エヴァの匂い

1962年作品
監督 ジョセフ・ロージー 出演 ジャンヌ・モロースタンリー・ベイカー
(あらすじ)
新進作家のティヴィアン(スタンリー・ベイカー)は、映画化された自分の作品が映画祭に出展されることになり、婚約者のフランチェスカ等と一緒にベネツィアへやってくる。パーティが終わり、新しく借りた別荘に一人で帰ってくると、そこには雨宿りのために無断で入り込んだカップルがおり、その片割れであるエヴァジャンヌ・モロー)を一目見たティヴィアンは、彼女の虜になってしまう….


ジャンヌ・モローが「突然炎のごとく(1961年)」の翌年に主演した作品。

ストーリーは極めて単純であり、作家のティヴィアンが魔性の女エヴァの魅力の虜になってしまい、破滅への道をたどるというただそれだけ。実は、ティヴィアンの小説は亡くなった彼の兄の書いたものであり、彼の破滅の背景にはそのことに対する罪悪感が存在するのかもしれないが、正直、映画を見ているだけでは良く分からない。

まあ、この単純なストーリーで2時間近い上映時間を乗り切っているのは、ある意味、凄いことだともいえるのだが、それに大きく貢献しているのが主演のジャンヌ・モローの“女の魅力”であり、監督のジョセフ・ロージーは、エヴァの入浴や着替えといった本筋とは直接関係のないシーンの描写に相当の時間を費やしている。

したがって、本作の評価は、即、彼女の女の魅力の評価になる訳であり、確かにいくつかのシーンではとても魅力的に見えるのだが、まあ、全体的にいえばあまり高い評価は差し上げられない。「突然炎のごとく」を見たときにも感じたことであるが、俺にとって彼女の存在感の大きさは、むしろ“負担”としてしか感じられないんだよね。

一方、そんなエヴァのせいで失意のうちに自殺してしまうフランチェスカを演じているのがヴィルナ・リージという女優さん。今まで意識したことのない方であるが、本作における美しさはジャンヌ・モローを大きく上回っており、イタリア美女には珍しい少々つり上がった目元がとても印象的だった。

ということで、ストーリー的にはかなり物足りないが、ミシェル・ルグランのジャッジーな音楽をBGMにして眺めるベネツィアやローマの美しい風景は格別であり、作中に流れるビリー・ホリデイの“Willow Weep for Me”もなかなか良いムード。おそらくジャンヌ・モローのファンの方には堪らない作品だと思います。