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2017-09-13

中村文則「R帝国」、と小布施に行ってきた話

先日のミサイル騒動の時、何を思いましたか。

私はニュースを見ていないのでJアラートなんてものの存在をその時まで知らずにいて、そしたらまぁ驚く。

朝方警報音が鳴って、携帯が壊れたか、何者かに遠隔操作されたのかと思いPCを立ち上げようとしましたが、その時はネットが繋がりにくくて、余計に慌てました。

外ではサイレンが鳴っています。

ただ、窓から外を見ても、誰も避難したりしていなくて、余計にどうしたらいいのやらとおろおろ。

(あとで調べたら窓から離れないといけないんですね)

おろおろしているうちにミサイルは日本の上空を通過していきました。

結局被害も何もなくて、周りの人もなんだったんだろうね、くらいの、そんなに気にしていないような素振りでした。

それでも、ああ、こんなものなのか、と思いました。

こんなふうに、日常は一瞬で割れてしまうもの、何にも縋ることはできやしなくて、私たちはの生は豆腐の上に乗っかっているようなもんです。



そんなタイミングで読んでいたので、SFは大好きなんですが、ちょっとした分岐点の先にありそうな世界すぎて、SFに感じるわくわく感はありませんでした。

舞台は近未来のR帝国。

突然戦争が始まって、襲撃を受ける。

その戦争はなぜ起こったのか、起こされたのか―

ネタバレします>

そこにあった陰謀が明かされていくのですが、やっぱり人が殺される話は嫌なものですね。

人間の関係性の中での感情の元からでもなく、ただ、戦争の中で殺し、殺されていくのは。


それはそれとして、この小説には人工知能が搭載されたHP(human phone)と呼ばれる携帯電話で出てきますが、面白かったです。

前半部分ではHPは人格を持ち、持ち主の助けをしてくれる味方として描かれています。

それが後半ではHPと所有者の間でのトラブルが例示されて、ラストでは主人公の一人である栗原のHPがある告白をします。

妙なプログラムを入れられて、栗原を裏切って、渡してはいけない情報を<党>に送ってしまったことを謝罪します。

そして、これまで栗原に持っていた感情を吐き出します。

栗原と性的なつながりをもちたかったこと、彼が他の女性と親密になることに嫉妬していたこと。

そうして、HPはある種自殺をしてしまう。


これって機械に愛された人間、機械に欲望を向けられた人間が描かれているってことで。

言うのが難しいんですけど、私の感覚では、これまで様々な部分で機械は人間の欲望の対象だったと思うんです。

それが、逆転して描かれているということに、

どれだけ愛に飢え探しているの私たちは、って思いつつも、

機械に欲望される側になるというのは、それは人間にとってきっと快感なのだろうなと思ったりもしました。


・・・・・

長野県の小布施に行ってきた話。

長野県好きでついつい行ってしまう。

冬の飯山線が大好きで、冬は電車に乗るのがほぼ目的。

こんなところ通れるのかしら、というような豪雪地帯を抜けていく電車の、文明のすばらしさを実感するんです。。

そして景色はとても美しく恐ろしく清く静かで。冬の雪深い時期は特別素敵です。

なのですが、冬になる前にたまには車で行ってみようか、と思い立ち、1人ドライブ食べ歩きツアーです。

・味郷

とんかつ屋さん。

たれかつが有名なところらしい。

前にたれかつ地方に住んでいたので、久しぶりに食べたくなりGO!

ロースかつ定食。

衣がかりかり、たれのあまじょっぱさが最高。

ごはんがやたらうまい。

キャベツにドレッシングかけすぎて、下の方たれと混ざってかなりしょっぱかった。要注意。


・BUD

ジャズ喫茶

雰囲気ありまくり。

蔵を改装したそうで、素敵な味わい深い店内。下手な○○記念館とかより趣あります。

アイスコーヒーが好きで飲みたかったけれど、本格的な珈琲屋さんぽいので、やはりここはホットコーヒーか!と思いレギュラーをチョイス。

しかしテンション上がりすぎて正直あまり覚えていません。


・栗の木テラス

小布施にきた目的。

紅茶もおいしいしモンブランもおいしいし大好き。

モンブランがおいしすぎて至福の時を味わう。

欲張って抹茶チーズケーキ?も食べましたがそれは普通でした。

モンブランが最強。

あとは1人の席があればいいなぁ。


・Patisserie Rond-to

下調べをしてたら見つけたケーキ屋さん。

店内に入ってびっくり。輝くケーキたち。美しすぎて、映画にでてくるような、お姫様のおやつのような…。

目移りしまくりですが、ケーキの名前が難しい!!!

