本の話がしたい


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2017-11-11

恒川光太郎「金色機械」

この気持ちはなんだろう―という合唱曲の歌詞を思い出し、

検索をしたら「春に」という曲名でした。

あまり春っぽくない曲に思えたのだけれど。

私の住む町は昨日から天気は大荒れで、

洗濯機の中にいるような気分でした。

強い風と雨、今日はついにあられが降りました。

それでも時折晴れ間があり、あたたかい光も差し込んで、

この本と、今日の天気の感じとぴったりだなぁとぼんやり思ったものです。



このブログでも何度か恒川光太郎さんの本の感想は書いていて、

そのたびに絶賛していますが、

この「金色機械」もこの本を読めて、本当に生きてて良かった思うほどに素晴らしかった。

長編でしたが一気読みでした。

はやく読みたいのに、読み終えたくない。


・・・・・・

人や動物に触れると殺すことができる力をもった少女、遥香。

医師の父親と、治る見込みのない苦しむ患者を安楽死させるためにその力を使っていた。

しかし、ある日自分を襲ってきた男を殺してしまう。そして、男から、本当は医師である父の子どもではなく、当時蔑まれていた流民の子で、本当の両親は殺されていたことを知る。


遥香は殺しをしてしまったことで育ての親に迷惑をかけることを危惧し、家を出るが、旅先で「金色様」と呼ばれている、金色の、人ではない神様のようなものに出会う…

・・・・・・

金色様、という月からきたという不思議な存在。

初めは感情のない、変な、規格外なもの程度に描かれていて、

ちょっと受け入れがたかったのに、

第四章で明らかになる金色様の過去には心の中では号泣。

ひたすら切ない。


金色様も遥香も、他のキャラクターもどこまでも魅力的。

構成もばらばらだった話がどんどんつながっていき、

本当に気持ちいい。



恵みでした。

2017-09-29

柚木麻子「さらさら流る」

主人公・菫はかつて恋人に撮らせた自分のヌードがネットに晒されているのを偶然見つけることから物語は始まります。

誰がいつそれを見つけてしまうか不安に駆られ、また、誰が何の目的でそんなことをしたのか悩み大変傷つきます。

が、彼女には友人と家族が完全なる味方として存在し、彼らに支えられそこからどう立ち直っていくかが描かれています。

ネタバレになりますが、


菫の元カレ・光晴が、酔った時に知人にその画像を見せたことが原因でした。

しかも光晴は酔って記憶をなくしてたというオチ。

なかなかのダメ男。

菫と光晴がお互いを意識し始めたのは、飲み会で光晴が菫に介抱してもらい、そのお礼に家まで送っていくよと言い出し二人で暗渠をたどったのがきっかけでした。

暗渠をたどる、というのはロマンチックに聞こえますが、そもそも冒頭からゲロ吐いた口で何言ってんだこいつ、と思っていましたよ。

(大学1年生の女子は本当最初の3か月は男と付き合うべきではないと思う。特に先輩とは。)




そして、これから偏見に満ちたことを書きます。



思い出してしまった。

実は女子校育ちの彼女たちの「女子校だったから」が、嫌いだった。

なにかにつけての「女子校だったから」へ今こそ抗議をしたい。



先に言っておくと、女子校出身で素敵な人魅力的な人はたくさんいます。

これからするの一部の人の話です。



主人公が女子校育ちで、それにまつわるエピソードが多いんですね。

そういうのを聞いてると(読んでいると)、もやもや。

そう、女子校育ちのその自意識にはうんざりしています。



作者は女子校育ちの、ちょっと変わった、特別な女の子、を物語の中で魅力的にこれまでも描いてきたと思います。

そしてどこまで自覚的かわかりませんが、

そういう主人公たちがひどいめにあったり傷ついたりするのは、きっと女子高育ちの勘違い女にいらつきを覚えてきた読者に快感と罪悪感を与えます。

菫の友人の百合が菫の目からはとても素敵な女の子のように描写されているけれど、菫の元カレからは美人でもなく愛嬌もない自信満々の女という風に語られるのが、まさにフィルターなしで見た女子校自意識女、と思ってしまった。



