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2018-07-03

ボリス・ヴィアン「心臓抜き」

心臓抜き (ハヤカワepi文庫)

心臓抜き (ハヤカワepi文庫)


精神科医のジャックモールは実験をするための場所を探していた。


とある田舎を訪れた時、一つの家から叫び声が聞こえた。

叫び声の主は産気づいた女だった。

ジャックモールは女の出産を手伝い、三つ児を取り上げた。

ジャックモールはその家の居候となり、この田舎で精神分析を始めることにした。



しかしこの田舎の村は吐き気がする風習に満ちていた。



広場では老人を売る「老人市」が開かれ、競りでは老人たちは精神的にも肉体的にもひどい暴力を受けていた。

職人の元で働く子ども虐待を受け、命を落としても物のように捨てられている。


そして、ラ・グロイールという男に出会う。

彼はこの村全体の恥を消化するための存在。

村人が犯す罪や悪徳を、恥をすべて請け負う代わりに、多くの金を与えられている。

しかし、多くの金を持っていても誰も彼にものを売ることはない。

そしてラ・グロイールはこの村に滞在することになったジャックモールに言った。

「それでは、あなたも他の連中とおなじにおなりでしょう」

「あなたもまた良心の呵責を感ぜず生きていかれるでしょう、そしてわたしにあなたの恥の重みを転嫁なさるでしょう。」(p.65)



ジャックモーレはこの村に嫌悪を抱きながらも滞在をし、月日は流れていく…



……


さて、ジャックモールは、ラ・グロイールに言われた通りになってしまうのでしょうか―



あらすじを書いてみようと試みましたが、なかなか難しいです。

ジャックモーレは主人公ですが、三つ児の母親が凄まじい。


子どもたちへの愛情から、

強迫観念に駆られ病的な過保護になっていく様は恐ろしい。

読むに堪えない行為をも母親は自らに課していく。

おぞましい行為を子どもたちのため行えば、子どもたちへの愛が深くなると信じて…。

病んでいく母親。

子どもが歩けるようになるのも、

外に出るのも心配で胸が張り裂けそうになる。

彼女は子どもたちを守るため考えを巡らせて、

行為はエスカレートしていく…。


ラストの、鍛冶屋の少年―この子もまた過酷な環境での労働を強いられている―が、三つ児の家を訪れた時、この家に愛と幸福を見出すシーンは、愛ゆえに苦しみ続ける母親への、慰めでもありました。




