Hatena::ブログ(Diary)

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2013.07.10

"Groove Theory"(1995) / Groove Theory

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確かに#6.'Tell Me'は名曲です。 ハッキリ言って、22世紀まで残る曲、と言っても過言じゃないです。

ただ、余りにもその曲が突出しているので、「ただの一発屋」とレッテルを貼られかねない存在でもあります。 誠に残念ながら。

Hip-HopユニットMantronixのメンバーだったBryce Wilsonは、「コアを突き詰めた後のシンプルなポップス」をやりたかったんだろうし、Amel Larrieuxは、「多様な要素を吸収しながら拡散していくアーティスティックな音楽」をやりたかったのでしょう。 それは、Bryce Wilsonが当時手掛けた外仕事*1と、後に出たAmelのソロ"Infinite Possibilities"*2を聴き比べれば自ずと明らかだし、これ一枚きりで空中分解してしまったのも必然かな、と言う気もしてくるのです。

だからこそ、異なる資質を持った二人のベクトルが一致した瞬間を封じ込めたこのアルバムは、とても魅力的だし、大好きです。 シンプルなトラックにキャッチーなメロディ、Amelの豊かな響きを含んだ声が自然に馴染んだ曲達は、よく聴けば'Tell Me'以外にも良質な曲、たくさんあるのですから。*3


上記は、Internet Archiveからサルベージしてきた'00年の文章なのですが、それから更に10数年経た今、彼/彼女が残した一枚が、その後のトレンドを、いかに正確に予言していたのか、それはもう自明でしょう。 例えば、#8.'Hello It's Me'は、Isley's経由でTodd Rundgrenの「ソウル」を焙り出したものだったし、そこからAOR/ブルーアイドソウルの再評価に、'00年代初期の(所謂)ネオソウルに、更にはChillwave/Vaporwave*4に、導線引くのは、そう難しいことではないでしょう。

あまり使いたくない言葉ですが、二人は「早過ぎた」のです。 その予言の数々を、当時の私たちは、全く受け止められなかったのですから。 だからこそ、中古屋で100円前後で投げ売られている盤を、今こそ拾って聴くべきなのではないでしょうか。

*1Mary J. Blige、Babyface、Toni Braxton etc...

*2asin:B00004RFX2

*3:2000.07.10に書いた文章を手直ししたものです。

*4:ヒップホップ/ブレイクビーツの手法を用いてレイト70s/アーリー80sを再構築し、完成度を追求する匿名集団と言うのは、Groove Theoryそのものです。

2013.03.03

"One For All"(1990) / Brand Nubian

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'90年作。 この頃から、「シンプルだけれど研ぎ澄まされたビート/トラック、フロウとスキルで勝負」な時代に突入していく時期の作品。 今聴くと、テンポ少々速目なトラックに、ファンキー&コミカルなフロウ、マイクリレー&掛け合いが新鮮なのです。 しかしライムはストリート寄りで、かなりマジ。 暴力表現抜きでも充分ハードコア。

自分がHip-Hopを聴き始めたのは、これよりちょっと後で、このアルバムは後追いなんだけど、このアルバムを聴いた時、Grand Puba/Sadat X/Lord Jammerの3MCのタイトなラップ絡みに、「あぁ、こういうのが“ホンモノのHip-Hop”なんだな〜」なんて思ったものです。

#10.'Slow Down'に使われたEdie Brickell*1とか、これで使われたことで定番になっていったネタも多いし、全ての原点って感なんじゃないでしょうか。*2

*1:'What I Am' http://youtu.be/tDl3bdE3YQA

*2:2000.07.10に書いた文章を手直ししたものです。

2012.05.03

"Vagabond Heart"(1991) / Rod Stewart

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これ、個人的には、初めてリアルタイムで買ったRod Stewartのアルバムなんですが、それはかなりラッキーじゃなかったか?と思える程、良くできた一枚なのです。

ベスト盤用に録音された#4.'Downtown Train'が、思いの外好評だったことを受けて、かなり急いで作られたはずのアルバムなのですが、これが、彼の音楽のルーツ三つの柱「アイリッシュルーツ」「'50sロックンロール」「'60sソウル」*1を、バランス良く、しかもコンテンポラリーでソリッド、かつ無駄の無い音作り*2で再現されていて、主役である歌い手も、水を得た魚のように、伸び伸びと歌っているのです。