彼女たちは無垢ではないし、清廉でもない。

異性が苦手でも興味はあるし性欲もある。

だから結局男に出会えば恋をする。

共学か女子高かじゃありません。

可愛くなれるか、可愛くなれないかなんです。

そしてつまりは、男に選ばれるか、選ばれないかなんです。

女子高育ちでも可愛ければ出会いがあり、彼氏もすぐにできるでしょう。

異性との接し方なんてあれこれ考えなくたって、男がどうにかしてくれる。



結論、私が言いたいのは、

いい年して女子校だったから〜とか言ってる女が本当面倒くさいって話です。

女子校だったから、男の人との関わり方がよく分からないとか、異性の目をあんまり気にしなくて面白いことしちゃんだよね、とか言ってる女。

それを言っててかわいい?のは大学生までだよ。(菫ちゃんは大学生だからいいんです)


という、彼女たちに今まで時折感じていたもやもやを思わず口にしたくなるような話でした。

2017-09-13

中村文則「R帝国」、と小布施に行ってきた話

先日のミサイル騒動の時、何を思いましたか。

私はニュースを見ていないのでJアラートなんてものの存在をその時まで知らずにいて、そしたらまぁ驚く。

朝方警報音が鳴って、携帯が壊れたか、何者かに遠隔操作されたのかと思いPCを立ち上げようとしましたが、その時はネットが繋がりにくくて、余計に慌てました。

外ではサイレンが鳴っています。

ただ、窓から外を見ても、誰も避難したりしていなくて、余計にどうしたらいいのやらとおろおろ。

(あとで調べたら窓から離れないといけないんですね)

おろおろしているうちにミサイルは日本の上空を通過していきました。

結局被害も何もなくて、周りの人もなんだったんだろうね、くらいの、そんなに気にしていないような素振りでした。

それでも、ああ、こんなものなのか、と思いました。

こんなふうに、日常は一瞬で割れてしまうもの、何にも縋ることはできやしなくて、私たちはの生は豆腐の上に乗っかっているようなもんです。



そんなタイミングで読んでいたので、SFは大好きなんですが、ちょっとした分岐点の先にありそうな世界すぎて、SFに感じるわくわく感はありませんでした。

舞台は近未来のR帝国。

突然戦争が始まって、襲撃を受ける。

その戦争はなぜ起こったのか、起こされたのか―

ネタバレします>

そこにあった陰謀が明かされていくのですが、やっぱり人が殺される話は嫌なものですね。

人間の関係性の中での感情の元からでもなく、ただ、戦争の中で殺し、殺されていくのは。


それはそれとして、この小説には人工知能が搭載されたHP(human phone)と呼ばれる携帯電話で出てきますが、面白かったです。

前半部分ではHPは人格を持ち、持ち主の助けをしてくれる味方として描かれています。

それが後半ではHPと所有者の間でのトラブルが例示されて、ラストでは主人公の一人である栗原のHPがある告白をします。

妙なプログラムを入れられて、栗原を裏切って、渡してはいけない情報を<党>に送ってしまったことを謝罪します。

そして、これまで栗原に持っていた感情を吐き出します。

栗原と性的なつながりをもちたかったこと、彼が他の女性と親密になることに嫉妬していたこと。

そうして、HPはある種自殺をしてしまう。


これって機械に愛された人間、機械に欲望を向けられた人間が描かれているってことで。

言うのが難しいんですけど、私の感覚では、これまで様々な部分で機械は人間の欲望の対象だったと思うんです。

それが、逆転して描かれているということに、

どれだけ愛に飢え探しているの私たちは、って思いつつも、

機械に欲望される側になるというのは、それは人間にとってきっと快感なのだろうなと思ったりもしました。


・・・・・

長野県の小布施に行ってきた話。

長野県好きでついつい行ってしまう。

冬の飯山線が大好きで、冬は電車に乗るのがほぼ目的。

こんなところ通れるのかしら、というような豪雪地帯を抜けていく電車の、文明のすばらしさを実感するんです。。

そして景色はとても美しく恐ろしく清く静かで。冬の雪深い時期は特別素敵です。

なのですが、冬になる前にたまには車で行ってみようか、と思い立ち、1人ドライブ食べ歩きツアーです。

・味郷

とんかつ屋さん。

たれかつが有名なところらしい。

前にたれかつ地方に住んでいたので、久しぶりに食べたくなりGO!

