感想 山東ユカ 『トリセツなカテキョ』2巻

 大体の内容「生徒会長桜川あざみ登場」。つい『ウルトラマン』のOPでの登場怪獣みたいな表記してしまいますが、実際今回の桜川さんの存在感は怪獣級なのでしょうがないですね。という言葉が自然に出てくるくらい、桜川さんの印象が強く残りながらも、それでもやっぱり井原先輩の印象もしっかりあるのが、『トリセツなカテキョ』2巻なのです。
 基本的に賢人井原先輩とバカの春吉の家庭教師関係を、ニヨニヨしながら見ていく漫画なこの漫画ですが、1巻とは若干趣きを異にしています。それは時間経過がある、という点です。1巻収録範囲(感想)では時間がループというか堂々巡りというか、とにかく一定の場所をくるくる回っていたのですが、この巻から時間が進み始め、徐々に井原先輩がいずれ卒業していく、という雰囲気が出てきます。が、それは刺身のつまでありますよ。重要なのは時間が進むようになって、井原先輩が春吉を意識し始める、それも今後の時間経過を踏まえつつ、このままではないんだな、というのが提示されていくからこその心理変化な訳ですよ。ついでに恋愛イベント用の時期イベントもきっちり出来るようになっており、それでやっぱり心理が変化していくのでありまして、時間が進みだしたというのが、肯定的に受け入れられるようになっております。1巻のまま時間がくるくるしながら微妙な関係のままでは、やっぱり駄目だよなあ、とも思ってしまったり。男女の関係では、これはやっぱり重要ですヨネ。
 さておき。
 そんな時間経過はこの巻のトピックですが、他にもトピックはあります。それが生徒会長桜川あざみさん。1巻でもちょっくら出てた彼女ですが、この巻ではより意味の深い役割として存在感をアピールします。その役割、というのは春吉の事が好き、ではないか、という位置です。ではないか、というのはまだしっかりとそういうつもりであるという発言をしてないからなんですが、まあ振る舞いからすると春吉に気がある、それも結構前からというのが提示されております。そして、その以前からの因縁、と言うとちょっと違うんですが、とにかく縁を今度こそ、という雰囲気を出していたり。その為にきっちりと春吉に接近してる辺りの描写が、ときおり決断的に挿入されるので、なんというか、女豹という言葉がするっと出てくる感じなんですよ。この人、言いはしないけど、本気や! というのがね。でも、がつがつ行く訳ではない辺り、井原先輩を排除とかするんじゃなく、な辺りが本当にガチです。そうしたらたぶん春吉は引くでしょうしね。そこを理解しつつ攻めてる感じがありますよ。こんな弾が出てくるとは……。
 という戦きもあるんですが、それでもこの漫画のメインは井原先輩。と春吉。だから井原先輩の動向が大変楽しく見れるのですが、それにしてもこの巻では完全に春吉にお熱化しているんですヨネ、井原先輩。勉強って言って時間を奪っていたのかしら、とか考えたり、「オレには先輩が必要なんです!」って言われてその場ではするっと帰ったのに後で照れっ照れしてたり、勉強を桜川さんが見る、というのを容認しておきながら後で拗ねてる自分に気づいたり、学園祭の催しとして家庭教師スタイルのきりっとしてたのに、春吉の事考えてぱぁ、とか、もー! なんだよ! もー! もー! 可愛いどころの話じゃねえじゃねえか! ド可愛いよ! もー! というくらいに井原先輩が可愛い巻であります。桜川さんが猛攻を仕掛けようとしてますが、正直、春吉が井原先輩を選ばないというのは無いとは思うくらい、というかそう信じさせてほしいくらいに、井原先輩は可愛くてですね。これが、ヒロイン力! って感じです。これで春吉が桜川さんを選んだら……。でも魅力的ではあるんですよね、桜川さん。だから、ここは高宮の台詞じゃないですが、苦悩しろ、春吉!
 後、どうでもいいですがこの漫画のモブ女の子ってレベル高いですヨネ。特別編で出番のあった副会長もとんでもなく好物件で、井原先輩がいなかったら+もうちょっと出番があったら萌え萌えしてしまう事間違いないレベルでしたし、この巻の描き下ろしの「日本の狼は とっくに絶滅してるわ!!」の子も可愛かったです。こういう所でしっかりとしたモブっていうのはアクセントとしていいですヨネ。
 とかなんとか。