アイリッシュ+ロックンロール+ソウルの先輩格Van Morrisonの#2.'Have I Told You Lately'、同世代のフォーク/ブルース/ロックを根本に持つ同志Tom Waitsの#4.'Downtown Train'、Robbie Robertson(The Band)の'Broken Arrow'における、真摯な歌心炸裂には、じんわりと熱くなりますし、Tina Turnerとハスキーな声で渡り合う#9.'It Takes Two'、しみじみと歌われる#10.'You Are Everything'*3、Tempsを迎えて、ドゥワップを楽しそうに歌う#11.'The Motown Song'には、「ブルー・アイド・ソウル」の第一人者としての、底力が、ここぞとばかりに露になります。

これ以降、世界の音楽の中心は、デジタルなR&Bや、ささくれ立ったオルタネイティヴロックの時代になって行き、彼は、メインストリームのロックとは距離を置くようになります*4。 そんな彼の、最後の「ロックがポップだった末期」の置き土産、今聴いても、すごく楽しいのです。

*1:"Songbook"以降の「スタンダード」「ジャズ」は、これらの、更にルーツ探求ではないでしょうか

*2:アレンジの主役はTrevor Horn / Richard Perry

*3Diana Ross & Marvin Gayeのヴァージョンを下敷きにしているのでしょう

*4:距離を置いたが故の、"American Songbook"シリーズが、毎回チャート上位の常連になっていくのは、皮肉とも言えますが…

2012.04.18

"Fantastic, Vol. 2"(2000) / Slum Village

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プロデューサー集団The Ummahの一員として知られるJay-Dee率いるSlum Villageの1st。

Jay-Deeは、アルバムをトータルでプロデュースできる力量とバランス感覚を持った人でもあり*1、また、バックビートのスネア一発で「あ、Jay-Deeっぽい」って思わせる個性的な音作りをする人。 ネタだけに頼っている人ではないけれど、音の断片からのぞく引き出しの多さは尋常ではなく、豊富な知識とアイデアを生かす鋭いセンスの持ち主でもある、と。 早い話、この人の作るトラックには抗えないってことですよ。

このアルバムの前に出たQ-Tipの"Amplified"は、恐ろしく密度の高い作品だったけど、続けて何度も聴くには少々つらい作品でもあったのです。 その点、この"Fantastic, Vol. 2"は、メロウでクールで、浮遊感多目な音作りが中心で。 結構聴き易いのですが、シンプルで輪郭のハッキリした硬質なビートは健在、なのは流石ですけど。

ラップも、パーティラップというか、少々コミカルなフロウで、肩が凝らない感じで。 Jay-Dee仕事をずっとチェックしていたら、たまにはこういうのも、ね、という気分に…。

Busta Rhymesをゲストに迎えたディスコっぽい#8"What It's All About"、Q-Tipを交えてATCQの延長線のような#6"Hold Tight"、D'Angeloのファルセットがまったり漂う#7"Tell Me"、Jazzy JeffのコスリでJBの声をラップに合わせて次々とハメる#2"I Don't Know" 等々、ゲストの生かし方もお見事ですね。*2

*1:"Amplified" / Q-Tipや"Like Water For Chocolate" / Commonのほぼ全てのトラックを手掛けた

*2:2001.06.08に書いた文章を手直ししたものです。

2011.08.28

"The Main Ingredient"(1994) / Pete Rock & C.L. Smooth

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例えばDJ PremierやJay-Deeの極限まで削ぎ落とされたソリッドなビートだったり、Ruff Rydersや南部モノの派手な盛り上げ一辺倒のバウンシィなビートだったりに馴れ切った今の耳で聴いた日には、「…ちょっと古い?」と言う感は拭えないものの、この盤が'90年代半ば迄のHip-Hopの最高傑作である事実は揺るぎない、…と思いたいのです。

元々、サンプルのループに手弾きの演奏を混ぜたりして、「音楽的」だったPete Rockの音作りスキルはこの'94年作で一層の進化と深化を見せ、発売当時「これはHip-Hopを超えたレベルまでたどり着いた」とか話題になったものでした。

確かにPete Rock自身、「普段Hip-Hopを聴かない大人にも聴けるようなものを作りたい」みたいな発言を繰り返していて、事実アルバム後半は、かなりメロウ&ソウルフルな、'70年代のニュー・ソウル/クロスオーバー・ジャズ/プレ・フュージョンを思わせる音作りになっていたり。

…とは言え、やっぱり「らしい」のは、エッヂの効いたビートにゆるいスクラッチが絡んだ#2.'Carmel City' / #3.'I Get Physical' / #5.'I Got A Love'でしょうか?

