ちいさな哲学者たち

今年観た映画63作目

パリで実際にお試しで実施された、幼稚園生(3-5歳)向け「哲学プログラム」を2年間追ったドキュメンタリー映画。子供という純粋無垢で偏見常識にとらわれないからこそ発せられる、驚きの発言の数々。始めは想像していなかった「子供だから無理なんじゃないか」という考えに反して、最後には「今は私の方が聞き役なのよ」とファシリテイター役の先生に言わせる程、素晴らしく成長していった子供達の姿を描いた作品。

「愛とは?」「死とは?」「結婚って何?」「友達って何?」等の課題に対して語り合う子供達の姿が、終始温かい気持ちにさせてくれました。ところどころ、純粋無垢なんだけど残酷さというか、そういう「常識がないが故の発言」も多々ありました。例えば、「違い」について話合った時、ある子は「黒人より白人になりたい」、「ママが死んだら悲しいから自殺する」と言いました。正直に発しているだけなのだが、その都度、他の子たちが反論・同意しながら、これといった固い答えを出さずに毎回授業は進行されました。特に宿題として出していたわけでもないのに、父母からのフィードバックで「ある時、子供達同志で『愛ってなんだと思う?』とか話合っていたのよ」とか「家でも哲学クラスで話合ったことを両親に質問して意見を求めたりするんです」という、前向きな声が集められました。ある時は、自分の意見に反論する子を叩いて、先生に怒られる子がいたり、淡々と冷静に議論していく授業なので1-2人眠っちゃう子がいたり、かわい過ぎる子供らしい一面もたくさんみられます。最後に、先生が「叩いて解決するの?意見が合わない時はどうするの?」とお友達を叩いた子をきつく叱っているシーンも印象的でした。「何のためにこの哲学の授業をやっているの?この授業で何を学んでいると思う?」と生徒に質問を投げかけ「そう、『話合う』でしょ」と言う先生の姿がありました。目先の感情に囚われず、考え、向き合う習慣を子供達に身につけてほしいという、このプログラムの本質を表していて、作品を締めくくるに相応しいシーンでした。

最後までやわらかい雰囲気が続くドキュメンタリーですが、本当にほっこりする内容です。子供は子供として扱うだけじゃなく、時には、対等に話し合ってみたり、意見を聞いてみたりするのもいいなと心から思いました。子供を持つ全ての人に、また女性全般に特に観てほしい映画です。