2連続ドロー

シャハブ ザヘディの順応が進んでいる。しかしそれはチームに対してというより、自分のスキルを幅をもって発揮してくれているという印象だ。そしてそれがとてもうまくいっている。その先のステップを求めるには、周囲のクオリティの向上が必要になってくるだろう。

まず名古屋戦。スコアレスだが緊張感を常にともなう試合で面白かった。残念ながら山岸が欠場ということで、もっとも期待したものを見ることはできなかったが、ケネディはフル出場でやや劣勢のホームチームを助けていたと思う。彼は開幕から全試合先発フル出場を継続しているようで、最初の3連敗を経て、その後は4勝1分、うちクリーンシートが2。特別何か向上したというよりは、いわゆる安定感が増してきている印象だ。まあポテンシャルを活かせているというべきか。シュート数などから言えば勝つべきだったとは感じたが、これはこれで良かったのかと。

そして広島戦。こちらはより緊張感のある、強度の高い内容になった。相手は好調を継続しており、昨年の対戦のイメージを思えば、劣勢になることをこそ予想できた。しかしここでシャハブが見事に前線の脅威になっており、素晴らしい先制点をチームにもたらした。

名古屋戦でもクロスバー直撃のヘディングがあったので、基本的に彼は決定的なフィニッシュを毎試合続けていることになる。だからこの試合でのあの強烈なゴールは、アジャストした成果と言えるだろう。言うのは簡単だが。

来日して出場5試合で3ゴール1アシストか。他所のチームであればそういう外国籍選手が現れることもあると知っているが、それをアビスパで見られるとはね。あのゴールも相手にすれば仕方ないくらいのもので、クロスも良かったがやはりシャハブの駆け引きと技術が優れていた。ちょっと面白いのはアシストした湯澤の喜びようだったりするのだが、まあ良くやったと言うべきか。

気になるのはクロスの蹴り方で、なぜスライディングを選択したのかがいまいちよくわからない。だからそれに合わせた方がやはり凄いなと。湯澤は名古屋戦でのシュートもスライディング気味に蹴っている。なんだろうね。

あえて言うなら、その後の早すぎる失点はもったいないし、良いセーブがあればと思えるシーンだった。

調子を落としている選手もいれば、ケガ人が戻ってきたりで、また次が楽しみになった。期待しよう。

2024 SheBelieves Cup

日本女子代表(a.k.a なでしこジャパン)は、期待していた良い結果は得られなかったが、良くも悪くも現在地の認識を深めることになったなと思う。そしてオリンピック本選に向けたメンバー選考もほぼ決まってきた印象だ。

はっきり言って、勝ちにこだわった2試合だったとは思わない。それはスタメンや交代策に現れているし、そこで試されたこととピッチで示されたものを見渡せば、どういうコアメンバーで戦うべきかが察せられる。

それにしてもアメリカ戦は凄かった。会場のクオリティ、規模、記録的な入場者数、観客の反応。親善試合のそれではなく、去年のW杯でのオーストラリア代表の試合のような盛り上がり。完全なアウェーで、これまた記録的なゴールが飛び出す。

清家貴子の開始30秒でのゴールは、アメリカに限らずどの強豪国にとっても悪夢のような、最悪を更新するものだ。

その後プレッシャーを受け続けて同点に追いつかれて前半を1-1で凌ぐ。「凌いだ」が相応しいが、これをポジティブに捉えることもできるのは、アビスパを見続けているおかげだ。池田太はあらためて古巣でもあるアビスパの試合や練習を見るべきだと思うけどね。2試合ともそうであったように、守備ベースの展開が本選でも予想されるだけに、守備への意識をより肯定的にチームに浸透させるべきだ。

ただし現状でもその片鱗はあるわけで、あとは共通理解を深めることだ。カウンターやフィニッシュへのクオリティは十分あるので、適切な選手が正しく配置されていれば、ブラジル戦でも勝てたかと。

ここまでテストに徹していたのはむしろ好感が持てる。ただし最終的な18人の選出の内容によるが。本選までにテストマッチは予定されているようだ。そこでの戦い方で本選の姿が見えてくるはずだ。

シャハブ ザヘディが2連発

チームは1勝1敗。そしてなんと言っても、シャハブ ザヘディの2試合連続得点ということに驚かされた。

浦和戦では単騎で持ち込んでミドルレンジからのシュートを、鹿島戦では悪い状態からのヘディングを決めてみせるという圧巻のゴールだった。パワー面のことで評価されがちのようだが、どちらもテクニカルなものだと感じた。