勿論CL Smoothのラップは、どの曲でもタイトかつ滑らかかつ練り上げられていて、完璧。 基本的に「特別主張する」タイプのMCではないけれど、ひたすらビートに寄り添い、上モノの一部として楽曲に「うたごころ」を与えていく、そのためには、マイクを決して離さない。 この直後二人は決別してしまうんだけど、その後のPete Rockの作品を聴く度、「Pete Rockの音は、このラップがないと完成しないんだな」とも思ったりも。*1

*1:2001.09.23に書いた文章を手直ししたものです。

2009.11.10

"Maxwell's Urban Hang Suite"(1996) / Maxwell

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'96年の彼の1stアルバム。

でも、今でこそD'AngeloやTony Rich、Eric Benetらと並んで「ニュークラシカルソウル」を象徴する1枚として、それなりの評価を得ているけれど、出た当初、きちんと理解されていた訳ではなかったのです。

  1. 「ストーリーを持ったコンセプトアルバム」と言うのが、当時のR&Bでは殆ど前例ないものだった
  2. それを、先行シングルも全く無い新人が、デビュー作に於いてほぼ自力で作り上げてしまった
  3. Hip-Hop Soul全盛の年に、Hip-Hopとの繋がりが薄い*1
  4. 艶やかでキラキラした、'80s初期〜中期のブラックコンテンポラリーを思わせる音作りだった*2
  5. ファルセットの一人多重録音のハモリを軸にした歌の組み立て方

これら全てにおいて当時の主流(売れ線)とは異質だったのですから。 今振り返ると、正直、プレスや音楽評論家もどう扱っていいか戸惑い気味でしたね…。 ただ、楽曲の良さは光っていて、その後切られたシングルがどれもオンエアチャートで健闘したことが、それを物語っている、と言えますね。

正直、難癖をつけようと思えばいくらでも可能なんです。 「'80sの単なる焼き直し」「Marvin GayeとPrinceのコピーじゃねぇの?」「似たような曲調ばっかりで飽きる」etc...。 ただ、その音には、一旦はまると、憑かれたように最後まで聴き通さなければいられない、そして最後の#11"The Suite Theme"の余韻に浸りながら、またアルバムの先頭から再生してしまう、そんな魔力が潜んでいるのです。 それは、無駄なく洗練されている部分と、太く強くしなるグルーヴ感*3が、別ち難く結びついているから。

彼が、この後アンプラグドのライヴ盤を挟んで出す以降の作品は、この1stの延長線上ではあるけれど、新しいスタイルを模索しながら、と言う側面も強く、このアルバムのような、計算し尽くされた流れを持った作品ではないのです。 確かに、この盤の様な作品をファンも望んでいるだろうし、彼もやろうとすれば出来なくもない、でも、それをあえてしないのも、また彼らしい姿なのだろうなぁ、と、今になれば分かるのですが。*4

*1:と言うか全く無かったですね…

*2:それは、ロウファイなHip-Hopビート全盛の時代にあって、一番流行から外れていた。

*3:“ファンクネス”と置き換えてもいいかもしれないけれど

*4:2002.07.24に書いた文章を手直ししたものです。

2009.08.10

"Tales of Kidd Funkadelic"(1976) / Funkadelic

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前年('75)の好調さを維持して、全力疾走していた時のGeorge Clinton/P-Funkですから、当然このアルバムのクオリティも最高なのです。

タイトルは、当時の新人メンバーだった、Michael Hamptonのニックネーム、'Kidd Funkadelic'から。 翌年の"P-Funk Earth Tour"*1で、マイクを壊さんばかりに熱唱した、Glenn Goinsも、この頃から参加だった訳で、当時、メンバーが流動的ながらも、即戦力的メンバーをどんどん飲み込んでいった時期と言えます。

バンド(軍団)の好調さが、そのまま楽曲のにも反映されていて、ファズギターが唸る#1.'Butt-to-Butt Resuscitation'、テンポ速めな硬いベースラインが誘導する#2.'Let's Take It to the People'で掴みを取り、その後、持続するリズムと、ヴォーカル隊の執拗なコールアンドレスポンスがうねりを生みながら焦らしまくる、ポエトリー/トーキンブルースのファンク解釈とも言える、クールなミディアムナンバー#3.'Undisco Kidd'、#4.'Take Your Dead Ass Home! (Say Som'n Nasty)'と言う、長尺曲をふたつ続けてもダレないのが、絶頂期の証明でしょうか。

