[人物][将軍家] 渋沢栄一(1)−5 幻の16代将軍徳川昭武と渋沢栄一

何ごとも不透明な時代とは云え、どうやら近頃の世情は『…だろう』とか『…可能性がある』が流行りだして、原発地震の専門知識を蔑ろに政治家さんが騒がしいようです。 また、最近一斉に地震学者さんが統計学者に変身したのか、地震記録や頻度を持ち出して占いか、予告めいた事を云い出しました。 それなら統計学と云う専門分野の学者さんに高速コンピューターで地震予知研究をして頂いたらよいのではありませんか。…地震学の現状では予告は無理と云われる段階です。無理は無理と云うもの、地道な研究に力を入れて下さいまし。……
平川門前旧徳川御三卿一ツ橋公屋敷跡 丸紅、国際協力銀行、竹橋合同ビル、気象庁の敷地
     

前回に引き続き、明治新政府の指示により明治元年(1868)十一月三日ヨーロッパ留学を断念、渋沢栄一に付き添われ横浜に上陸した徳川昭武は、……明治維新により幕府は壊滅しましたが諸侯、藩は存続しており御三郷清水家当主徳川昭武はj実家水戸藩十代藩主慶篤から最後の藩主として帰朝後直ちに迎えられます。翌明治2年には版籍奉還(版→土地、籍→人民)があり、更に明治四年には廃藩置県となり徳川御三家水戸藩は消滅しました。私人となった水戸徳川家に十九歳の当主昭武が誕生し元水戸藩向島小梅f邸に落ち着きます。 その間、陸軍戸山学校教官、フィラデルフィア万博御用掛、再びパリ留学や十五年ぶりに静岡隠棲の兄慶喜を訪ねたり致しました。 更に明治天皇の親任篤く宮中の要職にも就き、小梅邸には数回明治天皇の来訪があつたのです。
昭武は明治十六年(1883)三十歳で水戸家当主を前藩主の子篤敬に譲り隠居となり、翌十七年に落成した松戸戸定邸に移り、生母秋庭(万里小路睦子)と共に住みます。 松戸には兄徳川慶喜がしばしば訪れ狩猟やら写真撮影と共通の趣味を楽しんでいたようで、後の大正天皇や皇族、徳川家家族なども訪れたそうです。昭武は明治四十三年(1910)向島小梅邸で亡くなりました。享年五十八。…もっとも心を許した弟を失った徳川慶喜の落胆は相当に大きかったと言われます。明治の時代は一年後大正に変わりました。
一方、渋沢栄一につきましては皆様御存知の明治維新以後の社会の基盤になる銀行、会社、教育、福祉、民間外交、の創業実践の大貢献者として尊敬されております。 特に実業界では銀行を初めに鉄道、海運、紡績、製紙、精糖、化学、造船、造機、建設、ガス、電力と多岐にわたり、株式会社の設立から経営指導、助言は500社余りになるようです。 現在の日本国経済に貢献する中枢企業がこの中に多数存在するスーパーマン的人物と云えると思います。 そこで、渋沢栄一の出自を調べてみます。…
天保11年(1848)現在の埼玉県深谷市大字血洗島村で父渋沢市郎右衛門の三男として出生。 渋沢家は農家として養蚕など、商売として質屋、金融、特に藍玉の売買を大きな収入源とする豪農の部類で苗字帯刀も許されていたようです。 十五、六歳頃までは尾高惇忠という学のある従兄について、いわゆる四書五経や日本史…とは江戸時代の国学の類か?、を勉学し、おいおい家業の藍玉売買では非凡な商才を発揮します。だが、 しかし、栄一、十七歳の時、農民を捨て、世に出るべく転機を促す事件が起こりました。 血洗島の領主は安部摂津守と云いますが、渋沢家では度々御用金を命じられ以前より二千両余りを既に負担しております。この度、代官所の呼び出しに父の名代として栄一が御用伺いに行くとまたもや御用金の話…
 ”雨夜譚” 渋沢栄一述 岩波文庫……渋沢栄一自叙伝より。
……しかるに自分は、ただ御用の趣を聞いて来いと父からいい付けられたまでだから、御用金の高は畏まりましたが、一応父に申し聞けて、さらに御受けに罷り出でますといった。 スルトこの代官なかなか如才ない人で、そのうえ人を軽侮するような風の人だから、嘲弄半分に、貴様は幾歳になるか、ヘイ私は十七歳でござります。
十七にもなって居るなら、モウ女郎でも買うであろう、シテ見れば、三百両や五百両は何でもないこと、殊に御用を達せば、追々身柄もよくなり、世間に対しても名目にもなることだ、父に申し聞けるなどと、ソンナわからぬことはない、その方の身代で五百両くらいはなんでもないはずだ、一旦帰ってまた来るというような、緩慢な事は承知せぬ、……
……自分もこの先き今日のように百姓をして居ると、彼らのような、いわゆるまず虫嘍蛄(むしけら)同様の、智恵分別もないものに軽蔑せられねばならぬ、さてさて残念千万なことである。
これは何でも百姓は罷めたい、あまりといえば馬鹿馬鹿しい話だ、ということが心に浮かんだのは、すなわちこの代官所から帰りがけに自問自答した話で、今でも能く覚えて居ります。
   この後、世に出るドラマチックな話しは。……次回へつづく…  

渋沢栄一
(5) 王子飛鳥山
(4) 実業社会へ、大蔵官僚辞職の顛末(2017 02 20 訂正部分あり)
(3) 新政府出仕と従兄弟達の彰義隊始末
(2) テロリストから幕臣への道
(1) 幻の16代将軍徳川昭武と渋沢栄一