ始めた。


ウツロ「・・・じゃあ、俺は食べ終わるまで外で待っているから・・・」
猛獣怖い、猛獣怖い。



ミレスは無言で・・・ウツロの袖を掴む・・・


ウツロ「・・・」
ミレス「・・・」



ウツロ「・・・わかったよ・・・ここにいるから」
ウツロはふーっとため息をついて
渋々、椅子に腰かけた。






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さっき意地の悪い先輩にからまれたことをミレスに話した。

ミレス「この首飾りで感情の起伏を抑制している・・・最近は、魔法が暴発することが少なくなった。」
少なくなったってことは・・・ゼロではないってことなんだな・・・




ウツロ「いいさ・・・所詮、俺は魔力5・・・魔力15のあいつらに使われるだけの人生・・・」

ミレス「そんなことはない。」




え・・・もしかして慰めてくれるのか・・・


ミレス「あなたは私に料理を持ってくるという 生産的おこない をした。たがら・・・あの威張るだけの下等生物より・・・偉い。」


ウツロ「・・・じゃあ、あいつらが料理を持ってきてくれたら?」


ミレス「当然・・・あなたの方が下等生物になる。」

ですよね






















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つまり、ペットの猛獣に餌を持っていく奴隷みたいな存在ってことよ







ひどいこれ陰謀説あるよ




実はあなたが寝ているときに吸い取ったの・・・


マジで


嘘よ




青天の元、国王が演説する。
「今、この国には必要である」と
リズパール王の強い言葉に国民は熱狂した。