このアルバムのもう一つの芯、それはBernie Worrellの鍵盤捌き。 特に、ピアノ、オルガン、クラヴィネット、ムーグシンセサイザーを駆使しまくり、ギターとは違う、ノイジーで鋭角的なフレーズを随所で撒き散らしているのですが、それが極まるのが#6.'Tales of Kidd Funkadelic (Opusdelite Years)'。 パーカッション、随所にヴォーカル隊のコールアンドレスポンス、赤ん坊の泣き声をリズムにしつつ、ムーグを縦横無尽に駆使して、バロック的なオーケストレーション、アフリカ民族音楽的な旋律を交互に…、って書いてて自分でもちょっと分からなくってきましたが、本当にそういう曲なんだから仕方ない、と言いますか…。

'76年と言うと、世間はディスコとAOR、アメリカ建国200年、と言う浮かれた空気だった訳で、そこに嫌味たっぷりなアルバムをかましたGeorge Clinton/P-Funkの反骨精神、今聴いてもヒリヒリとした快感が背筋に走りますね。

*1:Parliament P-Funk Earth Tour

2009.07.02

"Let's Take It to the Stage"(1975) / Funkadelic

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安定の「これぞP-Funk」。

前のアルバム*1を出すのと前後して、James BrownのバンドからFred Wesley / Maceo Parkerを含むJB Hornsを、Sly & The Family Stoneから、女性ヴォーカル部隊を引き抜き、Bootsy Collinsも復帰、若いメンバーも続々加入、と、メンバーが充実したところで、別動隊Parliamemtが、"Up for The Down Stroke"*2で、(まさかの)シングルヒットを取り、勢いに乗っていた頃の作品。

よく知られる話ですが、ジャムセッションを録音して、ミックスの段階で、楽曲を、Parliamemt / Funkadelic / Bootsy's Rubber Bandに振り分けていたんですね。 この"Let's..."は、Parliamemtの"Mothership Connection"*3、Bootsy's Rubber Bandの"Stretchin Out..."*4と同時に録られた作品なので、とにかく、リズム隊/器楽演奏/ヴォーカル隊、全てに大充実な、傑作なのです。

Parliamemt / Bootsy's Rubber Bandには、ホーンセクション入りのポップな楽曲を振り分ける、とGeorge Clitonが明確に意識したので、Funkadelicには、ギターが唸り、ヴォーカルは重苦しくねっとりした感情を剥き出しにした、極彩色の毒々しい曲が集まることに。 特に、ヴォーカル隊がユニゾンで、コール&レスポンスを執拗に繰り返す#1.'Good To Your Earhole'は、のっけから衝天モノ。 同じように、ギターの執拗なアドリブの上で、ヴォーカル隊がワンフレーズを繰り返す#6.'Get Off Your Ass And Jam'は、Funkadelicのマニフェストとも呼べる曲ではないでしょうか。

Bootsy Collinsが、歌にベースに大活躍なアルバムなんですが、後の「ブーツィ歌唱」を確立した#3.'Be My Beach'は、部分的に"I'd Rather Be With You"と同じフレーズが出てきたりも…。

その他、ゴスペルの葬送歌のような#7.'Baby I Owe You Something Good'の重苦しさ辺りも含めて、ヴォーカル隊の充実さが際立つアルバムなのです。 Funkadelicの肝は、大音量の歪んだギターなのですが、それに真っ向から立ち向かう、詰め込まれまくった「うたぢから」こそ、このアルバムの聴きどころでしょう。 それは、原始黒人霊歌〜戦前ブルース〜ゴスペルを経て、リズミカルな掛け合いを繰り広げるヒップホップまで、導線引けるんじゃないかと思うのです。

難しい結論になりかけましたが、とりあえず、そのクリエイティビティの中に「諧謔と悪意と反骨と嫌味と狡猾」が、ぎっちり詰まっている一枚*5。 こんなアルバム、作れるのは、当時のFunkadelicだけでしょうし、それが歴史的名盤になっているのも、奇跡的なことなんだなぁ、とか思いながら、その有難さを噛み締めたいものです。

*1:"Standing on the Verge of Getting It On" d:id:halflite:20090601:funkadelic

*2Up for the Down Stroke

*3Mothership Connection

*4Stretchin Out in Bootsy's Rubber Band

*5:アルバムのジャケットに腐乱死体描いちゃうバンドってのも…。