まず浦和戦のものだが、湯澤から紺野へのパスがずれて相手に引っ掛けられたと思いきや、トラップがずれて、良いポジションに動き始めていたシャハブの足元へ。対面には2人いて、背後からのプレスバックも感じている中で、ドリブルで前進しながらいくつかの駆け引きがあったと思う。まずホイブラーテンという名手とのもの、そして西川という国内有数のGKとのもの。ホイブラーテンにすれば限定させることを優先したのだと思うし、バックステップで距離をとりながら下手に取りに行かないことを選択していた。それを踏まえてシャハブは相手を動かしていたのだと思う。そしてあるタイミングで左足一閃。それは西川にとってのブラインドの位置関係のときで、そこしかないと言えるものだろう。おそらく20mくらいの距離からゴール右隅にシュートが突き刺さる。相手にすれば「打たせた」格好だと言えるが、想定を超えるプレーが飛び出したということだ。まあ、そうしたものが1部リーグのクオリティだと思っている。通り一遍のことでは差は生じない。

そして鹿島戦。左サイドで動かしている間にゴール前のDF2人との駆け引きをやっていて、特に関川はシャハブの動きを注視していた。そこに宮のクロスが送られるが、マイナス方向にずれてしまう。ここで関川にすれば安牌として認識したのだと思う。タイトに詰めることもなく(まあ難しいか)、難しいヘディングにさせたが、こちらも想定を超えるシュートがゴール右隅に送られて、GKの早川も触れないものになった。首の強さ、みたいなことよりも「当てるタイミングとコースの作り方」が凄かったなと感じている。あの瞬間にそれをイメージ出来たのが素晴らしい。宮にすれば「アシストにしてくれて感謝」なのだ。

このどちらもが「適切なタイミングとシュート技術の高さ」の賜物なので、まあ良いもの見たなと思う。凄かったね。

これでさらにマークの強度は上がっていくだろうが、こちらにすればどうやって彼にチャレンジさせるかが課題なのだし、そうすることでチャンスは増えるだろう。それにしてもこの短い期間で結果を出し続けているというのは素晴らしい。

鹿島戦では、難しいコンディションの中で難敵をノーゴールに抑えた。長らく雨天、荒天の博多の森には良いイメージは無かったが、これもまた長谷部アビスパが塗り替えてくれているのでありがたい。DFラインの選手たちが揃ってきて、セントラルには若い2人が並んだ。ちょっと中町と末吉のコンビを思い出したりしたし、あの時の期待感に似たものがある。

キリがない。さて次は……。さあどうなるか。そういう楽しみがあるのはアビスパ界隈では滅多になかったもので、それもまた有り難いのだ。期待しよう。

第4節終了 勝ち点5

こうなると横浜FM戦での勝利がより大きなものに感じる。失点が続いているし、似た形のものがある。そんなことは言われるまでもないだろうが。だからまあ、そこは相手も常に考えてきているということだ。

新戦力に関してはまだ特筆されるものはない、こともなくて、岩崎については同姓の選手が2人入ったのかというくらい、どこにでも顔を出しているのが印象的だ。前線については、ナッシム ベン カリファが出られないようで、まだこれからではあるだろう。紺野については2年目ということもあり、全体としては物足りない、くらいは期待の裏返しとして言っておこう。

シャハブ ザヘディはそれこそまだまだだろうが、早くも得点に絡んだことは評価されてしかるべき。あの得点は基本的に彼のゴールと言ってもいい。特殊なケースでの獲得なのはともかく、Jリーグ初のイラン人選手を見られるのはかなり楽しみだ。ダエイ、カリミ、マハダヴィキア……。ついついあの頃の上手くて、強くて、ズルくて良い選手たちが思い返される。おっとアジジを忘れてはいけない。

重見に関しては新加入とは思っていないくらいだし、確実に上昇してきているのが頼もしい。まあ繰り返しになるが始まったばかりで、ホントこれからだと思う。松岡もいつかスタメンがあるだろうし、若い選手同士でのコラボレーションも期待したいところだ。

代表ウィークに入って、これはこれで良いタイミングだったのかと。これまで出てこなかった主力クラスが戻ってこられるか。期待しよう。

サッカー日本女子代表(a.k.a なでしこジャパン)とJリーグ 2024シーズン開幕

2月については、中旬以降は女子サッカーのことばかり考えていたように思う。対北朝鮮戦の成り行きが良くも悪くも面白かったからだ。面白い、とは勝ったから思えるわけだが、試合内容についても申し分ない面白さだった。

もともとアウェーがどう開催されるのかは注目されていたが、平壌開催が正式に決まったという発表がなされないまま日程が迫ってきて、直前で中立地の可能性が出てきた。サウジアラビアでの開催の可能性がまず情報としてあり、その後、大連の情報も出てきた。その位置関係からは、どちらが誰の意向なのかが伺えたが、結局サウジアラビアに。

笑えるのは、サンスポが「北朝鮮はロシアで合宿し、カタール開催を希望している」とかいう飛ばし記事を出したことで、こいつらがどれだけク○なのかがよくわかったね。実際には、北朝鮮は「中国の南方」で合宿をしていたそうで、開催に向けても中国の協力を仰いだが、そうならなかった。春節と被ったからという憶測もあったようだが、まあよくわからない。

