フレデリック・ワイズマン『チチカット・フォーリーズ』(1967)『高校』(1968)『福祉』(1975)

前日、木のかおりのする44度の泡盛を堪能したせいで朝起きられず。痛恨の日仏アニエス・ヴァルダ空振り。早く寝て早く起きるひとになるぞっと本気で。


ユーロスペースにてワイズマン三本立て。

  • 『チチカット・フォーリーズ』Titicut Follies 1967年/84分/モノクロ
  • 『高校』High School 1968年/75分/モノクロ
  • 『福祉』Welfare 1975年/167分/モノクロ

(特集:ワイズマンを見る/アメリカを観る ―アメリカ社会の偉大なる観察者、フレデリック・ワイズマンの世界)



右端のおばちゃんの化粧?がすごい気になる。

フレデリック・ワイズマン監督最新作『パリ・オペラ座のすべて』公開記念。


伝説の問題作『チチカット・フォーリーズ』、日本初公開作品『エッセネ派』、上映時間6時間に及ぶ超大作『臨死』、華麗なる『BALLET アメリカン・バレエ・シアターの世界』・・・。巨匠ワイズマンが見つめ続けた現代アメリカの現実虚構(リアリティ・フィクション)。怒涛の18作品一挙上映!


1967年の『チチカット・フォーリーズ』以来、“現代社会の観察者”として独自の映像表現を展開し続けているドキュメンタリー作家フレデリック・ワイズマン、40数年にわたり、学校、病院、警察、軍隊、裁判所、福祉施設、議会など、アメリカの様々な施設・組織を撮り続けてきた。
ワイズマン自身が “〈われわれの生活様式の博物誌〉を紹介するドキュメンタリー・シリーズ”という作品群には、悲劇的であると同時に喜劇的、深刻でありながら滑稽でもあり、複雑であると同時に素朴(ルビ:ナイーヴ)、絶望の中にもユーモアが光る、矛盾に満ちた魅力的な“アメリカ”が映し出される。

http://www.eurospace.co.jp/detail.html?no=225



『チチカット』『福祉』はみんなタバコ吸い過ぎ。タバコは貧乏人と黒人とバカが吸うもんだって言ったのはフィリップ・モリスの社長だという笑えない話があった。ちなみに同時代の日本人男性の喫煙率は80%超え。『チチカット』『高校』は音楽がいい。絶対ワイズマンは音楽流れてるのが好きなんだと思ったけど、『福祉』は音楽がなくて意外だった。『高校』のサイモン&ガーファンクル♪をバックに廊下に一人立つ女子の短いショットが美しすぎる。女子のダンス練習シーンが素敵。サングラスかけて授業受けてるし!とか。ドキュメンタリーの零度において、人々が生きているフィクション/物語がフィルムに焼付けられていくのがすごいことだ。『チチカット』のすごさってそこだね。ちなみに『チチカット』だけ観るのはもったいないことだと思う。


被写体はなぜ撮影させてくれるのかどうしても気になったので調べた。ワイズマンは弁護士の資格を持っているらしく、了承を得るためにきっちり契約しているとのこと。ここから仮定に基づく空想。撮影前に契約したんだとして、契約したからといってあんなに堂々とできるものだろうかという謎がある。アメリカっていったい、っていう話。『チチカット』の看守・囚人たちのケースは微妙だが、微妙だからこそ91年まで公開されず、「合衆国裁判所で一般上映が禁止された唯一の作品」になってしまったんだろう。



精神異常犯罪者の厚生施設・高校・福祉センターの中で、近代的な装置と野生としての人間が葛藤している様をみることができた。ときに刺激的だったり、ときに退屈だったりしたけど、この経験は動物園の動物を観るのととても似ている。しかし人間に飼われているのもまた人間であるという点で、これらは特別な見世物になっている。誘導的/啓蒙的なパッケージ化処理がほとんどされていない(後付けの音楽無し・字幕無し)ので、受容の仕方は観る者にほぼ委ねられている。その委ねられているような状態こそが、ワイズマンのドキュメンタリーを観るときの醍醐味だろう。そして、もちろん『選挙』『精神』の想田和弘の観察映画がとても近い位置にある。どちらもそこで生きている人間に寄り添った良質のドキュメンタリーであることは間違いない。だが、佐藤真『阿賀に生きる』の寄り添い方を知っている身としては、何か違和感がある。おそらく「知ること」と「共感すること」のあいだの話なのだろう。まだまだ考えたいところだけど早く寝れなくなるので以上。想田さん(ニューヨーク在住)のはアメリカからのカメラだよねという話で以上。カメラを通してアメリカなんか観てもつまんないわけで、ワイズマンのカメラを見ることで「アメリカを観る」ことができそうじゃないかと風呂敷広げて寝る。逆に日本が見えるわけで。フーコーを絡めるとまた違う角度から見える(実は近代装置が未熟さをはらんでいてうんぬん)わけで。


蓮實重彦様のお話とか、ワイズマンの対談インタビューとかを読むと面白いですよ。ワイズマンがえらい素朴なこと言うのでびっくりする。あの顔にドキュメンタリーの秘密があるのか。
http://kanazawa-comcine.to.cx/event/event05/gokui03/index.html
http://www.yidff.jp/docbox/12/box12-1.html


あとは、『霊長類』『肉』をなんとか都合つけて観たいところ。毎度のことながらユーロスペースに感謝。




filmemoさんと並べてリンク貼ってもらえた。うれしい!
http://www.bloglines.com/blog/okeyano-onikiti?id=194