感想 オオツカマヒロ 『のりタマ 1』

のりタマ 1 (電撃コミックス)

のりタマ 1 (電撃コミックス)

大体の内容。「猫又のいる風景」。一言で言ってしまうという愚をあえて犯すなら、所謂空気系という言葉がしっくりくるんですが、モチのロン、それでは漏れてしまうものがありまして、この漫画の場合のそれは、その背景への、あるいは古い木造建築に対するフェティッシュ。いや、木目に対する執念と言うべきでしょうか。主人公であるのりえの住むは猫待荘は古い木造建築、そしてある町も木造建築が目立つ閑静な住宅街なので、ゆえにあちこちにしっかりと木目がでているのですが、これに対してまったくの手抜きが無い、一々全部木目を描ける場所では全部木目描いている辺りに並々ならぬものを感じさせます。古川登志夫ボイスで「執念が足りんぞ!」って言われてるかのような並々ならなさ。それだけでもその筋の人にはマストアイテムなんではなかろうか。と妄言が漏れ出てしまいます。
 さておき。
 基本的に話というには腰の弱い、ただの日常というのがこの漫画の基本的な肝なわけですが、猫又がいる、という特異な点はしかし、あんまり猫又を特別な存在とせず、その素性も詳しく掘り下げずにただ一緒にいるだけの流れ方によって、そんなに特異な事には見れないのが、またこの漫画のゆるゆるとした雰囲気とマッチして、なんとも心地よいものがあります。タマがどこから来たのか、何か目的があるのか、ヤコさん何してるのか、など、いろいろと謎とかはあるんですが、それはたまに提示されるけどとくには掘り下げられない状態で一巻目は終了となっております。このまんまのゆるやかなものがこのまま続くのか、シリアスに振れるのか。どちらにしても楽しませて、あるいはゆるやかさを味わせてくれるような、妙な信頼感を持たせてくれる、そんな一作です。そしてヤコさんは可愛いい人。