感想 中村九郎 『ロクメンダイス、』

ロクメンダイス、 (富士見ミステリー文庫)

ロクメンダイス、 (富士見ミステリー文庫)

 恋を知らない少年が恋を知る話、でいいのかな?
 一言で「ああ、書きたかったのか」としか言いようが無い。
 書きたいという情念と書ける(=出来る)事が微妙に食い違い、そのせいで情念が読み手にうまく伝わらず、人によっては「詩、あるいはポエム」という扱いになったのだろうなぁと思いました。読んでしばらくしてから、「ああ、あそこはこうしたかったのか」とか気づける、というか。*1
 とはいえ、読み手を混乱させる一番の理由は、基本的に語り方の筋が亜脱臼しているから、というのが自分の中では有力です。こうすると人に伝えられる、と中村九郎が思っている筋が、根本からして世間一般からかけ離れているのではないかしらん。読みやすいとされる「アリフレロ」を読んでてもそういう所が頻出*2するあたり、そういう偏向があるんだろうなぁ。本編とあとがきが同じ軸線上というか地続きだったりするし。
 でも、嫌いじゃない。決して嫌いじゃないぞ!

*1:ある場所で見える景色が、恋を知る知らないで変わる、とか、思い返してやっと気がつきました

*2:まだ50ページしか読んでないのに