【社説】衆院選 自民党公約 3年間の反省見えない(11月23日){北海道新聞}

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【社説】衆院選 自民党公約 3年間の反省見えない(11月23日)
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▼「北海道新聞」から全文引用

衆院選 自民党公約 3年間の反省見えない(11月23日)

 民主党政権の迷走で、どうやら政権が3年ぶりに戻ってきそうだ。それならやりたいことをやらせてもらおう―。そんなおごりを感じさせる政策が並んでいる。

 自民党政権公約のことだ。

 原発維持や「国土強靱(きょうじん)化」という名の公共事業拡大。大震災と福島の事故を経てもなお、以前の自民党政治に戻るようだ。

 憲法改正国防軍の設置、集団的自衛権行使の容認、近隣国に配慮するとしている教科書検定基準の見直し。安倍晋三総裁カラーの右寄り自民党が帰ってきた。

 野党暮らしでも変わらなかった自民党ならば不安だ。

 安倍総裁は野党転落後の党について「深い反省のもと、誠実で、謙虚で、正直な自民党という原点に立ち戻って努力を重ねてきた」と話す。

 だが公約は、長らく推進してきた原発の事故についてほとんど語らない。エネルギー政策の項目の中に「おわび」と「被災者へ心よりお見舞い」の文字があるだけだ。誠実で謙虚な姿とは思えない。

 その上で原子力規制委が安全と判断した原発は3年以内に再稼働を決めるとした。原発ゼロへ向けた展望はなく、ふるさとを追われた福島の被災者や国民の不安に背を向けていると言わざるを得ない。

 中国や韓国などとの付き合い方も、関係改善よりは強硬姿勢で向き合うことを第一にしている。

 中国が領有権を主張する尖閣諸島沖縄県)には公務員を常駐させるとした。国有化に反発した中国をさらに刺激し問題を複雑化するもので慎重さが求められよう。

 教科書検定近隣諸国条項見直しや、従軍慰安婦問題に反証するとしたこともアジアの反発を招こう。

 「美しい国」が持論の安倍総裁としては、戦前の日本の間違った行為から目を背けたいのだろうが、それでは友好関係を築けない。

 教育委員会制度を改革して政治による統制を強めることも学校を息苦しくしそうだ。

 経済政策では3%以上の経済成長を目指すとして、思い切った政策転換を打ち出した。2%のインフレ目標を定め、日銀を大胆な金融緩和に導くという。

 日銀による国債買い取りが柱だが、国の借金増加に歯止めがかからなくなり、財政難に拍車がかかる恐れがある。安易に金融緩和と財政出動に頼るべきではない。疑問の声は党内からも上がっている。

 批判が強まると安倍総裁は発言を修正した。首相時代、緊張感を欠いた政権運営で参院選に敗れた。安倍氏も昔のままなら心もとない。