そんなこんなで北朝鮮女子チームはほぼ丸一日かけて陸路北京入りし、そこからは空路。こういう時だと注目が集まって、移動中のチームの様子などが映像として報じられるので、かなりレアだった。

試合となると、わかっていたことだが球際の強さだけでなく、オンザボールでの技術もあって非常に厄介な相手だった。ただし拮抗している対戦ではクオリティが必要になるし、その絶対値は日本女子が優っていた。だから相手を見定めた2戦目で顕著になり、危険ではあり続けたが、勝利は順当と言えるものだろう。思っていたよりもクリーンなゲームになっていて、そこも面白さの一因だ。緊張感のあるとても良い試合だった。

クオリティという点では、やはり山下杏也加のスーパーなセーブが光った。あれは凄かったね。本人はインタビューで「(あの瞬間で)止められることを確信していた」というから、優れたGKというのは本当に有難いものだ。

そしてその山下から週末に再開したWEリーグでゴールを奪った清家貴子のシュートも凄かった。女子サッカーは面白い、ということはあらためて触れておきたい。

 

福岡vs札幌の試合結果・データ(明治安田J1リーグ:2024年2月24日)

https://www.jleague.jp/match/j1/2024/022403/live#recap

横浜FMvs福岡の試合結果・データ(明治安田J1リーグ:2024年3月1日)

https://www.jleague.jp/match/j1/2024/030102/live#recap

さてアビスパ。まあまだ何かに言及するのは避けたいところで、金曜日に暫定1位にもなって、2節終了時には早くも全勝がいなくなった。そして、無失点はアビスパのみとなった。金曜夜の真裏では4対5というロクでもないスコアの試合が行われていたりもする。面白い。

次節はまた面白い対戦になりそうだがどうなるか。楽しみだし期待しよう。

2024シーズン

興味深いシーズンになりそう。「クラブ史上最高の成績の後」というのは、本来なら意識されるべきではないが、まあ無理だよね。むしろ、変わったはずの景色をどう受け入れるのか、が気になるところだ。

良いイメージ、メンタリティ、経験値。獲得されたものを維持するのか、それとも面倒だと手放してしまうのか。そこは見届けたい。

2020シーズンから取り組まれてきたドラスティックな変化を好ましく見ていたし、より正しい競争がなされるようになっているのはピッチで示された。そういうことは既に触れてきたわけで、その先にはタイトルがあったということになる。見たかったものは、やはり見たいと思える選手たちで成し遂げられた。それが嬉しかった。

去るものもいたわけだけど、良い選手が高い評価を得て移籍するのは当たり前のことだ。そういう選手がいたからこその昨季があったのだし、これはこれで興味深い移籍になった。もちろん山岸のことで、彼が名古屋グランパスでどう活かされ、且つどう活かすか、は楽しみである。ユンカーのことはもとより、パトリックという存在も加わって、より幅のある構成になっているのが良いなと思う。

山岸はメディアへの露出など、いわばフロントマンとしての活躍もあったわけで、そこも抜けた穴になるのかどうか。彼は「アビスパのユニフォームに星をつけたい」と事あるごとに発信していて、それが彼だけのものでは無いにせよ、そのための振る舞いをピッチで見せていたと思う。だから見事だったなと言う他はない。

それにしても名古屋サイドはルヴァンの対戦の直後くらいに声をかけていたとのことで、それは実に早い対応をしたなと思う。というか直接対決がもうないというタイミングを待っていたのかもしれないな。そういう評価を名古屋のようなクラブから得ていたのかと。凄いね。

その他の出入りに関しては想像通りだったり、そうでなかったり。半々かな。まあ水準が上がってきたことは間違いない。さあどうなるか。

2023最終節、そして表彰

好調同士の対戦ということで、スコアはもっと動くかと思っていた。しかしそうはならずにATで惜しい失点があり、そのまま終了。途中まではとても引き締まった良い試合だったが。まあ、今季の経緯を見続けていれば、これも頷けると言えばそうだし、指揮官は信じるだけだろう。それにしても永石は凄かったね。

広島とすれば明確に山岸をどれだけ封じるかを重要なタスクにするわけで、それは実際どの試合でもそうだ。しかもわかりやすく狙われる役割なので、厳しい立場でもある。その中でリーグ戦全試合に先発し、最終盤のここ数節でもほぼフル出場していることの重みを感じる。そして、今季のJリーグ 優秀選手賞に選出された。おめでとうと言いたいし、素晴らしい成果だ。とりわけFWからの選出に価値があると思う。

井手口や奈良についても良かったなと思えるし、長谷部さんに関しては、優勝チームを除いた中での「最優秀」だったと。月間での受賞が2回あったが、やはりタイトルというのは目に見えて評価の後押しになるということなのかな。これらもまたアビスパ福岡の歴史に刻まれる。

ほろ苦い最終節になったが、この試合だけ見ても十分評価できるものだ。そしてアビスパにはまだチャリティマッチが用意されている。選手は大変だろうが「この対戦がどうなるのか」は単純に興味がある。期待しよう。