感想 木々津克久 『名探偵マーニー』2巻

名探偵マーニー 2 (少年チャンピオン・コミックス)

名探偵マーニー 2 (少年チャンピオン・コミックス)

 大体の内容「今回もマーニーにおまかせを」。探偵物というとお決まりの所では殺人やら誘拐やらがありますが、この漫画ではそういう方向性は全く起きません。あるのは細かい、でも当人達には大変重要な出来事。それを解決していくのが、『名探偵マーニー』なのです! 似た方向性というか、重大事件が起きないのでは漫画では鈴城芹『JC探偵でぃてくてぃ部』もありますね。あっちは部活としてという立ち位置、学校に恩を売ってゆくゆくはという姿勢で、ついでに三人寄れば姦しいな状態なのに対して、『名探偵マーニー』はあくまで一匹狼ビジネスライク。でも、勇名は馳せ始めているのが、2巻では見えてきます。先生やら生徒会長やらの事件を解決したのが奏功した形ですね。とはいえ、事件は基本ミクロレベルな物ばかり。先生の昔の恋人を探してくれとか、爺さん達が相次いで倒れただしたとか、そういう事件ばかりであります。しかし、そのどれも当人達には十分重大事である、というのは見ていくと分かってきたり。そういうのを解きほぐす、現代的な意味での“名探偵”が、マーニーの姿といえましょう。
 さておき。
 重大事件はそうそう起きないというのはある意味当然ですが、この巻ではそれでも意外と深刻な問題が起きたりもします。それがfile13「双子」とfile15「NTR」。
 前者は謎のコスプレを追う内に分かってくるある双子の話で、ここではマーニーがスタンガン食らい、あわや!という局面も。荒事に基本向いてない女の子だけゆえの危険さが浮き彫りになった格好で、でもそれで用心棒を、と言う方向性にはとりあえずならない展開に。双子の内実の方もいつもの木々津節でグロかったです。その前段階の、生徒会長のある断言もグロかったですけども。
 後者はマーニーに被害が、というのでは無いんですが、そのままやるとそいつの人生が終わる! という意味の危機的な形でありました。そして多分、周りからは助けてやる方法がほぼ無いので、終わるんだろうなあ、という納得をさせる恐ろしさ。それを全部読みきってこの仕手仕掛けたのか、という辺りのグロさは格別ですが、憶測の域を出ないのが更に怖い。立証なんて出来ない、完全犯罪とも言える形であります。いやあ、木々津節炸裂し過ぎでしょう?
 さておき。
 そんな肉体的グロが無いのにグロいいつもの中にあって、いい話もちらりちらり。
 file12「オジイチャン」はえ、それマジ!? という出だしでしたが、その内、ああ、そういう……。と思っていたら更にもう一段落としてきて、最後の「オジイチャン」が大変切ない台詞として立ち上がってきます。この子の行く末に幸があれば。あるいは忘れる、ではなく癒える時が来ればいいのに。そう思わせられる出来事でした。
 他にはfile18「マジシャン」も凄い出来栄え。マジシャンを探して欲しい、という依頼でありましたがそれが見つかったか、と思ったら回り回って大変な奇跡の光景が展開する形に。そこまで考えての仕込み、というのに、マジシャンの凄まじい情熱、あるいは狂熱を感じずにいられませんでした。全く使えない事になる可能性の方が、恐らくでかい方法なのにそれでもする、というのは、いやはや。ある意味職業病ですが、決まったんだから全然マジックですよね。
 そんな色んな小さな、でも大きな事のお手伝いをするのが、『名探偵マーニー』なのです。

2013年03月09日のツイート