原節子、山田優、『浮雲』先週の心辺雑記

完璧な富士額

 思えば、本当にヘンなガキだった。小学校4年生、10歳のとき私は、仙台の「141」というビルにあった本屋さんで一冊の本に出会った。その表紙にドーンと載っていた女優の写真に、私は心奪われた。きれいな言葉で臆せず書くと、陶然としたのだと思う。その人の名は、原節子。後で知ったが、表紙は小津安二郎の映画『麦秋』からのワンショットだった。横顔のその人は、威厳があって、端正で、何かこの世一切と超絶したようなたたずまいだった。多分……当時の僕に語彙があったなら、そんなことを言ったんじゃないだろうか。そうでなければ、あのボーっとした感じ、そのときの気持ちは説明がつかない。結構高い本だったと思うが、その写真集を親に買ってもらって、ずっと読んでいた。母・フジエは「なんなのよこの子……」「どんな好みな訳よ」と不安だったろうなあ。とあるニュースで知ったが、今日はそんな、原節子さんの87回目の誕生日だそうだ。まだ鎌倉に健在だという。

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