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故実 |
2003年9月5日付の記事というと,かなり懐かしいのであるが,「『嬢』と『娘』に関する覚書」という小文を書いたことがある。
先頃,新井白蛾の『牛馬問』(1756刊)を眺めていたところ,関連した話題があったので,『日本随筆大成・<第三期>10』〔新装版〕224頁以下より引用してみる。
或人の曰,本朝にて
幼女 をすべて娘 といふ。父母有ものは長幼通 じて娘と称 す。娘 の字は何レの義ぞ。
すなわち,「『むすめ(娘)』という日本語には,<1>若い女を指して呼ぶ使い方と,<2>老若を問わない親族呼称としての使い方があるが,『娘(じょう)』という漢字は,どちらの意味なのか。」という問題である。
答へて曰,娘の字は
嬢 の字の俗字,後世の文字なり。いにしへは少女を号 して娘 といふ。今又娘の字を製 して通 といへども,中華 にては,なべて婦女の通称に用ゆ。又男にも娘といふ事有。…(中略)…今日本にいふ所と小シク似て大に異 なるのみ。
結論としては,日本語としての「むすめ」と漢字としての「娘」は意味が異なるということなのだが,その過程で,<1>「娘」は「嬢」の俗字であること,<2>「娘」は「嬢」より後に作られたこと,<3>「嬢」は,もともと少女を意味したこと,<4>「嬢」と「娘」は通用すること,<5>「娘」は,婦女の通称に用いることが指摘されている。
しかし,「娘」という漢字が,「嬢」と同じ字であるという趣旨なのか(<1>),「嬢」とは別の字であるが,「嬢」と同じ意味に用いられている趣旨なのか(<4>),よく分からない。また,「嬢」という漢字が,現在でも,「娘」と異なり,少女の意味に限るのか(<3>),現在では,「娘」と同じく,女性一般に用いるのか(<5>),これも定かでない。
あまり参考になる記事ではなかったようである。