■とうとう認知症か佐々淳行−菅総理が元全共闘活動家というデマ

少し気になっていた「週間ポスト10月15日号」の記事がある。

『言わずに死ねるか!−学生運動指導者だった若き日の菅直人は「四列目の男」と呼ばれていた』という元警視庁警備局課長の佐々淳行の記事である。

彼はご存知のように、1971年のあさま山荘事件の警備の総指揮をとり、後の映画「突入せよあさま山荘事件」の原作者である。警察官僚にしてはその政治的発言と派手な振る舞いが目立つ男だ。

その佐々が菅直人について、次のように書いている。

「実は、菅氏と私とは以前から浅からぬ因縁がある。第二次安保闘争華やかりし1970年代、東京工業大学の加藤六美学長から警察に機動隊の出動要請があった。
大学に赴いた私に加藤学長は、『すごいアジテーターがいて、彼にかかれば500人くらいすぐ集まる』と教えてくれた。東工大の輝ける学生運動指導者であった、若き菅氏のことである。
当時の菅氏は攻撃させると滅法強いが、敵からの攻撃には弱く逃げ足が速いと評判だった。そんな彼をわれわれはひそかに「ゼロ戦」とか「四列目の男」(機動隊の手がとどかない)とよんでいた(笑)。」

この一文の前後は、民主党代表選は二者択一ではなく「レッサー・イーブル(より少なく悪い)」という消極的選択だとか、日の丸嫌いなのに4月訪米の折、副総理菅氏がアーリントン墓地で外国の兵士には献花しているなどと批判を書き連ねている。

これらあげつらう矛盾は、メディアが誘導する世間の雰囲気で、佐々が正面から戦後史を下敷きに、日本のリベラル派や戦後民主主義派がいかに矛盾を抱え、権力の扱い方に不慣れかといった核心について見解を述べたものではない。

政治思想的問題の掘り下げは素通りして、菅直人の過去や表層の行動の矛盾を書き連ねて、ひとつの現在のダメな政権という印象操作をしているにすぎない。
この男の書いたものは全てがそうである。

誤解なきようにして欲しいのは、菅直人を擁護することではなく、佐々のデマによるネガティブキャンペーンを明らかにしておくことである。
菅直人をクサスことで、全共闘派の誤ったイメージ操作から救うことである。つまり菅直人全共闘は似て非なるものだということだ。

筆者の見聞の限りでは、菅直人東工大で、佐々がいうような有名な活動家だったという事実はない。

佐々の40年の年月の中で記憶が錯綜した結果か、あるいは現在の反対派やイエローペイパーのデマ宣伝によるマヌーバーへの秩序派としての恭順としか思われない。

当時、東工大の闘争は日大、東大、中大、早稲田、明治、立命館などと比べるとはるかに地味なものであって、菅直人の一声でキャンパスを制圧するような事実は寡聞にして知らない。
その後の全共闘ものの特集が組まれた雑誌書籍でも、菅直人が有名なアジテーターだったという記録はない。

これだけ過去全共闘ものが特集され、書物も発刊されているのである。
もし、菅直人がそれほど有名だったら、天下の東工大で、しかも政治の世界で活躍しているのであれば、誰かの手蔓であれほどの自己顕示欲の強い男であるから、元活動家として登場しているはずだ。

影も形もない。

もちろん、規模の大小ではなく、東工大の活動家ひとりひとりは、自己の将来へのパスポートはなげうって、実存をかけた闘いをしていたことを否定するものではない。

しかし、現在知人を頼りに、当時の東工大の運動と菅直人の「華々しい活動家歴」をきいても、佐々の言うような事実や像は浮かんでこない。


佐々の明らかなデマは、「菅氏は攻撃させると滅法強いが、敵からの攻撃には弱く逃げ足が速いと評判だった。」という記述である。

「敵からの攻撃」とは機動隊ないしは他党派のことだろうが、「ゼロ戦」とか「四番目の男」などと公安・警備当局にあだ名されているぐらいに有名なら、まず一度や二度の逮捕はあって当たり前だ。

しかし菅に逮捕歴はない。

まず、キャンパス内だけなら公安警備に知られることはない。あだ名を付けていたというなら、頻繁に街頭デモを指揮していたということになる。

デモの指揮やシュプレヒコールの音頭でもとっていたら、民青(共産党)や市民運動を除いて、全共闘派の場合には「初お目見え」時点でほとんど強引に公務執行妨害で引っ張っては、身元調査と危険人物のブラックリストへ登録した。

佐々が一番よく知っていることではないか。加藤学長に説明を聴くまでも無く、事前に知っていなくてはおかしい。

これはその後の政治家として、野党時代の舌鋒鋭い質問攻撃を経て、与党になった途端しどろもどろしている落差を、政治家仲間やマスコミが裏話として発信したものをいつの間にか記憶とゴッチャにしたか、悪意をもって菅直人の弱点をあげつらい、全共闘運動とこっちゃにして、悪意ある印象操作を図ったものとしか思えない。

筆者は前後の文脈から佐々の悪意あるデマ飛ばしだとみなしている。
「世間」は騙されても、佐々は本当の良識ある元全共闘派を騙すことはできない。
言えば言うほど、佐々のデマゴーグぶりが暴かれる。