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2010-07-11

シンフォニックレインは面白いよ

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工画堂スタジオ シンフォニック=レイン 普及版

工画堂スタジオ シンフォニック=レイン 普及版


 シンフォニック=レインってデジタルノベルがあるんですよ。2004年の春に光画堂から発売された美少女系PCゲーム。やたら地味な作品で、あんまし売れなかった。

 当初からすごいすごいって叫んでる人々はいたんですが、「痛い」って言葉が先行しちゃったのがまずかったのかも。少なくとも僕は躊躇しましたもん。

 実際、当時を思い返すと、別の意味で痛々しい学園物ゲームの群れに食傷気味だった人は多かったのでは。そう、「クライマックス」と「主人公の意味不明な葛藤」を取り違えるような・・・。

 肝心の内容はと言えば、ちょっと切ない三角関係もの。

 泣かせる基本に忠実な筋書きで、好感が持てます。心地よい悲しさに浸りたい人には間違いなくお勧めできる作品で、どんな風にかというと、こんな感じ。冒頭を引用しましょう。


同じ年に生まれた男の子と、双子の女の子達は、家が近いせいもあって、自然に家族ぐるみのつきあいをするようになった。

男の子にはフォルテールの才能がたまたまあって、双子の妹には歌の才能があった。

しかし姉には、特に何もなかった


 なんとなくポロっと悲しみを感じた人には、きっと楽しめる作品です。


D


■一人称視点の妙

 興味深いことに、本作において事実が客観的に述べられる部分は上記冒頭の他に存在しません。この後、読者は全ての描写、全ての結末を、常に誰かの視点を通じて受けとることになります。

 一人称視点作品の習いに従い、主人公の視点が描く現実は、真相が暴かれるにつれて信憑性を失って行きます。ご丁寧にも、最終的には、枠組み自体の虚偽まで明らかになります

 だからこそ、序文の持つ哀しさは一際際だつのでした。作中において疑い得ぬ事実は、どうやらこれだけだからです。


■グランドフィナーレの謎

 巷にグランドフィナーレと呼ばれる結末では、作中に一度も登場したことのない少女が登場します。

 待ちに待ったハッピーエンド。みんな大喜び。

 ただ、なぜそれが彼女だと確信できるのか、その点について考えてみると、この物語はもう一度、別の顔を見せてくれる。僕はそう考えています。

 だって、誰かが別の誰かであることについて、この物語は様々な角度から描き続けた。

 ではなぜ、僕らは彼女が今度こそ本当に彼女であると確信できるのか。


■「神さまって信じてる?」

 物語序盤、トルタが不意に発する問い。

 返答はいずれにせよ否定されるし、また、結末にはなんら影響を与えません。

 しかし、それは姿を変えながら物語の中に常に繰り返されていて、そしてその極地こそ、あのグランドフィナーレに他ならないと、僕は思うのです。

 どちらかが真ということはおそらくありません。いずれにせよ真相は分からない。そう、神がいるのかどうか自体は、僕らには永遠に分からないでしょう。

 だからこそ、なぜそう思ったのか、なぜそう信じたのか、なぜそう信じたいのか、様々な局面において自問すること、それ自体が、シンフォニック=レインという物語に隠された本当のミステリーではないでしょうか。


■まとめ

 全体として、僕にはとても気に入る内容の作品でした。

 声優の演技、仕掛けの多いシナリオ、岡崎律子の音楽、どれもが味わい深い世界を生み出しています。

 深読みすれば、上述のような楽しみもありますし、もっと欲張るなら、学校で習うカントの道徳律、キルケゴールの実存問題なんかについて、今ひとつティンと来ない人の副読本としても、おすすめできる内容でしょう。

 もちろん、そんなことはおまけ。

 面白いですよ。

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