トップ・ハット

1935年作品
監督 マーク・サンドリッチ 出演 フレッド・アステア、ジンジャー・ロジャース
(あらすじ)
ロンドンに招待された米人ダンサーのジェリー・トラヴァース(フレッド・アステア)は、宿泊先のホテルで知り合った美人モデルのデイル・トリモント(ジンジャー・ロジャース)に一目惚れ。最初は素気無くされたものの、雷雨の公園で二人っきりになった彼は得意の歌と踊りで彼女のハートを射止めることに見事成功。しかし、その後、デイルが彼を概婚者だと勘違いしてしまったことから、話は意外な方向へ….


フレッド・アステアジンジャー・ロジャースのコンビによる第4作目で、彼等の最高傑作といわれる作品。

先日、「ブロードウェイのバークレー夫妻 (1949年)」を拝見した折、アステア&ロジャース・コンビによるRKO時代の作品を今まで見ていなかったことに気付き、ちょっと愕然。まあ、その理由は、俺がミュージカル映画に興味を持った(というか、“違和感を克服できた”という方が正しい。)きっかけが、MGM製作の「ザッツ・エンタテインメント(1974年)」だったからという訳なんだけど。

さて、遅まきながら見てみた本作の印象であるが、流石に彼等の代表作といわれるだけあってなかなか面白い。名曲「チーク・トゥ・チーク」を始めとするアーヴィング・バーリンの名曲に彩られた古き良きダンス・シーンは当然のことのように素晴らしいが、決して最初から最後まで踊りっぱなしという作品ではなく、むしろミュージカル映画としてはストーリーにも凝っているほうで、立派なコメディ映画としても通用しそう。

まあ、このへんは、アステア&ロジャースがともに名ダンサーでありながら、役者としても一流だったからであり、また、共演のエドワード・エヴァレット・ホートン、ヘレン・ブロデリック、エリック・ブローアそれにエリック・ローズといった達者なコメディアン達の力によるところも大きいと思う。ある意味、ジンジャー・ロジャースの演技力って、彼らと共演する中で身に付けてきたものなのかも知れないなあ。

ということで、夜中にタップダンスを踊ってホテルの階下の部屋に泊まっていたデイルの安眠を妨げてしまったジェリーが、お詫びに砂を撒いた上で踊るっていうのは、欧米に伝わるサンドマンの伝説に由来するエピソード。また、和田誠が「お楽しみはこれからだ」で取り上げていた雷雨の公園でのダンスもとてもロマンチックでした。