感想 くずしろ 『犬神さんと猫山さん』2巻

犬神さんと猫山さん (2)巻 (IDコミックス 百合姫コミックス)

犬神さんと猫山さん (2)巻 (IDコミックス 百合姫コミックス)

 大体の内容「猫山さんがどんどん犬神さんに惹かれていってますぜ!」。というのに、百合百合しいと言うより馬鹿馬鹿しい雰囲気が展開されるのが、『犬神さんと猫山さん』2巻の全体的なテイストなのです。
 この漫画の良い所は全体的なトーンが馬鹿っぽい所。基本になる組み合わせの犬神さんと猫山さんの、どちらもお馬鹿な感じ、特に犬神さんが馬鹿犬属性なので、どうしても百合というより馬鹿という趣きが強くなっております。それは同時に百合に徹しきれないこの漫画の悪い所でもあるんですが、でも馬鹿は馬鹿なりのニヨニヨ感でもっているので、これはこれで! という立ち振る舞いが出来るようになってくるとより楽しめるようになるかと思います。そういう漫画、イエスだね!
 この漫画は基本的にキャラ漫画なので、キャラできゃいきゃいするのが正しい楽しみ方。それを出来る絶妙のキャラ描写、キャラとキャラの関係性の描写こそこの漫画の持つ至上であります。メインの犬神さんと猫山さんの百合い部分を交えつつ馬鹿っぽいやりとりは、犬神さんが大変飛躍しやすい上にちょっと考えなしな部分があるので余計に場を賑わします。それに振り回される猫山さんも可愛いし、それをきっちりつっこんだりスルーしたりする柊木さんの存在感もしっかりしており、こここそこの漫画の楽しさであります。そこに杜松さんと牛若さんが食い込んで、この巻では特に牛若さんの影響力というか、思ったよりガチ且つSっぽい雰囲気が場を引き締めておりました。最初ぽやぽや系だと思われたのに、徐々に正体を現してきた感じと言えますが、逆に単純なぽやぽや系では生き残れないという中々に厳しいキャラ性の闘いがそこにあるという感じでもあります。
 それには当然新キャラというエッセンスが関与しますが、今回は猿飛さんと鳥飼さんというニューカマーが登場します。このどちらも登場回がきっちり一回あり、そこでどういうキャラなのか、というのをきっちり見せるテクを見る事が出来ます。猿飛さんは犬神さんを嫌い、というのから入ってまあ認めるかな、まで行きますし、鳥飼さんはぽっと出なのを逆手にとった設定と、猿飛さんと幼馴染なのも絡めての印象付けをしており、どちらも一回でしっかりその人となりが分かるという着地点に到達しております。こういう所も、この漫画の良い所であり、優れている所でしょう。バランス的にこの人数以上になると回しきれるのかという疑問もありますので、十二支狙いはどうかなあ、とも思ったりしますけれども、これだけ上手ければ、あるいは可能かも、とも思います。連載が超長期にならないと、という気もしますが。
 さておき。
 好きな回は猫山さん風邪回択一。この漫画のなけなしの百合い感じが爆裂している回です。というか、猫山さんったらあんな夢見ちゃってまあ。そしてそれで大意識しちゃってまあ。この意識がしばらく尾を引いて後の回でもそこがすれ違い点になるのもいいですね。それで色々と動きがあるのも。ここだけ見るといい感じに百合いのになあ。犬神さんが絡むとすぐ馬鹿っぽくなるからなあ。ある意味では椿いづみ月刊少女野崎くん』とアトモスフィアが近しいというか、あっちが恋愛要素が馬鹿なノリで覆われてるのと同じ感じで、百合い部分が馬鹿なノリで覆われてると言えましょうか。この辺は時代性なんでしょうかねえ……。←便利な言葉だよ時代性って!
 とかなんとか。

2014年01月22日のツイート