ロースかつ定食。

衣がかりかり、たれのあまじょっぱさが最高。

ごはんがやたらうまい。

キャベツにドレッシングかけすぎて、下の方たれと混ざってかなりしょっぱかった。要注意。


・BUD

ジャズ喫茶

雰囲気ありまくり。

蔵を改装したそうで、素敵な味わい深い店内。下手な○○記念館とかより趣あります。

アイスコーヒーが好きで飲みたかったけれど、本格的な珈琲屋さんぽいので、やはりここはホットコーヒーか!と思いレギュラーをチョイス。

しかしテンション上がりすぎて正直あまり覚えていません。


・栗の木テラス

小布施にきた目的。

紅茶もおいしいしモンブランもおいしいし大好き。

モンブランがおいしすぎて至福の時を味わう。

欲張って抹茶チーズケーキ?も食べましたがそれは普通でした。

モンブランが最強。

あとは1人の席があればいいなぁ。


・Patisserie Rond-to

下調べをしてたら見つけたケーキ屋さん。

店内に入ってびっくり。輝くケーキたち。美しすぎて、映画にでてくるような、お姫様のおやつのような…。

目移りしまくりですが、ケーキの名前が難しい!!!

心の中でちゃんと言えるかリハーサルして、比較的簡単に言えそうなものを選び、おみやげに買いました。あほすぎる。

普段食べたことのない味、とか風味。

私が選んだのは洋酒がっつりめだったり、パンチが効いてました。

子供舌なので大人の味だなぁという感想。

近くに住んでいれば色々食べてみたい。


そんなお腹いっぱいの1日でした。

2017-08-28

オルハン・パムク「わたしの名は赤」上・下

気が付けば4か月ぶりです。

いつの間にか30歳になりました。

信じられないほどに、自分が頼りないです。


今回読んだのはトルコの小説。

多分初めてトルコの本を読みました。

オルハン・パムクさんはノーベル文学賞とった人で有名な人のようです。

そんな感じで予備知識なしで読み始めました。

なんで読んだかというと、数年前に新訳がでたとき、誰かが絶賛していてそれに乗せられて買ったのですが上巻しか買わなかったこともあり放置していました。最近下巻も手に入れたのでようやく、です。


・・・

16世紀末のイスタンブル。

細密画師「優美」が殺され、犯人は不明のまま。

主人公のカラは12年ぶりにイスタンブルに帰ってきた。

彼の「おじ上」がある装飾写本を完成させるために呼んだからだ。

その装飾写本は皇帝の命で秘密裏に作られているもので、「優美」も装飾写本に携わっており、優美の殺害もそれに関係があるようだ。

カラは装飾写本の完成のために「おじ上」に協力し、「優美」を殺した犯人探しも始めるが、次の殺人が起きてしまう―

誰が殺したのか、何故殺されたのか。

イスラムの価値観と相いれない西洋の肖像画や遠近法。

それは手を出してはいけないもののはずだったが、西洋の美は東の人々の心を揺さぶる。

西の文化の出会いによって生まれてしまった罪。憧れ、夢、諦念、欲。

・・・・

初めて知る世界の話で、難解ではありましたがとにかく新鮮でした。

情報量が凄い。

馴染みのない国の、時代物、そして扱われているのは細密画。

まるで自分と縁のないものだらけで、驚きの連続でした。

遠近法は神の視点を人間の視点に貶めるもの、

偶像崇拝を禁じているから肖像画は良しとされない、

盲目になることが一つの到達点である、だとか、

細密画師たちの考え方が、

ひたすら思いもよらないことばかりで面白かったです。

ミステリ要素や恋愛要素もありはしますが、そこよりなにより文化や時代の様子、人々の価値観が、刺激的で惹き込まれました。

2017-04-05

J.L.ボルヘス「伝奇集」

あまり理解できない部分もあり飛ばし読みです。

難しいというか、三半規管がおかしくなりそうな感じです。

比較的読みやすかったので面白く思えたのは「バビロニアのくじ」「記憶の人、フネス」。



それにしてもラテンアメリカ文学に暴力性や狂気を見るのは、私の選択ゆえの偏見なのか、傾向があるのか、どうなのでしょうか?

そういうところがすきなんですが。



そもそもなんでボルヘスさんなんて敷居の高いものを手に取ったかというと

バベル図書館」をやっぱり読書好きとしては読んでおかなきゃと思って。

バベル図書館って単語はやたら見たり聞いたりしていても読んだことないから、

すごく適当になんとなく聞いたところから勝手なイメージをふくらませていました。

そして私が「バベル図書館」と聞くたびに思い出していたのが、懐かしすぎるアニメ輪るピングドラム」でカエルくんの本がいっぱいあった図書館みたいなところ。イケメンがいたところ。

今回読んでみて私の想像ちょっと違ったわ、ということを学びました。