心の中でちゃんと言えるかリハーサルして、比較的簡単に言えそうなものを選び、おみやげに買いました。あほすぎる。

普段食べたことのない味、とか風味。

私が選んだのは洋酒がっつりめだったり、パンチが効いてました。

子供舌なので大人の味だなぁという感想。

近くに住んでいれば色々食べてみたい。


そんなお腹いっぱいの1日でした。

2017-08-28

オルハン・パムク「わたしの名は赤」上・下

気が付けば4か月ぶりです。

いつの間にか30歳になりました。

信じられないほどに、自分が頼りないです。


今回読んだのはトルコの小説。

多分初めてトルコの本を読みました。

オルハン・パムクさんはノーベル文学賞とった人で有名な人のようです。

そんな感じで予備知識なしで読み始めました。

なんで読んだかというと、数年前に新訳がでたとき、誰かが絶賛していてそれに乗せられて買ったのですが上巻しか買わなかったこともあり放置していました。最近下巻も手に入れたのでようやく、です。


・・・

16世紀末のイスタンブル。

細密画師「優美」が殺され、犯人は不明のまま。

主人公のカラは12年ぶりにイスタンブルに帰ってきた。

彼の「おじ上」がある装飾写本を完成させるために呼んだからだ。

その装飾写本は皇帝の命で秘密裏に作られているもので、「優美」も装飾写本に携わっており、優美の殺害もそれに関係があるようだ。

カラは装飾写本の完成のために「おじ上」に協力し、「優美」を殺した犯人探しも始めるが、次の殺人が起きてしまう―

誰が殺したのか、何故殺されたのか。

イスラムの価値観と相いれない西洋の肖像画や遠近法。

それは手を出してはいけないもののはずだったが、西洋の美は東の人々の心を揺さぶる。

西の文化の出会いによって生まれてしまった罪。憧れ、夢、諦念、欲。

・・・・

初めて知る世界の話で、難解ではありましたがとにかく新鮮でした。

情報量が凄い。

馴染みのない国の、時代物、そして扱われているのは細密画。

まるで自分と縁のないものだらけで、驚きの連続でした。

遠近法は神の視点を人間の視点に貶めるもの、

偶像崇拝を禁じているから肖像画は良しとされない、

盲目になることが一つの到達点である、だとか、

細密画師たちの考え方が、

ひたすら思いもよらないことばかりで面白かったです。

ミステリ要素や恋愛要素もありはしますが、そこよりなにより文化や時代の様子、人々の価値観が、刺激的で惹き込まれました。

2017-04-05

J.L.ボルヘス「伝奇集」

あまり理解できない部分もあり飛ばし読みです。

難しいというか、三半規管がおかしくなりそうな感じです。

比較的読みやすかったので面白く思えたのは「バビロニアのくじ」「記憶の人、フネス」。



それにしてもラテンアメリカ文学に暴力性や狂気を見るのは、私の選択ゆえの偏見なのか、傾向があるのか、どうなのでしょうか?

そういうところがすきなんですが。



そもそもなんでボルヘスさんなんて敷居の高いものを手に取ったかというと

バベル図書館」をやっぱり読書好きとしては読んでおかなきゃと思って。

バベル図書館って単語はやたら見たり聞いたりしていても読んだことないから、

すごく適当になんとなく聞いたところから勝手なイメージをふくらませていました。

そして私が「バベル図書館」と聞くたびに思い出していたのが、懐かしすぎるアニメ輪るピングドラム」でカエルくんの本がいっぱいあった図書館みたいなところ。イケメンがいたところ。

