美代子阿佐ヶ谷気分:現実感がすこし狂う

美代子阿佐ヶ谷気分

昼からごそごそ。とりあえず渋谷方面へ向かう。今日、特に観たい芝居はない。ロハ下ルpresents 01『セインツ・オブ・練馬』@赤坂RED/THEATERが気になるが、元スロウライダーの作・演出の山中隆次郎の芝居がどうしたっておもしろいと感じられるはずがないので見送り。役者陣があまりにも魅力的なのも振り切るくらい映画寄りな近頃。キリンバズウカも気になるが、評判をみて土日行くか決めればいいだろう。そんなこと考えながらどの映画を観るか決まらないまま渋谷ハチ公前に来てしまう。ぴあを眺めて、エヴァは今晩「序」を見返して明日観るんだし、スタートレックは観たいが気分じゃないし、ライズXで想田監督の観察映画第1段「選挙」もありだが気分じゃないし、やっぱりエヴァか、いや違うやろ「序」のDVD借りてるやろ自分、金曜ロードショーでやってるのにDVD借りてるやろ自分、美代子今日からか、しかも15分後じゃないかで宮益坂かけあがり。

公式サイト:http://www.miyoko-asagaya.com
製作年: 2009年
製作国: 日本
日本公開: 2009年7月4日
(シアター・イメージフォーラム)
配給: ワイズ出版
カラー 86分 35mm


▼チェック:伝説の雑誌「月刊漫画ガロ」の作家・安部愼一が、後の妻・美代子と同居生活を送りながら発表した同名青春劇画を映画化。私生活に根ざした創作スタイルゆえに生じる不安、焦り、絶望に蝕まれ、答えのない疑念に悩む安部と、彼に寄り添う美代子の姿を描く。主演の安部を実力派俳優・水橋研二が演じ、運命の女性・美代子を舞台女優の町田マリーが好演。ストイックなまでの純愛感や、1970 年代の東京・阿佐ヶ谷の空気感が郷愁を誘う。


▼ストーリー:1970年代初頭。漫画家・安部愼一(水橋研二)と恋人・美代子(町田マリー)は東京・阿佐ヶ谷で同居生活を送っていた。安部が美代子をモデルとして「月刊漫画ガロ」に発表した「美代子阿佐ヶ谷気分」は彼の代表作となるが、私生活の中に創作の糧を見つけようとする安部は次第に行き詰まり、焦りと絶望は狂気に変わっていく。


シネマトゥデイより

最初のほう、タバコの煙のシーンで絵がとてつもなく綺麗で背筋が伸びる。既に漫画として絵が美しく出来上がっているんだろう、映画に写し変えても絵が美しいに決まっている、さあ味わいな、という感触。安部愼一役の水橋研二ははまりまくってる。町田マリーはこんなに脱げる女優なんだびっくり。原作知らないけど、雰囲気とその名作感がほとばしってくる。フィルム感がたまらない。これはまさに映画館で見ないと映画だ。原作への信頼があると映画はこんなにも堂々とできるものなのか。86分、余裕たっぷり。ひょっとしたらむしろ何もしない方がよい映画になるのかもしれない。


ところでこの作品の試みは、単なる絵が綺麗な漫画の実写化ではなく、漫画家阿部慎一の魂の軌跡のトレースもしている点にある。ガロ世代でもないしアックス購読者でもないので阿部慎一もその評価もその気分も知らなかったけれども、70年代前半の阿佐ヶ谷のアパートでの同棲生活の閉塞感と煮立ってどろどろした愛情がまるで今ここのことのように感じられる。そして、感情移入ではないけれども、劇中の阿部と美代子が愛おしく感じられてならない。この気持ちは何だろう。優しさが切なすぎるだなあ。阿部と美代子の70年代阿佐ヶ谷気分が今の誰かに届きそうなラストのダンスが素敵だ。目の上から流れる汗が止まらず終わってもしばらくぼけーっとしてしまう。


難点は挿入曲たち。今日が初日なので、劇場の外に出るとぴあの出口調査の人に声をかけられたので涙を乾かしながら回答していく。簡単な回答をしたのでたまたま覚えてる。

何点ですか:90点(気分良くて100点とか言いそうになる)
何歳ですか:30歳(他人に急に年齢を聞かれてびくっとする)
ストーリー:5点(既に完成しているから)
映像:5点(最初からびんびん)
演出:5点(雰囲気は申し分なかった)
音楽:4点
俳優:5点(役者の演技は申し分なかった)

おそらく、70年代的な空気とリアルに関係のある曲が多く使われているのではないか。それは本当は映画のよさとは関係ないんだけど、どうもそのせいで作品の突き抜け感が損なわれたような気がしてならない。もっと言うと、危うく、70年代を見事に表現しましたー!みたいなことになりかけていないか?大丈夫か? 音楽はこの作品にふさわしいものを採用したか? 確認しに俺もう一回観に行くから。トークショー目当てやけど。


ところで、エンディング曲(※予告編の後半で流れてる)、スパルタローカルズ「水のようだ」、とてもいい。そしてこのPVの映像は阿部慎一の漫画を下敷きに作られている。この曲はこの映画にとても合っている。PVも素敵。


この映画をみてから現実感がすこし狂っている。軌道修正しきれないうちにもう一度。

想田監督の「精神」19時の回はティーチインがあるからか、立ち見出る勢い。劇場の人は、5歳くらいの子供連れに「ええと、精神世界の、ええ、非常にディープな世界を描いてますので、ええ、お子様には、ちょっと」みたいなことを言っていて爆笑してしまう。母親の人はにこにこしながら「だいじょうぶです」とのこと。子供!よく見ろよー。

▼スタッフ
監督・脚本・編集: 坪田義史
製作総指揮: 岡田博
プロデューサー・編集: 白尾一博
プロデューサー: 宮下昇
脚本: 福田真作
撮影監督: 山崎大輔
撮影: 与那覇政之
照明: 高橋拓
美術: 田中浩二 / 尾崎雅朗
録音: 斎木琢磨
編集: 坪田義史


▼キャスト
水橋研二 町田マリー 本多章一 松浦裕也 あんじ
佐野史郎 三上寛 林静一 飯島大介 飯島洋一 銀座吟八
和倉義樹 石川真希 つげ忠男 シバ 高野愼三 原マスミ
杉作J太郎 しまおまほ 他


シネマトゥデイより

レスラー

プロレス・素朴な演技・80年代。
ストリッパーの女がいないと全く成立していない。
ロープの上に立つミッキー・ロークのぶるぶる姿にやられてまた汗が出る。

※詳しい感想はあとで