・・・

胸糞悪かったり、グロテスクだったりするのですが、そういうのに耐性がある人に読んでみてもらいたい。

2018-06-27

天童荒太「ペインレス」上・下



書店で買うのが憚られてAmazonにて購入。

医師として診察したいんです。あなたのセックスを―。」

そんな帯をつけられた日には。


・・・・


生まれながらに心に痛みを感じないペインクリニックに勤務する麻酔科医の万浬。


かつてセックスの中で与えられた痛みを死ぬ前にもう一度味わいたいという末期がんの患者・曽根。


テロに巻き込まれ大怪我をしたのち、体の痛みを感じなくなった森悟。


彼らは出会い、壮絶な過去が打ち明けられていく…



・・・・

痛そうで読み飛ばしてしまうところもありつつ、官能的。

ただセックスの時に物凄い喋っているけど…

診察だからそんなもんなのか…


そして、ものすごくくだらないことを書きます。

私が常々思っていたこと。

パンティって言葉は女の人は使う人ほとんどいないと思います。

少なくとも30代以下は使わないはず。

パンティストッキングも言いません。

ストッキングですね。

パンティと書かれているのを見るとちょっと面白くなってしまう。

ショーツとかにしませんか。



脱線しましたが、

主人公は万浬ですが、心に痛みを感じないという設定だけあって彼女は他人に共感しないし、作品内ではモンスターと表現されているけれどサイコパスってやつでしょうか。

そしてそれは、読み手である私も万浬に共感をしないということでした。

イカレた美女と、彼女にずたぼろにされていく周囲の人たち。

ずたぼろにされながらも、彼女を愛し続ける人、離れていく人、憎む人…

万浬は変わらない。

動じない。

動けない。

変わっていけるのは、動いていけるのは、痛みを知る人たちだけなんじゃないかって気がしてしまいました。


万浬は本当に人類の新しいモデルで、希望なのかもしれないけれど、

どうしても空虚で、

彼女は物語の主人公にはなれないんだな、って思ってしまった。


・・・・


装丁クリムト

上巻は『水蛇供戞下巻のは「ベートーベンフリーズ『敵対する力』」。

学生の頃卒論クリムトだった友人がいて、その影響でちょろっとしかわからないのですが、クリムトはエロスとタナトスなのだと言ってしましたね。

さて、『水蛇供戮レズビアンをモチーフにしてるやつ。

では『敵対する力』って何を描いているのか。

表紙になっている女性は淫欲を擬人化したものだそうです。

で、これは横に長い絵になっていて、表紙には入っていないけれど右の方には「我々の心を蝕む悲しみ」を表した女性が描かれているんですね。



やはり上巻・下巻とも表紙の女性は万浬のイメージ。

『敵対する力』には「我々の心を蝕む悲しみ」を象徴した女性が描かれているけれど、それは選ばれてはいない、ということ。

ペインレスってことでしょうか。

万浬が悲しみ、心の痛みを感じない、ということがここでもなんとなく伝わってきます。

…しかしさらに絵の左の方にはゴルゴン3姉妹や病気・狂気・死を象徴した女も描かれているんで、今まで書いたのはこじつけです。



きちんと勉強すればもっともらしい深読みができそうな気がしています。

歓喜の仔」と言い、天童さんはベートーベンがお好きなのでしょうか。

2018-06-19

恒川光太郎「滅びの園」

ネタバレしますよー



鈴上誠一は、ある日突然異世界へ迷い込む。

そこはとても穏やかな、優しい場所だった。

かつて彼の<現実>だった世界よりも、ずっと居心地の良い安らげる場所だった。


そんな彼の元に、手紙が届くようになる。

かつていた世界での妻から、総理大臣から、好きだったアナウンサーから…

そしてそれらの手紙から知らされる地球の危機。

鈴上が平穏な暮らしを送っている一方で、地球は謎の生物・プーニーによって浸食されている。多くの人々がプーニーの被害に合い死んでいく、自殺していく、街は燃えていく。


絶望的な状況になっている地球、

そして手紙には、鈴上がこの地球を救うことができるかもしれない唯一の存在であることが伝えられる…

ほどなくして、地球からの使者が鈴上の元へ現れる。

地球を救うために、今いるこの世界を壊すように説得をするが、

鈴上が下した決断は、今いるこの世界とこの世界の家族を守ることだった。

鈴上は地球からの使者を殺してしまう―



ここで1章は終わり

2章では地球の惨状と、プーニーと戦う人たちの物語が始まっていく



私がここ数年ドはまりしている恒川光太郎さんの新作です。

未来的なSF要素があってちょっといつもと印象が違います。

面白いのは変わりませんが!

