歌舞伎町委員会

あんまりにも直裁がすぎるネーミングであるがゆえに、逆に思いつかないという典型ですね。 お薬58日目。 特に由無し。 ぼんやりとただぼんやりと のたりのたりと過ごす土曜日。 月曜日からなにかと忙しくなるから特にゆったりとしていたい。 考えておかないといけない事もあるし、ゆっくりとしよう。

 感想 田口仙年堂「吉永さん家のガーゴイル<6>」

日向悠二ファミ通文庫・640円・ISBN:4757721331
さてさて今回のお話は和己兄ちゃんの学校で巻き起こった騒動とその顛末であります。 ある演劇の台本をめぐって起こる怪事件。 犯人からのメッセージ、「八年前のジャンバルジャンが見ている」。 繰り返される脅迫。 学校で本当に起きた「八年前の事件」。 姿の見えない脅迫者。
はたしてその意外な正体とは? そしてはたして、この演目は無事に演じられるのだろうか?
と、サスペンスな展開を見せつつ、きっちり「今」と「八年前」がかみ合って見事にすっきりとしたラストへと導かれます。 このかみ合いが本当に特筆すべき見事さで、台本をめぐる因縁が分かってくる中盤からラストまで一気に牽引されました。 ある台本とそれにまつわる深い因縁。 しかしだからこそ、「この劇は成功させなくっちゃだめだ!」という気持ちに読んでる方がさせらました。 そしてその気持ちを見事に昇華するラスト。 いや、本当に良い。
さておき。
この本を読んで思ったのは、
「ミステリーというのは単なるお話の手法でしかない」
という事でしょうか。
ミステリーの仕方が見事に決まって驚かされて、しかしその驚愕がそこだけで終わらずに、ちゃんと以後の行動への動機として間接的――読者側に――残るという、まさにお話の為にミステリーがあるというお手本みたいなお話でした。
ミステリーって言われるものって大体「謎」を理解しようとする事を面白さに繋げるものなので、謎」の為にお話があったりするんけど、それゆえ「謎」が解けると面白さが格段に落ちてしまうモノが多いと思います。 しかし、この話の場合、「謎」が解かれてもお話の面白さは如何ほどにも揺るがない、いやそれどころかより一層面白さが際立ってくるんですね。 その辺が本当にすごいなあ。
それにしても、ジャンバルジャン姿の双葉の可愛さは尋常じゃねえなあ。 ああラブリー。

 感想 野村美月「Bad! Daddy」

<煉瓦・ファミ通文庫・640円・ISBN:4757717873
内容を要約すると「キスしたいんですけど!」
本当に要約してしまうとそれだけの話なんだよなあ・・・。
ある種の特撮的正しさを守りつつ、伏線張りつつ、キャラ間の関係を書きつつ一冊で一話完結な形できっちりオチを付けるので、それは見事だし安心して見られるっていえばそうなんだけど、伏線にキャラにいろいろとほいほいと出てきて、これ本当に次の巻で終われるのか?

 感想 野村美月「Bad! Daddy」

<煉瓦・ファミ通文庫・640円・ISBN:4757719329
内容を要約すると「・・・終わった? マジで?」
終わりました。
話の流れが妙にすばやく、気が付いたら首で気が付いたらぼろアパート暮らしで、と、どんどんとんとん拍子で話の終わり、というか始まりというかに突き進んでいきます。
はっきりって後半伏線一大回収会の様相なんですが、それでもなんだか妙に納得させられるので全く不思議なものです。
特に中盤から終盤までの展開仕方が「お話にけりをつけよう」という流れを強く持ってるんですけれど、途中でキャラクターがばたばたと主張し始めたりして「終わるの?」という気分にさせられて、なのに終わり方への流れがそれによってより自然な形になるってんだから不思議というより他はありません。 「美月マジカル」とでも名づけたい位すごい、けれどかなり伝えにくいすごさですよ、ええ。
やっぱりこの人、恐ろしい作家だ、と思うことしきりでありました。

 感想 山下卓「刹那 〜その時彼女が願ったこと〜」

HACCANファミ通文庫・640円・ISBN:475772084X
内容を要約すると「その歌声は夜風に乗って」
一刹那、ともに抱いた思い。 しかしそこから全ては狂いだす・・・。
BLOOD LINK外伝シリーズ第二段であります。
なんというか、非常にえぐい。 たった一つの願いが全てを変えてしまう。 その想いが強すぎたからなのか? それともあまりに美しかったからなのか? 理由は分からない。
しかし、それによってどんどんと自分の中のなにかが狂っていくおぞましさ。 それでも、いやそれだからこそ純化されていく想いは、その純粋さゆえに滑稽とすらいえる末路を迎えてしまう。 その無残たるや、作者自身が「事故のようなもの」というだけはある。
無残で物悲しく、しかしどこか美しいラストの後に、私は何を思えばいいのだろうか。

 気づいた事

こうしてファミ通文庫の感想ばかり並べていたら気が付きました。
値段が全部おんなじだ。640円だ。参考
以前にもMF文庫Jの値段が統一されているというのがありましたが、統一価格を先にやりだしたのはファミ通文庫のようです。 創立から3年近く経ってるのに・・・。 意外と気づかないものですねぇ。