オリエント急行殺人事件

今日は、妻&娘と一緒にケネス・ブラナー監督主演の「オリエント急行殺人事件」を見てきた。

俺と妻はシドニー・ルメット版の「オリエント急行殺人事件(1974年)」を見ているし、娘はアガサ・クリスティの原作を読んでいるということで事前学習は十分。それでなくても“容疑者全員が犯人”というトリックはあまりにも有名であり、あとは、最近各方面での活躍が目立つケネス・ブラナーがそれをどう料理したのかを確かめるために映画館へ向う。

さて、ルメット版の記憶は最早かなり曖昧であるが、CG技術の発達により本作では急行列車を取り巻く周囲の風景の描写が増えているような印象。特に始発駅であるイスタンブールの街並みのシーンはとても華やかで美しく、それが広々とした雪原を通り抜け、殺人現場となる険しい山岳地帯に至るという演出はなかなか悪くない。

一方、列車内のシーンもとても綺麗に撮られているのだが、カメラの性能が上がったせいか、ルメット版に見られたようなちょっとレトロで幽玄な雰囲気は比較的希薄。そんな中でポアロの立派な口髭だけがやけに仰々しく見えてしまったのは、まあ、ご愛敬といったところかな。

そして、ルメット版に比べて決定的に見劣りしてしまうのは出演陣の顔ぶれであり、本作にもジョニー・デップジュディ・デンチウィレム・デフォーといった一流どころが顔を揃えているのだが、それでもペネロペ・クルスイングリッド・バーグマン(=アカデミー助演女優賞に輝いた後者に遠慮してか、役名は異なるらしい。)、ミシェル・ファイファーローレン・バコールを比べてしまうと、その貫禄の差は歴然。

それ以外にも、一番美人だった頃のジャクリーン・ビセットをはじめ、レイチェル・ロバーツ、ジョン・ギールグッドといった名優まで出演していたのだから、ルメット版の豪華さはもはや伝説的。硬派のヴァネッサ・レッドグレーヴが演じていた家庭教師役を、可愛らしいデイジー・リドリーにやらせていたのはちょっと面白かったけどね。

ということで、次々に話が進んでいくだけであまりミステリイっぽい仕様になっていない点が娘にはご不満だったらしいが、まあ、ほとんどの観客がトリックを知っていることを前提に作られたのだと思えば、それも仕方ないところだろう。でも、今度もう一度見るとすれば、迷うことなくルメット版を選んでしまうと思います。