貴志祐介さんの「新世界より」をなんとなく思い出します。

あれもすごく好きです。


さて、今まで読んできた作品は、

悲しさ・優しさ・美しさ・すっきり

といった言葉ではまるんですけど、これはちょっと違いました。


私としては果てしなくバッドエンドで、鈍痛を味わいました。

2章以降は地球側の視点での話があって、

結局は鈴上の選択は地球に反旗を翻すことだったわけだから、

この終わり方も分かるんだけど…。



とてもせつない。

大切なものを守ろうとして、失って、恨んで、

人を敵視したり、攻撃してしまう・変わってしまう姿。



ただ、そしてその負債こそが彼が出会った愛によるものなのなら…と言い聞かせることにしませんか

そうでなければ、そんな風に噛みくださないと飲み込めないです

2018-06-15

三島由紀夫「奔馬」

時間が空きましたがようやく「奔馬」を読み終えた。

春の雪」から比べるとかための話で、

序盤の神風連史話のところで挫折しかけました。




前作の主人公の清顕が転生し、飯沼の息子・勲として生きている物語。

とはいえ、勲自身にはそんな自覚もなく、そうと知るのは清顕の友人だった本多だけ。勲は勲の人生を生きている。


今回の主人公・勲と清顕の性格は転生といえども似つかずに

清様は美しくも脆すぎ弱すぎ、愛に生き、悲痛な死を遂げたが、

勲は憂国テロリスト、忠義を果たし自刃するために生きようする青年。


勲が同志を集めながら、

昭和の神風連を興そうとしていくお話。

ただし、勲の計画は直前で密告により決行できなかった。

父の口から密告の事実、勲が暗殺しようしていた人物との繋がりを聞かされたときに勲は言いました。



「僕は幻のために生き、幻をめがけて行動し、幻によって罰せられたわけですね。…どうか幻でないものがほしいと思います」(p.490)



それまで勲の感情は受け入れられずにいました。

国賊を殺して日本を清浄にし、自刃するのだ!

という彼の純粋な生きる目的は、時代と言ってはそれまでなんでしょうが、到底共感はできずにいました。



そんな勲が、涙を流し発したこの言葉には、急に彼へ近づいたかのように、残酷なまでの苦しさを感じました。

裏切られ、自分の信じたものを成しえなかった、何も掴めなかった敗北感。

こんなにも純粋な思いを抱きながら走った彼が、何もできなかった、という無力感。


そして、本多はもう38歳となっていて偶然出会った勲が、清顕の転生した人物だと気がつき、彼を見守っている。

本多の、勲へ向ける感情をなんという言葉で表現をしたらよいのか悩むところで、大きく言えば好意なんですが。

奇跡とか運命という鏡に囲まれた大事な箱の中で清顕へ抱いていた友情が乱反射しまくっている感じ。


勲が本多から受け取った手紙で感じた愛情もまた、清顕を通してのものであり、

勲にとっては幻のようなものだったのかもしれないと思うと、勲の孤独さを更に見つけてしまいます。



……


しかしながら、勲は幻ではないものを手に入れようと、再び、国賊を暗殺しようと、ただ一人で行動を起こし、ついぞ成し遂げる。

最後の一文は

「正に刀を腹へ突き立てた瞬間、日輪は瞼の裏に赫奕と昇った。」(p.506

)

とあります。

月も出ていない夜だった。

しかし、かつて堀中尉に自らの望みとして語った、


昇る日輪を拝し、自刃をする、


というそれは確かに叶った。

そしてそれは幻では、なかった。

清顕の志は半ばに終わってしまったけれど、

勲の生はきっと救われたのでしょう。

2018-06-09

多井隆晴「多井熱」

多分1年半くらいやっていなかったネット麻雀、なんとなく暇で、軽い気持ちでしてしまった。

そこからやめられなくなって1日があっという間に終わっていく。。


本当に私は一体何をやっているんだろうか。。

1日中ゲームしてる30歳。


落ち着こう。

私は何も残らない時間を過ごしているのではないだろうか。

瞬間瞬間の楽しい、面白い、だけ。

しかも上達しない。

何も考えずにやっているから。

ただ、遊びや気分転換にしたって、同じ時間を費やすなら、

少しでも上達しておけば将来どこかで役にたつかもしれません。

上手くなった方が、きっと楽しいし。

どうせやるなら何かを学んだ方がいいですね。


ということで、麻雀のことも勉強していこうと手を付け始めました。

ちょうど多井隆晴さんが本を出したようなので買ってみました。


戦術本ではなく、多井さんの仕事の考え方が書かれています。

けっこう真面目な話もあり、ビジネス本?自己啓発本?みたいな感じで、

すいすい読めます。

多井さんて麻雀の面白い人、って印象でしたが、奇想天外なことが書いてあるわけでもなく、仕事の仕方や考え方が誠実で、学ぶことたくさんありました。



努力とか我慢って、当たり前に大事なんですよね。

それなのに大人になってどんどんそういう事をしなくなってきていて、

これじゃ駄目だよなーって反省をしています。


麻雀は1日1時間。ただし勉強する時間は含まない。

として、どうにか変わっていきたいと思います。


あと何切る問題も付録でついていますよ。