今回読んでみて私の想像ちょっと違ったわ、ということを学びました。

2017-03-18

柴田元幸「MONKEY vol.11 特集 ともだちがいない!」

買ったり買わなかったりする雑誌。

この号は買って大正解でした。

エミリー・ミッチェルさんという方の短編が入っていましたが、それがとても面白かった。

初めて読む作家で、他にどんな作品があるのかと早速検索してみましたが翻訳されているものはなさそうでした。

頑張って原書を読もうかと思うほど面白かったです。

それにしても、今は便利な時代になって、その辺の本屋じゃ絶対見つからなくてもamazonですぐ買えちゃうし、外国語でも昔は紙の辞書をせっせと引いていたけれど今や電子辞書でもネットでもすぐ調べられるし、世界はいつのまにか急激に近くなったもんだと不思議な気持ちです。

とはいえ、紙の辞書を手放す気にはなれません。。今どきの子どもたちはもう使わないのかな。


脱線しましたが、「私の娘と彼女の蜘蛛」についての伊藤比呂美さんへのインタビューもとても興味深く読みました。


あらすじは、父親が家を出て行き、語り手である「母親」と「娘」のリサが残される。リサは父親がいなくなったショックで精神的にも不安定精神科医にはリサには「おともだち」を与えてあげるのがい良いと勧められる。ここでいう「おともだち」は生きている人間や動物ではなく、作られた、人口動物。母親とリサは「おともだち」を買いに出かけるが、そこでリサが気に入って選んだのは蜘蛛だった。母親はその蜘蛛に強く不快感をおぼえながらもリサが選んだのだから、と理解を示そうとする。しかし蜘蛛が家の中に巣を作っていたのを発見し、やはり受け入れることができず蜘蛛とリサを引き離そうとするー


ざっくりこんな話なのですが、伊藤さんはリサが蜘蛛を選んだのは「母親殺しの第一歩」と表しているのに、私は非常に心揺さぶられたのです。

リサは無意識に母を憎んで拒否しているのかもしれない。父親がいなくなった今、リサと母親との関係性も亀裂が生じていて、でも母親は気が付かずリサを自分の手の中で守ろうとしている。。

母親の愛情が悲しいんですよね。

リサは母親ではなく蜘蛛の方に心を奪われているから。

…そして母親はリサの夢を見る。。。

ぞっとする部分もあり、愛しさこみあげる部分もありのお話です。




・・・



村上春樹2016年度のハンス・クリスチャン・アンデルセン文学賞を受賞して、その時のスピーチもこの雑誌に収録されています。そのスピーチ村上春樹アンデルセンの短編「影」について語ったということで、「影」もなんと収録されています。豪華な内容ですね!これは買うべき!

その「影」は後味の悪い話で、嫌な話で、でもついついひきこまれ読んでしまう。

村上春樹スピーチの中で、アンデルセンがこんなダークな話を書いていたのに驚いた、とありました。確かにアンデルセン=童話=子供向け、というイメージでした。でもよくよく考えてみると、結構悲しい話が多かったなぁと思います。

人魚姫」「マッチ売りの少女」「雪の女王」は子どもの頃絵本を繰り返し読んだのを思い出しました。多分子供向けのアニメや現代の絵本にはない、悲しさや儚さや痛みのようなものは子供ながらに心に残るものがあったのでしょう。

子どもの頃は不幸とか悪意とか喪失を知らなかった、ぼんやりとしか見えていなかったのだなと思いました。多分童話もまた読み直せば、また感じ方も変わって面白そうだなと思います。

2017-03-05

恒川光太郎「草祭」

<美奥>という架空の不思議な町を描いた短編集です。

この世界のひとつづきにある、霞みがかった、美しく危い、異界。


<美奥>を舞台に、それぞれのお話がぼんやりとつながっている、繰り返し読みたくなる。

ジブリのような雰囲気があります。


5編の中で「くさのゆめがたり」は秀逸。

哀しい話ではあるけれども、これが他の作品に繋がっていくことで、1冊読み終わると救われるというか、流転であり、それはつまりけものはらで…!

非常に巧みな完成された作品であります。


・・・・


本当にこの人の本好きだと改めて思います。

文章は読みやすいし、表現は美しいし、読後感が心地よい。

明るい話でもないし、感動して泣けるでもないけれど、心に残るんです。

異界の描写が魅力的で、子供の頃に想像した世界のどこかが見えたみたいで、

懐かしさをも感じる。